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脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第2章弓張月学園篇
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“豹変 a sudden change„

2016/1/27(水)改稿。

 血塗られた包丁の隣に置かれていた手紙の内容はこうだ。


 「よくこの金庫にたどり着き、金庫を解除した。

これを解除し、この手紙を読んでいるという事はあの殺人現場から

暗証番号を解読したという事だ。それにおいてはおめでとうとでも言っておく。とりあえずこの手紙では脱出を望む君たちにヒントをやろう。


 出たいのならばやって欲しい事はただ一つだ。

それは……月を持つものをぶっ壊して欲しい、ただそれだけだ」


 これを皆が聞こえる様に読む作業を終えると他のクラスメイト達の目線は

包丁に向いてあり、体が小刻みに震えているのが伺えた。 

もう叫んだところで何も起きない、悲鳴を上げたところで何も変化のない

この現状を受け入れたのだろう。


 そして皆、恐怖に怯えているのだろう。


 こんな顔見知り状態でギクシャクしているこのクラスを

初めてどうにかしたいと実感した。そんな気持ちは自然と俺の体を動かす。


 「この包丁は家庭科室の物だ。俺が処理しておくから皆は教室に戻って

気を安静にしよう? ………後は任せろ」


 少し強気に言ったが俺も内心ビクビクしていた。

だがここでやめるわけにはいかないという決心がその気持ちを上回っていた。


 その様子を悟ったのか、クラスメイトたちは悪い、と言いながら

すぐにこの場から離れて行った。現場にはただ一人、俺が残る。


 俺はまず血塗られた包丁を血に触れぬように水道で洗い流し、

包丁カバーが金庫近くに置かれていたのでそれに納める。


 その時ふと、思い出す。


 「月を持つものをぶっ壊して欲しい」


 この一言が俺の心に引っかかるのだ。

この出口がすべて閉鎖された状況で月を持つものと言えば何があるだろうか。


 ……弓張月学園ゆみはりづきがくえんか?


 いや、それは無いだろう。今俺達が閉じ込められているというのに

破壊してあっさり脱出など出来るはずがない。


 では他に何があるだろう……。頭の中を整理していたらクラスへと着く。クラスの前から何か、大きな騒めきが聞こえてくる。どうやら、何かが起きているようだ。俺は迷わずクラスの戸を開いた。


 中の様子は黒板に書かれた文字にクラスメイト達が注意を向けている

光景だった。その黒板には犯人からの手紙にあった「月を持つもの」についての議論メモが書かれており、その内容は以下の通りだ。


 月を持つもののリスト

 ①弓張月学園ゆみはりづきがくえん

 ②校舎の中で一番、月が見える場所

 ③神代睦月こうじろむつき


 俺が最後の選択肢に目を向けたと同時、

クラスメイト達は同時に俺の方を見た。


 「お、おいどういうことだよ…」


 俺は恐る恐る聞いてみるが返答は無く、

鋭い視線がただ、俺に刺さるだけだった。

 

 「どうかしちゃったのかよ、皆……」


 俺はそう言い残し、居づらいこの状況から脱した。

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