“新たな力の正体 The identity of the new force„
「君がこうして目を覚まし、二度目の命を授かったのならば、すべてを取り戻す他ないだろう。君に今あるものは、その力と島鮮科が新たに与えた力、そして霜凪君、これだけだ」
その言葉が俺の頭をよぎった。長門はあの時新たな力と言っていたがその力は未だに何か分からないままだ。そしてその後親父にその腕は何だと言われた…。この事は偶然じゃないはずだ。ここの場から脱するのにはその新たに手に入れた力が鍵になると俺は考える。
「あの時、月の石との反応が鈍くなっていたはずだ…」
そう、今まで触れると自在に操ることが出来ていた物は今では鈍く、自在とは言い切れない。
…つまりは触れて何かが起こるものではないのか?
そしてこの腕、義手は月の石でできているとしませんかせんせーは言っていた。だがその見た目は白く煌びやかな月の石ではなく、仄かに紅の色をしている。
それだけではなく、その場で武器となるものを呼び出せるとも言っていたのを思い出す。
…この長門が言っていたこととしませんかせんせーの言っていたことを改めて俺は考え直した。
「ハハッ…、なんだ、そういうことかよ。なんて簡単なことに俺は悩んでたんだ」
俺は思いついたそのことを思わず笑ってしまった。そうだ、俺は取られた全てを取り返すしかない。だから長門は君に今あるものは、その力と島鮮科が新たに与えた力、そして霜凪君のみと言っていた。
だが裏を返せば今現実にあるものはそれだけであって、その他の物はある、ということに成り得る。
そしてこの環境を改めて見直す。この近辺の建物は確かに低いものばかりだ。だがただの建物ではなく素材に月の石を使用しているものが見受けられる。つまりはこの俺の新たな力を発揮できる場所という事だ。じゃあ早速使ってみようじゃないか。………俺の新たに得た力を。
「借りるぜ、その力。………斬月ゥッッッ!!!」
俺は斬月のその剣の心を思い浮かべ、みなぎる力を拳の方へとかき集める。
…するとどうだろう、紅き光が俺の拳へと収縮し始め、刀の形を形成していくではないか。
その紅き光の出始めは月の石を素材とした建物達であり、その月の石の核となる部分が刀となったのだ。
「そういうことだったのか…、しませんかせんせーが俺に授けたこの力は仲間の力を借り、武器として呼び起こす力…」
俺の能力の引き出しの鍵を開ける力だけでなく、仲間の磨かれたその力を武器としても呼び起こすこの力は月の石の中にある核のみを収縮させ具現化する。つまり、この義手は月の石の核でできている…俺自身でできているという事になる。だから適合率がああなっていたという訳か。
「これで全てつながった…。こんなところで立ち止まっては居られない。親父もきっとそう考えている筈だ」
俺はそう呟くと斬月の剣の心を具現化したその刀を一振りする。すると俺がさっきまで張り付いていたこの柱は階段状へと加工される。
「さぁ、待っていろ…。今助けに行くから」
俺は迷わず研究開発局の拠点である月天の塔を目指す。ここにたどり着く事で仲間の居場所が分かるかもしれない。