“金庫の中身 The contents of the safe„
2016/1/25(月)改稿。
まず死体の状況について整理しよう。
初めに瀬々良木さんの死体の状況だ。
彼女の服装は弓張月学園指定の青いジャージに
白いラインの入った特徴的なジャージだ。だがその特徴的なジャージの青色は
赤で血塗られている。
また、後頭部には打撲痕が見受けられる事を鑑みると誰かとこの場で争った跡なのかもしれないな。そして忘れてはならないのは彼女の体勢だ。彼女の足はロープで縛られており、そのロープは天井へと固定され逆さまで宙づりの状況にある。
以上が瀬々良木さんの死体の特徴だ。
次に担任の先生だ。まず目を引くのは心臓当たりに突き刺された刃物だ。
刺された刃物が包丁である事を考えると犯人は一度家庭科室に
寄っている事が浮き上がる。また、手に持つ紙には「LOSE……」と
書き込まれていた。
これらの特徴で何か分かることはないかと思考を総動員するが
これだけでは明らかに証拠不足だと考える。ここで俺はやぶからぼうに
クラスの学級委員に問いかけた。
「なぁ、学級委員さんよ。この学校になにかヒントとか
隠せそうなところあるか? どこでもいい、なにか……」
その答えは思ったより早く返ってくる。
「あぁ、そうだなぁ。あるかもしれないところが一つだけ。
事務室にいつもなら埃の被ってる金庫があるんだけど今日は埃が
なぜか被ってなかったんだよね……」
埃が今日に限って被っていない。これは耳寄りな情報だ。
「………金庫か」
そう呟きつつ、俺は担任の持っていた手紙を百八十度回転させ、
逆さまに持ち替えた。
するとどうだろうか。「LOSE」という単語が数字の「3507」に
早変わりしたではないか。そう、「3507」だ。これこそがその金庫の暗証番号で間違えないだろう。何故この事に気づいたか。それは手紙を持っていなかった、瀬々良木の死体の特徴にある。
瀬々良木の死体はわざわざ殺害された後に
逆さまに吊るされているのだ。何故犯人は時間を要してまで逆さまにしたかは
その手紙のトリックに使うためだったのだろう。
つまりはこれは俺に対する挑戦状であるように受け取れる訳だ。
そこで俺は口を開く。
「分かったことが幾つかある。その真実を知りたい勇気のある奴は付いて来い」
そう伝えたかと思うと俺の足は既に出ていて教室を出た。
廊下は今まで見たことないくらい不気味な静けさで自分の歩く足音が
とても大きく聞こえていた。
移動が終わり、辿り着いた目的地は金庫のある事務室だ。
学習室以外の鍵は開いているので普通にドアを開ける。
事務員の整頓された机たちの先にあるロッカーの隣にその金庫は置かれていた。確かに学級委員の言っていた通り、埃は被っておらず使われた様にも思える。
「んで、金庫まで来たのは良いけどもよ、どうすんだよこれを?」
クラスの男子がそう言ったのに対し、俺は一言「普通に開けるだけだ」と返す。
そうして手紙から解読した番号をそのまま入力してみると
「pipipipi………」と音が鳴り、数字の表示されていた画面が「open」の表示へと変わり、金庫のドアが開いた。
その金庫の中に置かれていたのは、
血塗られた真紅の包丁と、二つ目の手紙だった。