“記憶の回帰 Recurrence of the menmory„
「ふふっ、確かにわたしは君に殺されかけたよね……」
彼女は自らの命にまつわる重い話だというのになぜか微笑んだ。
「俺が……」
紫月さんの微笑みもあってか、俺は言葉が続かなかった。
「でも一体どういう事なんですかね、結局」
文月が話に横やりを入れる。
「じゃあ、折角だし。あの時の事を話そうじゃないか」
彼女が外に見える大崩壊地区を眺め、話を続ける。
「あれは君たち、睦月君と文月君が
小学生だった頃かな。今では大崩壊地区と呼ばれるこの地で争いが
あったんだよ、それも二つの。
一つはわたしたち、原初の三日月と呼ばれる三人の争い。
もう一つは旧世代と呼ばれるわたしの代の月の名の能力者と
わたしたちを生み出した機関との対立。
この争いは同時進行の様に起こった。その為月の名同士も派閥により分裂。
まさに地獄絵図だった。睦月君、この戦いには君のお父さんも
参加していたのよ?」
「あの放任主義の親父がか?」
「そう、君の父親は勇敢で原初の三日月を除けば一強とも言われていたわ。
何せ、今生き残っている旧世代の月の名は君の父のおかげで生きているのだからね」
俺の親父にも親父なりの物語があるという事か。
流石放任しているだけあって、俺には何も伝えない理由が何となくだが
分かる気がする。
「まぁ、君の父親の話は本人にそのうち聞くとになると思うから省くよ。
この強大過ぎる争いを終わらしたのは他でもない、睦月君、君だよ。君がその能力という才能を全て開放させた。これが要因となりこの街も大崩壊したわけだ。つまりは君が暴走してくれたおかげで街は滅んだが争いに終止符が打たれ、終わったのさ。
そして暴走を止めようとしたわたしが、君に殺されかけたという訳さ。
思い出したかい?」
___________その時。
外れていたその記憶が次々とフラッシュバックする。
その記憶は俺の脳を横から殴りつけてきているかのように攻撃的なものだった。
そう。俺はこの再開発地区を大崩壊地区にしたのだ。
そう。俺が自分に眠る才能の引き出しの鍵を全て開錠し、発動した。
そう。あの時の光は全て俺によるものだったのだ。
全てが俺の中でつながっていくのが確認できた。
「__________ッッッ!」
俺は発狂した。俺は叫んだ。俺は泣いた。俺は咆哮した。
俺は悲鳴を上げた。俺は騒いだ。俺は絶叫した。俺は怒鳴った。
俺は泣き喚いた。俺は。俺は……。
全ての俺が俺ではない様な、そんな気がした。
「一応……おかえり、睦月君」
紫月さんが言う。
俺は過去の記憶の欠片を手にした。
これは記憶の本体にたどり着くための切符だ。
これは無くしてはいけないものだったはずだ。だがなぜ無くしたのだろう。
俺は今一度、過去を振り返る事にした。
短くて申し訳ないです。
ですがこれで過去に起きた事が少し明らかになる訳です。
睦月君が再開発地区を大崩壊地区にしたという事実。
そして争いを止めたという事実。
新たに出てきた事実たち、記憶が睦月君をどこへ誘うのか。
乞うご期待。
次の話で過去が明らかになり、脱出ゲームも始まり、
能力バトルアクションも始まります。
そして成長した仲間たちが。
次の話も見逃せない!!(笑)