新生脱出不可能の始動篇part4 “自分を知る為の過酷な試練 „
まずは長門忌月の言っていた厨房とやらに行くことにした。
その厨房は俺の居るこのエントランスホールと隣接していたため
すぐに着いた。
「無駄に規模がデカくてプロ御用達のものばかりじゃねぇか...」
厨房を見て思ったことが口に出てしまった。それほど充実しているのだ。
家庭では無駄に電気を大幅に消費する業務用大型冷蔵庫が3つも。
そしてその横に大きなドアが。ドアの上にプレートがあり冷凍室と
書かれている。
他にもコンロやら乾燥食品などが置かれた棚、調理器具なども
完全完備していた。これほど用意しているということは長門忌月が
「今の君じゃ...とんでもない時間が掛かりそうだから」というのが
現実味を帯びてくる。軽く1ヶ月とかの食料があるといっても
過言じゃないぞ、これ。
だがそんなに時間をかけるわけにはいかない。
俺には俺のことを心配してくれる仲間ががいる。
早くここから出なければならない。ともかく厨房の様子を確認したし、
他のところも見に行くことにした。
厨房を出て隣に合った部屋に入るが、そこはただのゴミ捨て場だった。
他の部屋ならばとエントランスホールにある階段を登り、
個室のような部屋が沢山並ぶ廊下に来た。そして俺は一番手前のドアの
ノブに手を掛けて開けようとする...が。
「...鍵が掛かってて開かないな」
他の部屋も同様だった。開かない、開かない...開かない。
このだだっ広い古城を徹底的に探索したが部屋という部屋は全て
開かない。唯一入れるのは厨房、ゴミ捨て場だけ。
脱出手段が見つからない。壁なども注意深く見たが何もない。
建物の外壁部分にはガラスの部分がない。よって電気の明かりがずっと
付いたままである。どういうことなのか俺もわからない。
何も...無いのだ。仕方なく俺は元々居たエントランスホールまで
戻ることにした。
そして脱出手段が元々無いのかと考え始めた。
つまり、監禁されているのかと。俺はまだ長門嘉月の弟、
長門忌月の事を知らない。もしかしたら...と考えてしまう。
だが奴は脱出不可能のゲームマスター、開発者になったはずだ。
そんな奴がそんな手を使うはずもない。
じゃあどうしたら良いのか。俺には分からなかった。
そして時間はそれだけを考えるだけに費やされ、消えていった。
だが答えが出るはずもなかった。何もないのだから。
その時、タブレット端末が起動した。
画面には「1日目終了」と表記され、その後「2日目開始」と
暫く表示され、消えた。
そういえばこの古城には時計がなかったな...と今更思った。
つまりこのタブレットでしか時間経過が分からないのだと。
この過酷な状況を改めて見直し、
そしてとりあえず寝ることしか出来なかった。




