月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part3 “斬月の因縁の相手 Opponent of fate„
「先輩。...だけど誤算があるみたいです。それも大きな誤算が」
これを聞いた俺は周りを見直す。斬月が言う“誤算„が何だかは
まだ分からないがこちらはこちらで誤算があった。
「道が...塞がれた、か」
そう、予想以上にビルの衝撃が強かった様で俺の周りはビルの残骸で
囲まれてしまい身動きが取れない。
だがそんな事、知ったこっちゃないかの様に斬月の緊迫した声が、
叫び声が無線機から聞こえてくる。
「何で...ッ!何でお前が...ッ!」
どうやら斬月の目の前には誰かが居るようだ。
「何で...どうしてだ!なんでそっち側に居るんだよ...葉月ッッッ!」
斬月が最後口にしたのは人の名前だろうか。葉月と斬月は言った。
「斬月...ッ、どうかしたのか!?」
念を入れて問いかける、が返答はない。
木枯斬月に...葉月という人物。どこかで聞いた事がある。
斬月の口調から推測するに恐らく仲が良かった人物の様に思える。
「ちょっと...待てよ」
木枯斬月という少年が剣道の中学生部門、全国大会準優勝をした、
というのを聞いた覚えはある。そこで俺はこう聞いたことも覚えている。
じゃあ誰が優勝したのか、と。その返答は確か...。
「葉月、奥葉月...ッ」
そう、中学生の剣道、全国大会で優勝した人物は確か奥葉月という少女だった。
「斬月ッ、現状を教えてくれ...!」
俺はインカムを通じて問いかける、問い詰める。
だがその返答は予想外のものだった。
「先輩...彼女は俺の因縁の相手です。先輩ももう察しているみたいですが
彼女...様子がおかしいです。自分が言うことに反応しません。
これはもう、人造能力者研究開発局とかいう奴に...。
だから...ウグッ...ッ!!
ここは...自分が...けじめをつけます...ッッッ!」
斬月がそう言ったかと思うとドシャリ、というまるで地面に投げつけられた
様な、そんな土の音がした。
恐らく、無線機を放ったのだろう。
だがまさか、月の名の者たちが失踪している中こう現れてくる人物がいると
すると嫌な予感しかしない。
ともかく斬月とは今はもう連絡は取れそうにない。
俺が斬月に出来るのは信じることだけだ。
だから俺は今、この場から離れなければいけない。このビルの残骸たちから。
残骸を登って脱出しようにも金属片がちらほらと確認でき、
そんな簡単には脱出出来そうにない。
俺はこの残骸の中に何か使えそうなものが無いかまずは見回ることにした。