月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part18 “最後のメッセージ last message„
この5回目に来訪したのは参式が3体に弐式が1体。
てっきりノーマルの参式ではなく先刻の「滅」や「破」の様な
強化形というだろうか、特徴をもった機体が来ると思ったがそうではない
らしいな。なぜ数的には節目とも言える5回目にこの様な機体が来るのか。
...これも文月が仕込んだことだろう。何か必ず意味があるに違いない。
俺はまず、手頃になった弐式の月の石の装甲を片手で簡単に溶かす。
これで武器を生成し、骨組みとなっている金属部分やバッテリーなどの
内部パーツを切り刻む。これは先程から変わらない。
問題は装甲が厚く、溶かすのを簡単にはいかない参式が3体居ることだ。
だが人は乗っておらずオートパイロット状態の様だ。ならばこれを利用する。
オートパイロット状態で機関砲を使った射撃を繰り出すには標的を
ロックオンするのに...0.5秒ほど掛かっている。
標的が高速移動しているともちろんロックオンするのに時間が掛かる
わけではあるが、それでも確認したところ3.5秒以内には射撃を
開始している。つまり、3.5秒以内には当たれば即死の鉄の雨が降り注ぐ
訳であって。
...だが逆に考えよう。3.5秒も猶予がある。これならば少なくとも
2体の無効化は可能だ。オートパイロット状態の弱点は頭部のカメラなど、
有人の時より弱点は目立つからな。
俺は地を駆け、人間離れしたような速さを見せつける。
すると参式は誘導されたかのようにキョロキョロと頭部を動かす。
そして機関砲を発射するため身構える。
「...0.3、...0.2、...0.1...今ッ!」
俺は小さい声でそう言うと3体居るうちの1体の背中に張り付く。
するとそこには即死の鉄の雨が数秒降り注ぐ。
それを確認しているうちに張り付いている余裕もなく、
機体がボロボロになった。俺はこの場を離れたかと思うと直ぐに空へと飛翔。
そして次の機体へと飛び移り、頭部後ろの月の石の装甲部分に手を突っ込み
溶かし尽くす。すると人間で言う背骨に当たる部分が見える。
ケーブルがグチャグチャと混線しているのが伺える。
俺はそこに残っていた参式の機関砲の射撃をまた、誘導させて2体目も無効化。
...たった3.5秒程で2体とも無効化するのは成功した。
「さて、あとはお前1体だけなんだが...もう終わってるよな?」
そう、5秒ほどに差し掛かった時に溶かした月の石で生成したニードル状の
刃物を3体目に俺の持てる最大の速さで投げ込んでいたのだ。
...それも関節部分に。月壊は壱式から全て2足歩行、もしくは
2足歩行ではなくても少なからず足が2本ある。機動性と防御性の両立の
為だろうが、どっちにしろこれも弱点になる。有人であればパイロットの
コントロールでカバーできるであろうがこれはオートパイロットだ。
両方の足の付け根の関節部分に月の石を突き刺された
最後の参式は成す術がなく、両足を失い地へと倒れる。
「これで終わり...なのか?」
...何か引っかかるものがある。
俺は最後に無効化した参式まじまじと見直すと
背中の搭乗口が最初から開錠状態になっていたのが分かった。
直感でこれは何かあると感じ、中を覗くとインターフェースでもある
モニターに文字が表示されていた。その映し出されている文字は6つ目の
メッセージだ。
「I regret I will not.」俺に後悔はない。
そしてピースサインの画像も表示されている。
俺はこれを見て理解した。これは最後のメッセージだ。
何故ならこれにだけ唯一ピリオドが打ってある。つまり文月のメッセージは
6つ目で終わることとなる。だがメッセージの真相、本当の意味を
理解できていない気がする。アイツは俺を殺すと言っていた。
...これで終わりな筈があるわけない。
俺は頭をフル回転させ、
今までのメッセージと現れた敵が何式かに注目し、思い返す。
1回目:「I cry」私は泣く
...現れた敵:弐式1体。
2回目:「and I Rest a feeling」そして私は心を休ませる
...現れた敵:弐式2体、壱式1体。
3回目:「and I take action」そして私は行動を起こす
...現れた敵:弐式3体、参式1体。
4回目:「In order to try you」お前を試すために
...現れた敵:弐式2体、参式2体。
5回目:「In order to defeat in earnest」本気で倒すために
...現れた敵:参式3体、弐式が1体。
そして、6回目:「I regret I will not.」俺に後悔はない。
...敵は現れず。代わりにピースサインの画像が表示されている。
「そういうことか...そこに向かえば何かがあるってことだな?...文月」
俺はそう囁くとこれで分かった場所へと足を進めた。