人造能力者研究開発局篇part5 “緊迫する施設内„
ダムの中は大規模な施設に改造されていた。
中は異様に薄暗く、時々明かりがちらほらと照らしてくる。
この光は恐らく警備してる奴の懐中電灯だろうな。
どこに向かうか、そんなものは決めていないが
ともかくこの施設を偵察する事で何が起きている、行われているか
知りたいのだ。俺は月の名の持ち主なのだから。
俺はただひたすらに警備員の目を掻い潜りながら施設内を彷徨った。
そして暫く歩き回ると何か、遠くで呻き声が聞こえて来る様になって来た。
俺はその声が聞こえる所に向かうことにして、注意を怠らない様に警戒心を
俺は更に強める。
「ウワァァァァァ............ッッッ!!」
声が近くなって来た。とても近い。
俺はその声がしてくる部屋のドアを見つけ、静かにドアを少し開き
中の様子を覗いた。
「ウグッ...ウワァァァァァァァァァァァ...ッ!!」
俺が見た光景は拘束着に包まれた1人の人間...?が
何人もの白衣を着た人々、科学者に囲まれているという光景だった。
拘束着に身を包まれた人物は暴れまわっている。
そして良く見えないがその人物の頭部に異変を感じる。
何か...その人物の頭部が赤く見えた。普通ならば髪で黒く見える筈なのに。
まさか......とは思ったが深く考えたくなかった。
そしてドアを閉めようとした、その時だった。
「ウ、ウアァァァア、そこ、そこに.........誰が、誰か居る、のか?」
その声は拘束着に身を包まれた人物の様だ。
「助けて...た、す、け、て...。助けてくれェ...!ッガァァァッ!!」
その拘束着の人物は男の様だがソイツのせいで周りを囲んでいた
白衣の科学者達の目線が一気にこのドアに集まる。
俺はすぐさま身を隠す...が。
「そこに誰か居るなッ!出て来いッ!」
科学者の1人がそう発した。だが出る訳には行かず、身を翻そうとする。
が、遠くから多くの足音が聞こえてくる様な気がする。
それもまるでこちらに走って来ている様な。
「.......ッ!」
その足音は段々とこちらに寄って来ていると確信した。
その足音を出している人々が明かりを灯していたからだ。
「無駄だ。早く投降しろ!こんな時間に同じ科学者など居るはずがない!」
どうやら科学者達が呼んだ、警備員達のようだ。
まさか施設内で警報を鳴らさずに直接警備員を呼ぶ方法があるとは...。
警備員がうっすらと見えて来る。俺はこの場でじっとしている訳にも行かず、
施設の更に奥へと走った。