月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part15 “第3のメッセージ third message„
1つ目にあったメッセージは「I cry」だった。
そしてそこにやって来たのは月壊弐式。という事はこれに何かしらの
意味があるのだろうか...。
この2つ目の場所には「and I Rest a feeling」とある。
この様子だと先ほど同様に...。などと考える時間もなく。
ほら、やはりやって来た、奴らが。
「グォォォオオオ...ッ!!」と突然大きな機械音を立てる。
出てきた物は1つ目の場所と同じ弐式2体。俺の持つ月の石の刀では
太刀打ち出来そうにない。そして後続で人型アンドロイドの壱式が
やって来る。1人で計3体を相手にしなければならないのか。
「チッ...」
思わず舌打ちした。これらは恐らく文月の差金だろう。
何故なら俺だけを圧倒的戦力差で狙っているからだ。
普通の奴ならば俺は一瞬で倒されるだろうが...それは違う。
俺は不可能でさえ可能にする。
それを胸に刻み込み、俺は月壊に補足される前に身を潜める。
だが、それは無駄な行動だった。補足されていない筈だが正確にこちらに
機関砲を乱射。それに感づき、身を横に投げる。
「ッ...!」
まるで相手が狙ったかのように俺は月壊達の真ん前に放り出された。
だが弐式の姿しか見えず、先ほど居た壱式の姿は見えない。
月壊弐式は俺をすぐ撃つ事は無く、銃口をジリジリとこちらに
近付けてくるだけのようだ。1つ目の場所の弐式とは明らかに行動が違う。
1つ目の場所では明らかに機械的な、標的だけを確実に仕留めようとする
動きだったがこの弐式2体は俺を殺すのを躊躇っている。これを認識した俺は
この弐式達に少し、話しかけてみる。
「なぁ、お前たちは俺を殺すのが目的だろ...?
なのに何を躊躇ってるんだ?...なぁ、教えてくれよ...?」
それに対して、思いもよらぬことが起こる。
「大人しく降伏するんだ...コード:オリジナル、神代睦月...ッ!」
そう、月壊弐式から人間の声で返答が来たのだ。
これで確認することが出来た。月壊弐式はオートパイロットも可能な
乗り込み型の対人、いや、対超能力者用の兵器ということを。
「そうか...分かったよ」
弐式について理解した俺は両手を上げ、武器を捨て、片足から跪く。
それを確認したのか、弐式は銃口を少し下げた。この銃口から銃身は鉄製だ。
その為、武器を捨てた俺では手も足も出ない。だが、機関砲を装備している
肩からのパーツはどうだろうか。鉄ではなく、月の石だ。
...ならば、話は早い。
俺は降伏したと見せかけ、向けられた銃口に飛び乗り、腕を辿るように
肩まで駆ける。その数秒の出来事に反応したもう1機の弐式が
この俺が飛び移った弐式へと機関砲を向けるが...何も出来ずにいる。
...これが狙いだ。
たどり着いた鉄製の機関砲と月の石で出来た接着部分に手を突っ込んだ。
するとどうだろう、粘土のように月の石が溶け始める。
月の石と呼ばれるこの素材は戦車などに使われる合金より硬いとされ、
また加工もしやすく研究開発局の奴らが兵器などによく使うのだが、
生憎何故だろうか、俺には粘土の様に変形させたり、固めさせたりして
自由自在に操ることが出来る。
...つまり俺には効かない。どんなに厚い装甲だろうがそれが月の石ならば。
それを今更ながら認識した。弐式の片腕はいとも簡単に溶け落ちる。
俺は腕だけに及ばずパイロットの搭乗口まで差し掛かり、腕に、拳に、
力を込め叩いた。ただひたすらに叩く。叩く。それだけの作業を繰り返す。
「...ッフハハハハッッッ!」
俺の口から思いもよらず笑い声が出る。こんなデカ物がいとも簡単に
崩れるとは。搭乗部分の内部が丸見えになりパイロットの姿が
見えたところで躊躇っていたもう1機がようやくこちらへ攻撃をしてきた
のだが、その攻撃当たったのは搭乗部分が丸見えになったパイロットで。
俺は既にこの攻撃をしている弐式に飛び移っていた。
そしてまた拳に、力を込め叩く...叩く...叩き尽くす。すると弐式の装甲が
ボコボコになり溶け始め、崩れ落ちる。だが...。
「...ッ!?」
俺は腹部に強烈な痛みを感じていた。
腹部を確認するとそこには姿を消していた月壊壱式の腕が突き刺さっていた。
「...ッ!お前ェェェッ...!!」
俺は右手で振り払った。その右手は壱式の月の石で出来た装甲を溶かす。
その溶けた月の石で一瞬のうちに刀を合成し、電源部分を木っ端微塵にする。
そして壱式の停止を確認し、地面に座り込み、腹部をおさえる。
「腹部を負傷したか...」
だが奴らを無効化することは出来た。
しかしここはまだ、2つ目の場所だ。爆発が起きた場所は5つ。
つまりまだ3つ残っているというのにこの負傷は後に響きそうだ。
簡単に腹部に破いた布を巻き付けた俺は3つ目の場所へ。
そこにあったスプレーで描かれた第3のメッセージは
「and I take action」そして私は行動を起こす、と記されていた。