月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part9 “1人の敵対者に1人の狙撃者One of the adversary and One of the sniper „
地面に突っ伏しているとインファストラスは何やらこれは
作戦通りだったか様に、ニヤリと笑みを浮かべた。
俺は頬から流れる血を右手で拭き、推測する。
この怪我は頬を左から右に一直線に通ったかすり傷だ。
そしてこの怪我を受けた時、風は俺から見て向かい風。
つまり風の音しか聞こえない状態だった。
俺は攻撃を受けたと思われる方向を見やる。
ここはビルの屋上だ。つまり他の崩壊しつつも残存しているビルからの
的になり易い訳だ。
だから俺はこう、推測する。
これはどこからか狙撃されて受けた怪我だと。
狙撃といってもこの狙撃は常人並みではない。
この狙撃をした人物は異常だと予想できる。
何せこの俺の居るビルはこの付近で唯一残存していて
他の登ることが出来る残存したビルはここからはキロ単位で程遠い。
つまり、その狙撃者はキロ単位の狙撃を可能にしている訳だ。
「いつまでよそ見をしてるんですかね?床なんて見つめても何もないですよ?」
インファストラスがそう俺に言い寄る。
「ちっくしょ...」
この状況をどう打破するか。インファストラスの装備は完全に近接武器のみ。
そして背後には狙撃者がいる。だがスヴャストラスは見当たらない。
なるほど...。そういうことか。
「なにやら何かが分かった様な顔をしていますが、ここで貴方は死ぬんです。
ターゲット、覚悟してください...ッ!!」
インファストラスは声を荒らげ、そう叫んだと思うと姿は無い。
その代わり、俺の周りで黒い影とともに風を切る音が聞こえた。
「チッ...ッ!」
俺は装備していたナイフを適当な位置に放る。
そのタイミングで背後から気配を感じるが間に合いそうにない。
「ッッハァ...ッ!!」
気配を感じた背後からインファストラスがトンファーの様なモノで
俺の頭部を叩きつける...が。
そこで轟...ッ!と大きな衝撃音が響き渡る。
俺は咄嗟に顔の前に月の石の刀を取り出すことに成功し、防ぐことが出来た。
その瞬間また、凄まじい音が俺の真横を通り過ぎる。
狙撃だ。今は運良く外れたが当たってしまうとひとたまりもない。
だがどうしてだろうか。インファストラスの攻撃のタイミングに沿って
ピッタリのタイミングで狙撃が来る。
これは.........まさかな。
俺は頭の中をよぎった事を確かめるべく、インファストラスを挑発する。
「おい、決着をつけるなら本気を出せ...ッ!俺もここからは本気で行く...ッ」
その言葉にインファストラスは
「あぁ...そう言うならばこちらも全力で迎え撃つ!」
と返答した。そして俺とは月の石の刀を上段の構えに持ち直す。
それにならい、インファストラスもトンファーを持ち直した。
俺とインファストラスの間に少しの静寂が自然に生まれる。