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脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第13章人造能力者研究開発局篇
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人造能力者研究開発局篇part10 “独房にて思い出す奴の言葉„

目が覚めるとそこはもう、先ほど居た筈のエレベーター付近のではなかった。

そして今目の当たりにしているのは大勢の警備員や月壊壱式ではなく、

あの五十嵐喰月でもない。


今居るのは黒い鉄柵で前面を覆われ、とても窮屈に造られている部屋。

牢屋なのだろうか、目が覚めたこの場所はギシギシと音を立てるベッドの上。

膝には申し訳程度の薄さの毛布が掛けられており、見渡すとドラマでよく

見かける様な床にそのまま面している汚い和式のトイレや、

ヒビが入っている鏡、少し腐りかけているように見える木製の机と椅子。


どうやらこの施設に備えられている独房のようだ。

部屋のサイズや設備からして俺は確信した。


「そうか...俺はあの後...」


あの後、俺が五十嵐に頭を掴まれ体ごと持ち上げられた。

そして俺は気を失ったのだ。この後の記憶がない。

気づけばここに、独房に入れられていた訳か。


そういえば俺の身につけていた服が変わっていた。

この服は一種の拘束具なのか、妙に肩周りが動きづらい。


「あくまでも逃がさない訳か...」


この服だけではない。この前面の鉄柵は言わなくても分かるだろうが、

鉄製だ。このご時世で高い強度を誇るのは月の石という謎物質だ。

その為逃がしたく無いならば月の石を使った柵を使うのが妥当だろうが

敢えて奴らは鉄製の部屋に俺を閉じ込めている。


今は月の石の加工技術は不明とされているのだが

この人造能力者研究開発局という機関は言わずともその技術を持っている。

しかしその加工技術は表には出さない為、大崩壊地区と呼ばれる

あの大規模な土地は手をつけられずにいる訳だ。


そんな月の石を自在に操れるという人物、俺のことは機関はお見通しという

ことだ。だから敢えて鉄製にして脱走はさせない、か。


「だが...甘いぞ」


俺はベッドから立ち上がり、鏡の前へと。

鏡の正面に立ってやると右手に力を込めて、勢いに任せて

鏡を素手で叩き割った。


多少皮膚を擦り切ったが、目的の物である鏡が割れて出来た鋭い破片が

手に入った。これが脱走、いや脱出の役に立つのか。


ただの人間には役には立たないだろうが、俺は月の名の持ち主。

他とは違う力を持っている。


俺は破片は再び右手に持ち、力を込めた。

そしてイメージをした。斬月の様な斬撃を繰り出すイメージを。


もう何をするのか分かったのではないだろうか。

そう。斬撃の力でこの鉄製の柵を断つ...ッ!


俺は鏡の破片を勢いよく鉄製の柵に向け、振りかざした。


しかし、その柵が断たれる事は無かった。


その現実を目の当たりにした俺はアイツの言葉を、五十嵐が最後に言った

言葉をふと、思い出した。


「じゃ、君の力を喰わせてもらうよ」


アイツが軽いノリで言っていたあの言葉が現実になったのだ。


それを思い知らされた俺は地面に崩れ落ちた。

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