表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第13章人造能力者研究開発局篇
182/250

人造能力者研究開発局篇part15 “彼女らの反応„

「俺が最近席を外して皆に心配を掛けていたのには理由があるんだ...」

俺は皆の表情を一つ一つ確認し、そう話を切り出した。


「実は俺は、いや俺達、名前に月が付く者達は水篶や秋葉達とは違って

信じられないと思うが特殊な力、人間離れした力があるんだ」


その言葉に水篶や秋葉、そして何も知らずにこれまで生活してきた皐月が

驚きの表情を浮かべたと思うとまたまたぁ...と苦笑いをする。


「冗談じゃないんだ、これがさ。斬月...頼めるか?」

俺は事前に伝えておいた事をお願いする。


すると斬月は台所から包丁を取り出し、あらかじめ置いてあった

林檎を取り宙へ放った。


そしてその宙に放った林檎に対し斬月は気を込め、包丁を目にも止まらぬ

速さで振るった。


するとどうだろう。林檎自体の見栄えは変わっていないが...。


「秋葉、ちょっとこの林檎剥いてみてくれ」

俺は斬月が林檎にある事を行い、すぐに終えた所を目視し秋葉にそう言った。


その秋葉は「わ、分かった」と言い、

果たして何が起きたのだろうかとソワソワしながら綺麗な手つきで

林檎を向き始める。そして林檎の上部分を少し剥いた所で秋葉は異変に気づき、

驚きを露にする。


「こ、これは...何?」

秋葉がそう言うのも無理もない。何せ、林檎の中身だけが綺麗に8等分

されていて芯の部分も綺麗に切られているのだから。


「これ、どうやったの...何かのマジック!?」

「嘘...でしょ...」

水篶と皐月も秋葉に続き驚きを露にする。


「これが斬月の力だ。こんな感じで俺達にはそれぞれ力があるんだ。

とにかくそれを分かってくれたか?」


驚きを浮かべた3人は返答をしなかった。

無理もない。唐突にそんな異次元的な何かを見せられても

現実だと思えるはずがない。


「俺が皆に心配を掛けていたのはこの力の責任を知るためなんだ。

そしてこの力の本質を知ったのは水篶と行ったファーズランドの脱出不可能

のおかげさ。水篶、秋葉。そして皐月。まだ脱出不可能は終わっていない」


この言葉に嘘はない。水篶や秋葉、皐月もそれは分かっている筈だ。


「で、でも睦月君...。もう長門嘉月さんの会社は...」


「あぁ、アイツの会社はもう...。だがその意志のような何かを、

長門の弟が引き継いだんだ。そして俺はその弟のお陰で自分が何なのか、

分かった気がするんだ」


そう、俺の持っている力“才能を生み出す能力„そして“能力自体が才能„

これを知ったのは誰でもない、長門忌月なのだ。


やり方には気に食わないがアイツなのだ。


「そうか...フフフッ、やっぱりそうだったんだね....?」

水篶が先ほどの驚きの表情でも、苦笑いでもない、にこやかな笑みを浮かべた。


「睦月くんは只者じゃないってことでしょ...?それに斬月くんも、

令月ちゃんだって、文月くんだってそんな感じがしてたよ...」


水篶に続き、秋葉が口を開く。


「全く、水篶ちゃんの言う通りだよ。睦月くんはいつも私を...

いや、皆を、仲間を助けてくれた。それは今でも変わらないよ?」

秋葉が先程の事が何も無かったことのように笑みを浮かべる。


「そっか、だからバカアニキは帰ってくるのが遅かった、

いっつも心配かけてた訳なんだね。安心したよ...バカアニキ」


俺はこの3人の言うことに逆に驚いていた。


「お前たち...何とも思わないのか...?俺達月の名を持つ者は人間離れした

力を持ってて...いつでも人を殺せてしまうかも知れないそういう危険な

力を持っている...奴なんだぞ...?」


俺はプツプツとしか出てこない単語をなんとか言葉にした。


「だってさ...睦月くんはさ、人間じゃん。私たちと同じだよ。

それに睦月くんは虐殺をするような人じゃないよ?私は知ってるよ?」


「水篶...お前...」

俺は遂に言葉を失う。


「そうだそうだ、睦月くんは正義の味方だよ。

決して悪さはしないの皆知ってる。今更何を言うのさ、睦月くんは

昔から優しくて、色んな力を持ってたじゃない?だから今頃言われても

私たちはそんなことは気にしないし...人にも言わないよ?」


「秋葉まで...」


「ま、そういうことだよ、アニキ」


「あぁ、皆、ありがとう」


俺は本音を、真実を話して良かったのだと心から思った。

だが予想外の質問が飛んでくる。


「じゃ、1つ聞くけどさ、斬月くんがそういう刃物の力なら睦月くん本人と

令月ちゃん、皐月ちゃん、文月の力って一体...?」


秋葉からそのような質問が飛んできた。


「それは...」


俺は山吹さん、文月の力を知らない事に気づいた。

そして皐月に対しても今まで力がどんなものなのか気にはしていなかった。


俺は自分のことに手一杯だったのかもしれない。


「わたしは...まだ、自分でも分からない」

壁に寄りかかっていつものように本を読んでいた山吹さんがいきなり

口を開き、そう言った。


「そうなんだ...。じゃあ文月は?」


「文月の力は正直、ハッキリはしていないんだが俺は分析とかそういう力

なんじゃないかと踏んでる。あと俺の力は才能を生み出す能力...」


そう言うと水篶や秋葉の2人が「睦月くんらしいね...」と口にした。


そしてその後、皐月の力がまだ分かっていない、もしかしたらまだ

発現していないんじゃないかという事と今後の月の名の持ち主である、

俺、山吹さん、斬月の方針を話した。


それはこの間知ったばかりの情報にあったこの近辺で行われようとしている

月の名の持ち主殲滅及び捕獲作戦についてだ。


俺たちはそれに対抗しようと思っていると言ったところ、

水篶や秋葉は反対しなかった。そして皐月は自分も一応月の名の持ち主なら

アニキについていく必要があるよね?と言い、何も言わなかった。


文月は相変わらずだがこれでいつもの仲間の方針は固まった。


あとは作戦日に向けてやれる事をやるだけだ。

俺は作戦日、水篶や秋葉に避難するか島鮮科せんせーの所に行くか

どちらか良いかと聞いた後、彼女らに当日はこの近辺に

近寄らないよう指示した。この2人を巻き込む訳にはいかないからだ。


2人は俺達を凄く心配していたが今話せる事を全てこの場で話していたので

「私たちができるのは皆の無事を祈ることだ」というのが2人の結論になった。


気づけばもうとっくに日が落ちていて、真夜中になっていたので

俺は皆を送れるところまで送り、今日は皆と別れた。


家に戻るとメールが届いておりどうやら、

今後、水篶は錦織の本家がある関西に帰郷することになり、

秋葉は県に住んでいる友人の家に泊めてもらうことが決まったようだ。


次に水篶や秋葉に会うために俺は月の名の持ち主殲滅及び捕獲作戦を破綻させ、

そして月の名の持ち主を守り抜き、生き残らなければいけないと心に決めた。


親父はこんなことになっている事を予想していたのだろうかと

俺の脳裏を横切ったが俺は俺、親父は親父だ。


旧世代と呼ばれていた時、親父が何をして、何を救って、

何を残したかは知らない。だが俺は親父の様にはなりたくないと思った。

理由は分からない。だが俺の本心がそう囁いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ