新生脱出不可能の始動篇part8 “もう1人の欠席者„
学校に着き、自分のクラスがあるフロアにたどり着くと
もう自分は注目の的だった。1ヶ月と半分ぶりに来たのだから仕方ないと
内心思いつつ、クラスのドアを開ける。
そこにはいつもの教室の風景が広がっていたがドアを開けて真っ先に
こちらを向いた人物が2人。水篶と秋葉だ。だが2人は席に着いた俺の
ところへとすぐには来ず、ホームルームが始まった。山吹さんは
相変わらず本を黙々と読み続けていた。
ホームルームが終わり、2人がやって来る。
だが口を開こうとはせず、俺の言葉を待っているようだった。
「その様子だと皐月から少しは話を聞いたみたいだな」
俺は家に着き、着替えたりした後に皐月に適当に言っておいたのだ。
「うん、聞いた。でも私達、心配したよ...あの時いきなり先生が
神代君は出席停止扱いですとか言って...詳しい理由も分からないまま。
水篶なんてお父さんに相談してお金使ってでも探すところだったんだよ...?」
秋葉がうつむき加減にそう言った。
「悪かった2人共。心配かけすぎているのは分かってる。
でも俺にはやらなければいけない、逃げるわけにはいかない...
そういったものがあるんだ...迷惑を掛けるとこだったけど...
許してくれると嬉しい...そして今後もこんなことがあるかもしれないから
その点、理解してくれると有難い」
「分かったけど...睦月くん。無理はしないでね?」
水篶も秋葉と同じようにうつむきながらそう言った。
こんな調子ではダメだ。話題の転換を...。
「そ、そういえば文月の姿が見えないんだけどもアイツはどうしたんだ?」
そう、今日の初めから文月を見ていない。
「文月も睦月くんが出席停止扱いになってちょっと経った辺りから
学校休み始めてて...理由をメールで聞いてみたらなんかお父さんの
仕事を手伝っているとかどうとか...」
流石幼馴染の秋葉だ。文月のことなら俺と同じで良く知っている。
「そうなのか...」
文月の父親、霜凪道義は政府の官僚の中でも一番力を牛耳っていると
言っても過言ではない人物だ。もしかしたら俺のいるこの国も
やつの思い通りに動いているのかもしれないと考えられるほどの実力者だ。
そんな力の持ち主の仕事の手伝いという事は相当大変なんだろうなと。
「でもアイツはそうなると1ヶ月も休んでることになるよな」
「うん。そのメール以降、返信もなし」
「もう...心配だよ」
2人が暗いのはそういう理由でもあったのかと考えていると
チャイムが鳴り始めた。俺達は授業の準備に取り掛かり、
何もないまま今日の授業を終えた。