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脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第13章人造能力者研究開発局篇
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人造能力者研究開発局篇part11 “脱出のキッカケ„

どれだけ時間が経ったのか分からない。

だが相変わらず俺は地面に崩れ落ちたままの姿勢で

ずっとこのひび割れている床をただひたすらに眺めていた。


俺に押し付けられたのは今まで良く使っていた、

斬月の力を真似た斬撃の力を失ったという現実だ。


俺は五十嵐のあの言葉を何度も、何度も脳内再生してしまうほど

現実を受け入れられなかった。あるいは受け入れたくないのだろうか。


「じゃ、君の力を喰わせてもらうよ」


あの言葉にはこんな重みまで備わっていたのか。


「ハハハハハ...」思わず俺は笑みを浮かべる。

その行為に特に意味は無いがもう笑うしか無かった。


そしてまたしばしの静寂が戻り、床を眺めるしかないと思っていたが

俺は咄嗟に目を前に向けた。


「やっと気づいたか、ターゲット」


「ずっとそんな調子とは貴様らしくない」


そこに居たのは淡いブルーの髪を持つ双子。

1人は背中まで髪を伸ばし、大人しそうにも見える少女。

1人は肩に届きそうなショートヘアの凛々しく構える少女。


この2人には言わずとも見覚えがあった。


「ムーン=スノー姉妹か。無事だったんだな」


俺から出た言葉に対し2人はやれやれといった表情を浮かべた。


「貴様は相変わらず敵である我々を気にかけていたのか」

「この状況でそんな発言をする貴方に疑問を感じます」


「こんな状況だからさ。もう俺は力を1つ失った。

ここから出る手段も考えることをやめた。そんなどうしようもない状況

だからなんじゃないかな」


俺は自分自身何を言っているのか、もう訳が分からなかった。


それを聞いた2人は何も言わずに持ってきていた大きめの袋をあさり始め、

何も言わずに鉄でできた何かを取り出した。

それを見た俺は思わず口を開く。


「どういうつもりだ...?」


彼女ら2人が取り出したのはこの牢の鍵だ。

なぜこの2人が俺にそんな行為をするのかが分からなかった。


「これは五十嵐の命令ではない。我々の独断だ」


スヴャストラスはそう答えた。


「じゃあ尚更だ。どうして俺を助ける...?」


「あの時の借りだ。借りを返したかった。それだけだ」

スヴャストラスに続きインファストラスはそう答えた。


あの時...、大崩壊地区の時か。


「さぁ、出ろ。五十嵐の言っていた通り貴様はこんな所で終わる奴じゃない。

この先の警備も貴様のせいで手薄になっている」


俺は牢から出て、言われた通り脱走しようとすると手を取られた。


「か、勘違いするんじゃないぞ。ただ借りを返した。それだけだ」


「そうです、お姉さまの言う通り借りを返しただけです。

その...まだ決着も着いてないですし...」


「あぁ、分かってる。次会う時には決着を着けよう」


俺はそう言い残しこの人造能力者研究開発局からの脱走を

いや、脱出を試みる。この施設の情報も一通り実は取得した。


もうこれ以上ドジを踏むわけにはいかない。

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