新生脱出不可能の始動篇part2 “自分を知る時間、考える時間 „
封筒に入っていたもう1つの紙は2つに折られていて、
それを開くとこう書かれていた。
「まず君が新生脱出不可能をチャレンジするためには自分を知る
必要性がある。だが君にはそれが足りていないため脱出不可能に挑戦する
資格が無い。だが兄を倒して苦しめた男を放って置くこともできない。
情けないがそこは手助けをしてやろうかと考える。自分を知るためにね。
日時:週末の土曜 場所:???」
とだけ書かれていて場所は記されていなかった。
となると、また目が覚めたりするとその場所に居るのだろうか。
今考えてみると少しぞっとした。
だが今日は水曜日だ。明日は木曜日。時間はまだ残されている。
じっくりと長門忌月の言う“自分を知る „とはどういうことなのかを
考える時間はありそうだな。まぁ、何を自分が知らないかは
見当が一応ついてはいるが...。
考え事をしていると時間が経つのが早い。
自分の家は気づけばもう目の前だった。俺はいつもと違い静かに
ドアを開けることにして、ドアノブに手をかける。
「......」
皐月...は玄関に迎えに来ない。
だがリビングからアニメの音楽が聞こえてくる。
そう言えば昨日だかにDVD借りてきてやってたっけ。
「ただいま、皐月...」
俺はリビングのドアを開ける。推測通りテレビはつけっぱなしで
アニメが流れていた。今流行りのヒーローものかな?
それを見ているはずの皐月はソファーでだらしなく爆睡。
「まぁ、こんなこともあるか。風邪引くぞ...皐月」
そう言いながら俺は近場にあった薄手の毛布を皐月に掛けた。
「さて、今のうちにメシでも作ってやるか...」
料理に取り掛かった。皐月が寝ているため、びっくりさせてやろうと
ちょっといつもより頑張ってみた。
「ン...良い、におい。ハッ!?」
どうやらお目覚めのようだ。
「おはよう、皐月。ほらもうメシ出来てるぞ?」
「オォォォォッ!バカアニキにしては気がきく!やったぁ!」
今日は気分が良かったので皐月の好きなハンバーグを中心とした
豪華フルコースになっています。まぁ、喜ぶと思ったけど。
「じゃあ、食べようか?」
「「いただきます!!」」
皐月はこのあと、まただらしなくご飯をがっついたのだった。
そして木曜日。珍しくいつもより寝てしまった。
皐月はどうやらもう行ってしまっている様で、俺もとりあえず着替えて
軽い軽食を取ってからそそくさと家を出た。
季節は完全に夏から秋へと変わった。
風が冷たく、乾燥していると実感できる。そんな通学路には
人っ子1人居ない...と思ったが。
「睦月くん、隣いいかなぁ?」
水篶だ。って水篶!?
「水篶、なんでお前こんな遅めの時間に?もっといつもは早いだろ?」
「いやぁ、ちょっと用事があってさ...別に大したものじゃあないよ?」
「大したものじゃないってどういうこと?」
「単純にお父様が帰られただけだよ?睦月くん、心配しすぎ。フフッ」
「そこ笑うとこかよ...そうか。お父さんが帰ってきたのか。
父さんか...もう何年も会ってないな...」
俺の父さん、神代海月は外国を転々としている。理由は不明だが
毎回そこそこの仕送りをしてくれているからまぁ、良いだろう。
「そういえば睦月くんのお父さんってどんな人なの?」
「いや、別に大した人じゃない。基本弱々しいけど頼りにはなるかな」
「へぇ~。そうなんだね。いつか会ってみたいなぁ」
「会っても別に得しないぞ?」
「水篶のお父さん、凄く厳しそうだもんな」
「うん、そうなんだよっ!お母様は優しいけどお父様は頑固な人でさっ!」
なんとなく水篶がこんな時間に登校している理由が分かった気がする。
そして俺達2人は学校に遅いながらも遅刻せずに到着し、
朝のホームルームを同じ教室で、いつものメンツで受けた。