月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part22 “敵対する親友 Best friend to be hostile„
「俺は一体何なんだ、か...。そうだな睦月、一言で言うなら
お前はただの化物だ。それ以外の何でもない。お前は能力自体が才能だ。
つまり可能性は無限大で相手の能力をコピーするのではなく、
元々ある相手と同じ能力を自分の引き出しから持ってくる訳だ。
...そんなもの勝てる奴が居るはずがないよなぁ?
...そんな危険な奴が野放しなのはおかしいと思わないか?」
文月はそう言うと手にした拳銃を俺に向けてくる。
「だけど俺は...ッ!!」
その口にしようとした言葉は最後まで続くことなく、
更に崩壊したこの大クレーターに銃声がただただ鳴り響く。
「...ッ!?」
撃たれたその銃弾は俺に当たることなく、
その拳銃の銃口は空へと向いていた。
「さぁ、決着を付けよう睦月...ッ!
俺はあの人の敵を取らなければ気がすまないんだ...ッッッ!!」
文月が拳銃を空へと撃ち放ったのはどうやら合図だったようで
その文月の背部にどこからか現れたか分からない月壊参式と同じ大きさの、
似ている様で似ていないフォルムの大型兵器が着地をし、
パイロット搭乗口が露わになる。そこに文月は迷わず搭乗した。
「戦うしかないのか...ッ!文月ッッッ!」
俺は文月が搭乗したその大型兵器に向かって叫ぶが反応はない。
その大型兵器の腰部には「詠」の字が刻印されている。
「じゃあ...睦月。そこに突き刺さる月の石の刀を手に取れ。
何も素手で戦うことはないだろ?」
文月は先ほどお前に勝てる奴が居るはずはないと言った。
だが何故なんだ。何故お前は余裕な口調で俺に向かってそう言うんだ。
何故...何故なんだ...そんな思いが俺の中を駆け巡る。
「そうか...分かったよ。俺は...お前と戦う」
俺は決意した。この何故なんだという気持ちは文月を問い詰めれば分かると。
文月に勝利し、追い詰めれば分かると。そう確信した。そう信じた。
「やっと乗り気になったか...。でもお前がその決意をする前から
結末はすでに決まっている、見えているのだがな...」
俺が目の前の地面に突き刺さっている刀に手を触れた瞬間、
気づけば後ろへと飛ばされ、ビルの残骸へと叩きつけられていた。
「くッ...お前...卑怯な...ッ!」
何メートル飛ばされたのだろうか。その俺を吹き飛ばした相手、
文月の乗る大型兵器の姿は見えない。
「んな...ッ!?」
気づけば俺の上から更なる追撃としてビルの残骸が降り注いでいた。