“七不思議 the seven wonders„
2016/1/28(木)改稿。
そう、水篶が先程までリンゴを剥いていた包丁が床のタイルとタイルの隙間に見事に刺さっているのだ。それも、柄の部分までスッポリとだ。これは普通ならばあり得ない光景だ。これを見た俺はその包丁の柄を握り、正方形のタイルに沿って包丁を動かす。
するとどうだろうか。正方形の床のタイルが綺麗に一枚切り取れたかと
思うとその下には頑丈そうな鉄の扉が出現する。
……これはもしや。
「なぁ水篶、これが何か分かるか?」
この鉄製の扉に心当たりのあった俺は水篶に質問をする。
「……分かんないなぁ」
やっぱりか。この鉄の扉には学校の一部で蔓延っている噂が関連している。
「恐らくこれは地下鉄のトンネル部分にある、緊急出入口だ。
だがこの地下鉄トンネルは過去に工事は中断されて放置されているんだ。
聞いたことないか? 弓張月学園七不思議……」
弓張月学園七不思議、この言葉を口にすると水篶の表情が
変わった。
「うん! そういえば弓張月学園七不思議の中にそんなものが
あった気がする!」
「……だろう? この所佐波市には
弓張月地下開発プロジェクトといって地下鉄や地下街などの開発計画がされていたんだが資金不足で計画は中止。地下鉄のトンネルも途中まで掘ったまま、という訳さ」
その放置された地下鉄トンネルの入り口が弓張月学園のどこかにあるというのが七不思議の一つとなっている訳だ。
「さて、推測するとだな。地下鉄のトンネルにあるこの様な緊急出入口は
各所に同じ距離間隔で配置されているのが一般的なんだ。つまりは……」
「ここから出れるってこと!?」
「あぁ、そういう事になるな。
だがまだ俺達にはやり残している事がないか?」
水篶はここを出れるという事実を目の当たりにして
興奮しているのか、首を傾げた。
「ほら………大事なことだ」
俺がそう言うと思い出したのか、
「まだ犯人見つかってないのに出るわけにもいかないよね」とそっと呟いた。
「犯人は隔離された、脱出のできないはずの学園内で殺人をしたんだ。
つまりは犯人は学園の生徒の中、俺達の中にいる訳だ。
これは変わることのない決定事項だ。スマンが少し犯人に心当たりがある、
今、決着を付けてくるから水篶はここに居てくれ」
……と真剣な眼差しで水篶に訴える。
「分かった。じゃあわたしは睦月くんを信じるよ。
どうか死なないでここに、ここに帰ってきてね………そしてこの最悪な事件に終止符を。帰ってこなかったら、わたし、すごく、すごく怒るよ?」
水篶は今にも泣きそうな、だけど真剣な目で俺を見る。
それに俺も応えるべく動き出す。
「……じゃあケリを付けてくるさ」
俺はそう言い、保健室を出た。




