月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part10 “2人の能力 two ability„
俺とインファストラスはお互いに全力で刃を重ね合った。
だがそんな中でも俺には思惑があり、それを実行していた。
その思惑とは、先ほど狙撃を受けた方角にインファストラスが
背中を向けるように誘導するという単純なものだ。
インファストラスが狙撃で銃弾が飛来した方角に背を向けたのを確認すると
俺は迷わず、手にしていた月の石の刀をブーメランのようにして
弧を描くように放り投げた。
「...ッ!?」
それに気づいたインファストラスは体を後ろへと反って
ギリギリの、無駄のない動きで躱す。
俺はまた、それを確認したと思ったら体を地面に突っ伏した。
そのタイミングで俺の上を凄まじい衝撃音が通り過ぎる。
「なるほどな、スヴャストラスが見えないと思ったら...こういうことか」
俺はそう呟くと、装備していた小型レールガンをインファストラスに向けて
狙いを絞らずに乱射する。
それを超人的な動きで躱している隙に投げナイフを放り、
月の石の刀のところまでたどり着く。その時、後ろから気配がしたため
迷わず刀を後ろへと切りつける。
そこでまた、お互いの刃となる武器が交差し凄まじい轟音が響き渡る。
そして俺は勢いに身を任せ、振り払うとお互いにまた距離ができる。
そこで口を開いた。
「なぁ、インファストラス。お前たち姉妹の能力がやっと分かったよ」
その一言を聞いたインファストラスは一瞬、驚きを浮かべたかと思うと
すぐに冷たい笑みに表情を変えた。
「今まで知らなかったのか...ハハハハ。どれターゲット、言ってみるといい」
俺は刀の剣先を地面に刺した。
「インファストラス、君個人の力は近接格闘だろう。そしてスヴャストラス。
彼女は空間把握能力。そして2人が揃っている時に氷の力が発現する。
...違うか?そして今、こうして息ぴったりで狙撃が来るのは...。
生まれた時から今までずっと一緒に居たからじゃないのか...?」
それを聞いたインファストラスは暫く沈黙をしたが、
「ご名答だ、ターゲット」と言い、言葉を続けた。
「私たちはいつも一緒に居た。あの研究所で生まれてからずっと。
同じ痛みを分かち合ってきた。...だからもうあの痛みを味わいたくはない。
...........だから。....................君を殺す」
インファストラスは先ほどとは比べ物にならない力を放出し、
姿を消した。俺は必死で周りを目で追うが風を切る音しか聞こえない。
恐らくこれは俺の周りを人間離れした速度で走り回っていると推測する。
この状況を打破し、決着をつけるには...。
こうするしかないのだろうな。...彼女が納得はしないだろうが。
俺はすぐに体を動かした。