月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part14 “第2のメッセージ second message„
俺は地面から一気に宙へと飛び出していた。
この勢いはいつもと違い、力がみなぎっているような感覚があった。
その時、月壊弐式が肩に装備している機関砲で砲撃してくるが
そんなものは俺に当たりもしなかった。そしてこの月壊弐式の動きは
とても機械的だ。コクピットはある。つまり、搭乗者が動かしていたら
こんな雑な攻撃はしてこないと判断する。
次の瞬間、俺は一気に月壊弐式から距離を離す。
それを認識したかと思うと月壊弐式も逃がすものかと機体上部にある
カメラのようなもの、頭に当たるであろう箇所を動作しつつロボットには
思えない異常な速さで追ってくる。直線的でなく、ビルとビルを忍者のように
月壊弐式は駆ける。このままでは追いつかれる。
だがこれが落とし穴だ。スピードを出した機体は急には
止まることが出来てもその分反動が起こり、隙が生まれる。
俺は迷わず自分のかかとを地面に叩きつけるようにし、足を止めた。
それに釣られて月壊弐式もビルから駆け下り、着地する。
その隙を逃さず、俺は刀を駆動部である関節部分に振り下ろす。
だがその刀が関節部分を切り落とすことは無かった。
「...ッ!?」俺は絶句し、引き下がる。
だがそれを良かれというように月壊弐式は機関砲で砲撃、
そして腕に装備されたカギヅメで引き裂いてくる。
俺は機関砲を躱せてもカギヅメを完全に躱しきることは出来ず。
腕に深い傷が入る。凄まじい痛みが来ると思ったが興奮状態に
あったため痛みはまだ来なかった。だが出血をしてしまった。
早くカタをつけなければ俺が先にリタイアしてしまう。
俺は駆動部である関節がダメなら先ほど実感した機械的な動きを
制御しているであろう、頭部を撃破することに作戦を変更する。
「...チッ!!」
月壊弐式の周りにどこからか小型キャタピラ走行の月壊零式が
湧いて出てくる。この量は普通では1人でどうにかできる数ではない。
が、この時の俺は一味違った。
「ハァァァッ......ッ!!」
一閃...ッ!俺は月の刀にたった一瞬だけ力を込めたかと思うと、
横に振り切っていた。するとどうだろう。目の前に湧き出た月壊零式が
小間切れに、そして通りに面していたビルでさえ切れ目が入っていた。
使えなくなっていた力が元に戻っている...!?
これは五十嵐に奪われた力のはずだ。何故だ。
しかも、奪われた前と今の威力が...違う。
だが、そんな中で月壊弐式は何事もなくただこちらを向き
呆然と立ち尽くしていた。
「...流石に簡単にはいかないか。...文月」
その様子を見た俺はそう呟き、刀を地面に突き刺し、武器を放棄した。
威力が強大だろうがコイツには通じない。
「さて...これならどうだ?月壊弐式...ッ!」
俺は腰のホルスターから準備したハンドガンを抜き、構える。
このハンドガンは島鮮科せんせーがレールガン装備とは別に用意したものだ。
見た目は普通だが...。
俺はそれを迷うことなく、頭部に向けて打ち放つ。
...それは見事に頭を貫通した。
それに反応したのか、月壊弐式は機関砲をこれでもかと乱射するが
まるでどこかのガラクタのような狙いになっていて俺にはかすりもしない。
これでは可愛そうだと思った俺はと頭部によじ上り、
頭を引き抜く。すると内部が露出。俺はハンドガンの弾数を確認した後、
露出した内部へとフルオートで乱射した。
「じゃあな、月壊弐式」
俺はそう言い残し、この場を後にする。
月の石の刀だけではコイツには勝てなかった。
このハンドガンの弾丸は月の石で出来ている為、刀と違い貫通力が違うのだ。
だがこれは弾数が限られているためあまり使いたくないのが現状だ。
その後暫くの間戦場を駆け抜けた事だろう。
次の爆発が起こったであろう煙の上がっていた場所までたどり着く。
途中、月壊弐式との戦いで負傷した腕を着ていたものを少し裂いて止血をした。
その為まだ俺は戦えるだろう。文月が簡単に俺を近づける訳がないからな。
2番目のこの場所にも赤いスプレーでメッセージが残されていた。
「and I Rest a feeling」そして私は心を休ませる、と。