月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part12 “親友 one's best friend„
「やあ、睦月。そこに居るんだろう...?」
足元に落ちている小さな無線機から発せられた声はどこかで耳障りのある、
いや、昔から聞いているあの声だった。
「お、お前...なんで...」
俺は驚きを隠せなかった。なぜ今、このタイミングで、
この無線に連絡が来るのだろうか。不自然というレベルではない。
これはありえない話だ。ありえない出来事だ。
「やっぱりそこに居たか」
その声音は俺のことを知り尽くしているような言い草だった。
やっぱり、という言い方に何かが引っかかる。そして身に少しの震えが襲う。
「なあ、睦月。俺がなんでお前にこうしたか分かってる?」
何をどうしたのかが俺には分からない。そして俺に分かることはただ、
コイツが何かを企んでいるという事だけだ。
「なぁ、なぁってば?黙ってないで返答してくれや」
だが口調は相変わらず。俺はコイツの心情が1ミリたりとも分かりやしない。
「...........文月。お前、なんで...この無線に掛けている...ッ」
俺はただ1つの小さな疑問を呟く。それに対し親友である文月は笑った。
「ハハッ、ハハハッ...。そりゃこの偵察していた奴らが目障りだったからな」
目障りだった...!?それはどういう意味なのか。
未だに現状を受け入れられない。考えられる事はあるのだが...。
俺はそれを受け入れられない。受け入れたくない。
「それは一体...どういう意味だ...?文月...」
俺は分かっていても、こう言うしかなかった。
「頭の切れる睦月でも分からないのか...?じゃあ答えてやるよ」
文月が無線越しに少しの息を吸い、微かに微笑んだような気がした。
そして俺と文月の間に暫くの静寂が。
俺は覚悟を決めた、その瞬間にタイミングよく文月が答える。
「俺はな、睦月...」
「初めから.........お前の敵だ」
この時、先程の出来事である人造能力者研究開発局の奴らの戦いぶりや
作戦とはいきなりにも程があるほど大きく違くなった理由が判明。
そして5回の爆発が何だったかも悲しくも判明した。
「文月...お前ッ!!」
俺の言葉は途中で途切れた。
「あぁ、お前の言いたいことも分かるには分かる。
これまで長い付き合いだったもんな、分からないはずがない。
でも、悪いがそれももう終わりだ。
なにせ、お前は...あの人の仇だからな...」
そして無線は何もなく、ただ途切れた。
俺は膝を地面に落とした。昔からの親友が...初めから敵だったとは。
俺は受け入れたくなかった。
だが...受け入れるしかなかった。