表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第12章新生脱出不可能の始動篇
162/250

新生脱出不可能の始動篇part5 “そこにあった絶望„

「..................ッハァ」

このエントランスホールの真っ平らな床に寝ていたからか

背中の痛みで目が覚めた。


時間は...分からない。携帯端末の電源を入れられることは

分かったが日にちが表示されるだけ。今は3日目と表示されている。

時間が分からない空間で長期間過ごす事になる訳か...。

そうなると人間というものは正気を保っていられるのだろうか...

いや、そんなことを考えていたら余計自分を見失うだけだ。


ともかく昨日と同じように古城を同じルートで見回り、

どこか部屋のドアが開いていないか確認する。


だが部屋は開いていなかった。開いているのは相変わらず厨房とゴミ捨て場。

それだけだったのだ。もう考えられるのは1つ。日にちによって

何かしらのギミックがはたらくか、日にちによって何か出現するか、

何かがいつもと変わるか。これしか考えることが出来ない。


だがこれが当たっているのか分かるには大人しく同じことを繰り返すしかない。

起きて、見回って、食事をとって寝る。起きて、見回って、食事をとって寝る。

この動作を日々繰り返すしかない。


この先のことは...もう考えるのはやめた。


次の日。起きて、見回って、食事をとって寝た。

その次の日。起きて、見回って、食事をとって寝たがあまり寝れなかった。

そしてその次の日。起きて、見回って、寝た。食欲が無かった。


そして7日目。もう1週間が経った。

まだ自分を保っているがもう、おかしくなりそうだ。

古城の室内の変化はなし。携帯端末には7日目と表示されている。

この日はやけに眠たかった。


2週間目。起きて、見回って、食事をとって寝た。


3週間目。「...グッ...ハァ...カッ」言葉が出なかった。

自分が何を言いたいのか分からない。やれたことは同じ動作だけ。


4週間目。動く気力がなくこの日はボーッとしていた。

もう1ヶ月が経つのだと心の中で思った。言葉は言葉にならない。

助けなど来ない。脱出方法は...無い。あるはずがない。


1ヶ月と1週間に差し掛かった。「.........」

言葉も何もする気力は無くなった。朽ちて死ぬのだと考え始めた。


1ヶ月と2週間目。もう自分に希望はないのかと考え始めた。

腹が減った。食事をとっても腹が減った。もう体の感覚がおかしく

思えてきた。このまま死ぬのだろうか。あいつはこんな果てた姿を

どこかにあるカメラで見ているのだろうか。あの長門忌月は。


見ていないはずがない。あいつは俺にこの苦痛を与えている張本人だ。

どこかで鼻を高くして笑っているのだろう。


「..................クソが」


言葉になった。それも口から言った。

心の中で考えることしかもう出来なくなって来ていた俺が

また口から言葉を発せた。あんな奴に屈したくない。


1ヶ月と半分。もう絶望しかなかった。食料が無くなった。

もう死ぬのか、死ぬしかないのか。いやこんなところであんな奴に

屈する訳にはいかない。俺を待っている人が居なくても、

俺を心配している人が居なくてもあんな奴に屈する訳にはいかない。


俺は長門嘉月の作り出した脱出不可能をクリアし続けたんだぞ。

俺1人で。.........俺1人で?


最初のファーズランドの脱出不可能は俺1人だったか...?

いや、あの時は水篶が...。そこから先も水篶達が居たから...?


ハハハハ、なんだ居るじゃんか。俺を心配してくれて信頼してくれて

頼りにしてくれる奴らが。俺の異変に気づいて探してくれているかも

しれない仲間が。こんなとこで終わってもいいのか?

不可能だって俺は可能にしてきたじゃないか。


じゃあどうするよ。出来ることは何もない。

なら、せめてもの足掻きをしてそれでも駄目だったならそれで

良いじゃないか。もう出来ることは無いが。


やれることはある。


俺は大きな門のような入口を、固く閉ざされた入口を叩いた。

叩き続けた。俺に今やれる、最初からやれるのはこれだったのかも

知れない。なにもしないよりはマシだ。


俺は入口をただひたすらに叩いた。叩き続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ