“力の再確認 Reconfirmation of force„
足の着いた着地点は月夜見島各四ヶ所に綺麗に配置されている港の一つの
イーストゲート付近。港と言っても入るためにはどこの場所もゲートを通過
しなくてはいけないが、俺の場合は通過する必要もない。
月夜見島は上空から見ると綺麗な円状の人工島であり、各方角、東西南北に設置されたゲートを軸とした街が中心の月天の塔に向かう形で形成されている。そして各々特色のある雰囲気を持ち合わせている。
イーストゲート付近は人造能力者を住まわせ、管理する能力者街。歩く人々は殆ど能力を持ち合わせ造られた奴ららしいが当然、外見だけでは判断できない。また、この街の奴らは量産されている為に月の名の持ち主の持つ力とはかなり劣る。
月の名の持ち主と呼ばれる能力者と人造能力者との差は力の強大さに違いがある。人造能力者の能力は捕らえた事のある月の名の持ち主の力を元に作られている。つまりはオリジナリティのない量産系超能力、という訳だ。
だが聞いたところ、人造能力者として最初に生成された者はその月の名の持ち主とも渡り合えるほどの力を持つらしい。あの斬月の紛い物のようにな。
「つまりは、これから俺の知る奴らの力を持った奴らと………」
そう、戦わなければいけない。
俺は羽織ってきたパーカーのフードを深く被る。それは奪われた仲間たちへの強い思いとまだ見ぬ敵への恐怖が現れていた。
「もうそろそろか」
親父との待ち合わせ場所に少しずつ近づいていく。その場所はイーストゲートの港から能力者街を通り抜けた、月天の塔との間にある古びた廃墟のようなアパートの一室。
その場所へと俺は顔を見られないように気をつけながら足早に向かう。能力者街だけでなく、この月夜見島に立ち並ぶ建物たちはどこか見たことがある様な気がする。使われている建材が白く輝いている。
………そう、まるで大崩壊地区の崩れた建物たち、もしくは写真で見た大崩壊の起こる前、再開発地区と呼ばれていたあの時のような雰囲気がある。
ふと、建物に近づき手を触れる。するとどうだろう、やはり手で触れたところには手形が付いては凹んでいく。
「ははっ。月の石はやはり万能なんだな」
思わず笑ってしまった。俺は忘れていた、月の石と呼ばれる謎に包まれた素材は謎に包まれていてもこの世界では鉄に変わる新しい素材として使われているのだ。
「そして、その謎の素材を俺だけがこうやって粘土みたいに」
………動かせる。だが触った感触が今までと違う気がする。
「硬い………か?」
そう、今までの感触と違ってグニャリとはいかず、触った部分がじわじわと変形していくような感じだ。どういうことなのか過去を思い出しつつ考えていると背後の方から声が聞こえてくる。
「なんだアイツ…?」
「うわ、壁に手形が付いてるぞ…?居たかあんな能力者」
どうやらこの俺の光景を見た奴らが群がっていたらしくギャラリーが形成され始めていたようだ。このままではまずいのは言わなくても分かるだろう。
奴らは奴らなりにこの島に居る能力者を理解している。つまり見かけない能力者が居たら警備の連中に通報してもおかしくない訳だ。
俺の能力の二つ目も再確認は出来た。一つ目は超高速潜航艇からこの月夜見島に跳躍した時点で確認できていた。鍵を開ける力の確認を。そして俺の持つ二つ目の力、月の石を自在に操る力も…。
俺は壁から手を離し、大きく開いた後に握り締めた。
「さて、そろそろ失礼するか」
集まっていたギャラリーの奴らに大きく背を向けて足を前に出す。
もう待ち合わせ場所はすぐそこだ。親父に片っ端から問いたださないといけないことは山ほどあるんだ、こんなところではじっとしてられない。