月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part24 “一つの風 One of the wind„
※叢雲紫月 むらくも しづき
久我暁月 くが あかつき
御剣蒼月 みつるぎ そうげつ
「俺の...腕が...?腕が...ッッッ!!」
俺の腕が、切り落とされた。跡形もなくただ肩から血が吹き出る。
「悪いな睦月。俺はお前を殺さなくちゃいけない..。
なにせ仇だからな...。叢雲紫月さんの...ッ!」
叢雲...紫月?...だと。
叢雲紫月とはかつて原初の三日月と呼ばれた中の1人の人物。
他の2人は確か...久我暁月と御剣蒼月だったはずだ。
「そんな...俺が殺ったっていうのか...そんなはずが...そんなわけがッ」
心当たりがない。ある筈がない。俺はそんなことやっていない。
「今のお前には記憶がない...ッ!だから思い出す前に...お前を殺すッ!」
文月の乗る月壊参式「詠」は再び姿を消す。
「殺されて...たまるかよ...」
俺は先ほど月の石の刀を大剣にした。
だがそれは既に文月に腕ごと切り落とされ、へし折られている。
つまり、俺は今武器を持ち合わせていない。
「終わりだ...睦月...ッ!」
文月のその声が聞こえる。そうか...俺は死ぬのか。
その時、一瞬ではあったが風が吹いた。
どこかで当たったことのある...風が。
どこかで感じたことのある優しい風が。
「この風...どこかで...」
その風は文月も当たったことのある風だったようで。
文月の乗る月壊参式「詠」の動きも止まっていた。
この風の正体は分からない。
だがこれは好機だ。俺には月壊参式に対抗するための武器が
ただ1つ持ち合わせていたことを忘れていた。
それは、月の石を弾丸にした特殊な拳銃だ。
残る弾は9発。これに賭けるしかないが...俺は左手を失った。
これでは照準が合うはずがない。ギリギリまで引き寄せなければならない。
「なぁ...文月。この今の風、どこかで当たったことはないか?
俺にはこの風が少し...懐かしく感じる」
俺は語りかけた。
それに対し文月も返答してきた。
「あぁ...この風は俺たちがあの時に感じた...叢雲紫月さんの風だ。
睦月...彼女の持つ力は“風„を操る力だった」
...思い出した。
原初の三日月と呼ばれる3人は月の名の持ち主で当時最強の力を
持っていたという。その力は風、熱、水の3つであり叢雲紫月は「風」
久我暁月は「熱」御剣蒼月は「水」を操っていた...筈だ。
俺の中で忘れている記憶がこの時、少しずつ戻ってきていた。
「この風はいつも俺達を優しく包んでいた。
今吹いてきた理由はなんとなく...分かるが俺はこの戦いを止める訳には
いかないんだ。許してくれ...叢雲紫月さん...」
文月が歯を食いしばった音が月壊参式から通じて聞こえてきた。
「そうか...文月。分かった、決着を付けよう...この戦いを終わらせよう」
俺は俺の忘れていた過去を思い出し、文月と同じように歯を食いしばった。
そう、覚悟を決めたのだ。