“状況確認 check of the situation„
「そうだなぁ………」
親父は何か言いづらそうな表情を浮かべたが話を続ける。
「今存在している脱出不可能はあの長門兄弟がやっているのだろう? あの長門嘉月はアイツも旧世代の能力者の一人で能力の無効化だった筈だ…。そして不可解なのは弟の忌月の方だ。旧世代の中に忌月という人物は存在しては居なかったのだが…、まぁ良い。長門の兄弟がやっているとしたら答えは一つだ。それはプロジェクト:脱出不可能とは違い、能力者を育成するための脱出不可能が今あるものなんだろうな。なにせ嘉月の方は島鮮科の方に付いているのだろう?」
「あぁ、あの長門嘉月はしませんかせんせー側に付いている。だがその忌月の方が何か引っかかるな…。俺が目を覚ましてから奴を一度も見かけていない」
でもまぁ、これで今存在しているであろう脱出不可能の意味は何となく理解した。
「俺も詳しくその忌月という人間を理解しきれていないのが現状だ。あとなんだっけか? 睦月、お前らの世代が白銀病になり得るかということだったか?」
「あぁ、そうだが」
「その答えは…肯定だ。お前の場合はそもそもウイルスを取り込んでいるため自在に操れるが、他の奴は違う。能力を暴走させたら白銀病になって石化して死ぬだろうな」
「やはりそうか…」
嫌なイメージが脳裏をよぎった。
「ざっと俺が話せるようなことは全て話したような気がするけども他に何か聞きたいことはあるかい?」
「いや、他には…特に…」
急に親父が話を切り上げようとしたのを見て、俺も特に聞きたい事が無いか思い返すが全て聞いたような…気がしたため、そう言い返す。
「そうか、じゃあ逆に聞かせて貰いたいんだが…。睦月…その左腕はなんだ?」
そう言って親父は俺の無くなったはずの左腕を見やった。
「あぁ、これか? これはしませんかせんせーが造った義手だ。しかも流石しませんかせんせーだけあって違和感がなに一つもない。それとこの義手には新たな力がどうとか…」
「なるほどな。お前は文月と戦って左腕を失ったからな…。それで島鮮科が造り上げたという訳か」
「そうなるね…、だけどこれに授けられた新たな力が未だに何なのか理解できてないのが現状だよ」
「フフッ、そんなものすぐに分かる時が来るさ」
親父は何かを知っているかの様に笑みを浮かべた。
「さて、話はここらでお開きにしようかね…まだ仕事が残っているんでね…」
親父がそう言い、席を立ち上がった瞬間__________ッ。
床が真っ二つに崩れ去り、天井も落ちてくる。そして轟ッ、轟と耳へと刺さる鋭い音を立てながらマンションが崩れ、俺達も抵抗できず落下していく…が。
「親父ィィィ………ッ!」
俺は咄嗟に無人島の時のあの跳躍力を能力として発揮し、残った階層の残骸へと飛び移る。だが親父の姿は見えず、落ちていった方向は暗く残骸まみれになっていた。