新生脱出不可能の始動篇part10 “旧世代の謎„
「それは簡単だよ父さん。聞きたいことは月の名前を持つ者が持つ力や
父さんの世代の月の名前を持つ者とか何でもいいから教えてくれ」
それを聞いた父さんは一瞬驚きの表情を浮かべたと思えば、
やれやれという表情に変わり口を開いた。
「そうか、その様子だともう分かってきているんだな。
仕方ないがもう話す時が来たみたいだな...」
父さんはしばらく黙り込んだ後言葉を続けた。
「まずは月の名前を持つ者が持つ力についてだがこれはもうあの五十嵐や
長門嘉月とかいう奴に教えてもらったんじゃないか?だから俺から言う
必要はないよな?」
確かにそうだった。
「だから父さんの世代の時について話そうか。
父さんの時を今では旧世代と今を生きる月の名の持ち主は
言っているそうだが、全くその通りだ。今のお前や仲間達に比べたら
それはそれは弱い力しか持っていなかったな」
「そうなのか?」
「あぁ、原初の三日月と呼ばれている3人は成功例だ。
俺達、旧世代だった奴らの後に彼らが主体となったんだからな。
元々の月の名の持ち主と呼ばれる奴らは旧世代から始まり、
次に原初の三日月と呼ばれる連中が現れ、今に至るわけだ」
「そうだったのか...。
そうなると月の名の持ち主は父さん達が始まりなんだな。
だけど1つ引っかかることが.........」
「あぁ、言われなくても分かるさ。月の名の持ち主という超能力者は
なんなのか...という事だよな?」
「あぁ」
そう。俺達の様な普通では有り得ない力の持ち主が何故存在しているのか。
過去では超能力者というのは小説や漫画に出てくる架空の存在だったはずが
今ではこうして生きているんだ。
「全ての始まりは島 鮮科や五十嵐の居たあのクソ長い名前の機関...
そうそう、人造能力者研究開発局からだ」
んな...!?
「おいおい睦月、超能力者なんてものが初めからいる訳がないだろ。
何事にも研究が必要だ。つまり俺も...いや何でもない....」
父さんは急に言葉を詰まらせた。
「どうかしたのか?」
俺は疑問の表情を浮かべる。
「いや...この話はもう止めよう。他に何かあるか?」
父さんが話題を転換した。何かあるのだろうが言及はしない方が良さそうだ。
「月の名の持ち主の始まりは分かった。じゃあその時からの父さんの力とか、
その原初の三日月、大崩壊とか...人造能力者研究開発局の実態も教えて」
それを聞いて父さんはタバコを取り出しゆっくりと話し始めた。
「そうだな...。俺の力は今はもう無い。
ついでにその当時の記憶があるのは俺だけだ。
理由は島鮮科にでも聞くといいさ。それで俺の当時の力は自己強化だ」
「自己...強化?」
「あぁ、お前が想像するようなものじゃない。自分の記憶力を強化したり
計算力を強化したり、運動神経を強化したり。それだけさ。
何か戦いや争いには使えない」
「そうなんだ...」
「その戦いや争いには使えないという事を覆したのが原初の三日月の3人だ。
風を操る、叢雲紫月。あらゆる温度を司る、久我暁月。
そして最後に水を操る御剣蒼月の事を言う。さっきも言ったがこの3人は
成功例、実験の成功例だ。だが大崩壊後、叢雲紫月以外は死んだとされている」
「じゃあこの3人が大崩壊を引き起こしたのか。じゃあその引き金はなんだ?
そして死んだとされているとはどういうことだ?」
「それは3人の意見の食い違いだ。引き金は人造能力者研究開発局の存在。
人造能力者研究開発局を潰そうとした者や守ろうとした者、関わらずに
逃げようとした者のな。そして争ったため大崩壊が引き起こった。
だがその被害の範囲が広すぎる。その理由は誰も分かっていないんだ。
そしてそのあとの生存者で確認できたのが叢雲紫月だけで2人は
分からなかったから死んだとされてるんだ。分かったか?」
「あぁ、分かった。じゃあ最後に1つ聞いていいか」
「なんだ?もういい加減飽きてきたぞ...」
「その引き金となった、能力者を生み出した人造能力者研究開発局って
なんなんだよ...実験とかそんな事言ってたな...?」
「人造能力者研究開発局は今でも普通に人体実験を黙認している機関だ。
裏社会の実力者を始め、政府の有力者がその存在を知っていて
普通の人間なら何も知らない。
何故そんなものがあるか、それは世界の裏では能力者を生み出すための
研究の競い合いが起きているからだ。超能力者の存在は核ミサイル以上の
力を持っている。核を持てないこの国でさえ手にしようといている力だ。
そんな力があれば国の安全は保証されるだろう...?
そして実験はその人体実験を指す。もう思い出したくもないが
俺の様な旧世代の人間は全てこの実験を受けさせられた元奴隷と言っても
過言じゃない...。知らないうちに選抜され...選りすぐられ...
選ばれた者達が皆揃って月の名前を持っていた。
これはもう運命だったんだろうな。その血を受け継ぎ今のお前が、
月の名の持ち主がいる。これが人造能力者研究開発局だ。
そして月の名の持ち主の正体だ」
そんな...なんでそんな機関を誰も止めようとしないんだ!?
おかしいだろ...なんでなんだ。
「父さん...なんでそんな機関が今も存在できてるんだ?
誰も止めようとしないのは...おかしすぎるだろ...ッ」
「俺達は止めようとした。だけど無理だった。不可能だった。
そして連中に記憶を奪われたんだ。力も奪われた。何もかもな。
お前のお母さんもな..................もういいだろ。帰ろうか」
父さんはそう言って足早に家に向かってしまった。
いつもお気楽な感じで仕事をしていた父さんにそんな過去があったのか。
そして俺の母さんは人造能力者研究開発局のせいで...。
こんな現実、許せるはずがない。
何故なんだ、こんなものが存在しているのが許せない。
俺は知ったことを心に深く、深く刻み自分も家へ向かった。




