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脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第16章月夜見島騒乱篇
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“まずやるべき事 first things first„

 月天がてんの塔までは特に警戒される事無く辿りつくことが出来た。だが月天がてんの塔周辺はフェンスに囲まれており、入れそうな場所も地上に一つだけ設置されたゲートしか見当たらない。この先に俺の仲間が居るはずだと踏んでいるのだが侵入できなければ何も意味がない。


 俺は何か解決策は無いか、暫くの間近くの身を隠せるところから様子を伺った。


 そしてそれからどれ程の時間が過ぎたかは分からないが、ゲートを通り抜ける物がある事が分かった。この月天がてんの塔にはおおよそ三時間ごとに何かを積んだ輸送車がゲートを通り抜けるのだ。この事に目を付けた俺は月天がてんの塔から一度身を引き、その輸送車がどこから来ているかを追う事にする。


 そしてその輸送車を見つけたのはイーストゲート付近に存在する能力者街の隣、サウスゲート付近だった。サウスゲートは主に他の土地からの輸出入物を運搬する事を目的とし造られている為、倉庫が多く点在する。その倉庫街の中には小型な研究施設も建設されており、実験場としても使われている、いわばはぐれ能力者の溜まり場でもあれば科学者たちの試験場でもある二面性を持った区域だ。


 その区域で見かけた輸送車の所在は言わなくても分かるように例の小型の大規模ではない研究施設からで、毎回この場所から月天がてんの塔へと輸送車が送られていることが把握できた。


「時間は掛かったが……、俺がやることはただ一つ」


 ボソッと、呟いた。俺がまずやることはこの輸送車を送り込んでいる研究施設を調べ、月天がてんの塔への切符を手に入れる事と仲間たちの情報を入手すること。これらが完了すれば俺は次へと進める。


 そう悔い改めた直後、身を潜めていた俺の肩が誰かに叩かれた感触を認識する。


「ッッッ………ッ!!」


 数秒遅れて体が反応しその感触から遠ざかろうと反射的に身を離す。そしてそこに居たのは見覚えしかない人物であった。


「あれ…? こんなところで何をしてるんだい? “神代睦月君„」


 俺の体に寒気が走る。俺の事を君を付けて呼ぶ奴は限られている。そしてそれに合わせた冷酷かつ丁重な言葉遣い、その発する言葉だけでも凄まじい重圧を俺に浴びせてくる。


「お前は…ッ!」


 俺はその人物の存在を心から抜け落ちた事の様にあの時目覚めてから覚えていなかったが、浮かべた表情や声音を聞き全てを脳裏にフラッシュアップさせる。奴は…確か…。


「そう、私は“月の名を抹消する者„久しぶりにお目に掛けるね、神代睦月君」


 俺の前に突如現れたのはそう、五十嵐喰月そのものであった。

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