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脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第11章月の名を冠する者篇
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月の名を冠する者篇part10 “大崩壊地区での姉妹との決着„

倉庫には予想通り薪は備蓄されていたのでそれを手に取り、

俺は元のいた場所、スタッフルーム跡地へと戻った。


そして手にして来た薪をスタッフルームの壁が元々あった辺りに並べ

火をつけた。すると薪は燃え、少し勢いの良い炎が上がる。

中にちぎった段ボールを入れてある為、直ぐに火が安定してきた。


「ふぅ...良かったな。薪が腐ってなくて」

「そうですね、先輩」


今は星が見える程の夜中だ。

さっきまでは少し肌寒く、とても暗かったが焚き火のお陰で

暖かく、明るい。火は良いものだ。


「さて暖と明るさは確保出来たが...まだ目覚めそうに無いな...」

俺はそう言うとソファーに横たわらせたムーン=スノー姉妹のおでこに

両手で1人ずつ手を当てた。


「うわ...2人して熱いな。でもしてやれる事はもう無いしな...」

「そうですね...2人が目覚めるのを大人しく待ちましょうか」

「そうだな、斬月」


そして焚き火を囲む俺と斬月にしばらくの沈黙が続く。

何か話題を出した方が良いだろうかと考え始めた時、丁度斬月が口を開く。


「先輩、神代先輩。ちょっと良いですか?」

斬月が真剣な眼差しを俺に向ける。


「なんだ、そんな顔して?」

「前から、出会ったあの時から聞きたいことがあったんです」

「そうか。答えられることならなんでも答えるよ」


俺は斬月に隠すことは何も無いからな。


「単刀直入に。先輩の才能という能力は何なのですか?先輩は先程も

自分の斬撃の具現化に加え、無人島の時の跳躍といい......

ちょっと気になるのです。見た感じ...複製とは言えない気がしますし」


「なんだ、そんな話か。正直に答えるが答えは俺にも分からない。

理由も何も無いが。確かに俺は月の名の持ち主達の力を使える。

だが斬月の言う通り、複製とは言い切れない。何故ならそれはその元々の

力の持ち主と違うからだ。威力も見た目も。俺専用になっていると

言っても過言じゃないだろうな。しかもあの長門嘉月が言うには

長門嘉月本人の力が俺には効かなかった様だし。俺も気になっている...

ていうのが今答えられる答えかな。月の石も俺には自在に形を変えられる

ってのも謎なんだよな......解せないことばかりだよ」


「そうですか...分かりました。頼りになる先輩というのは聞いたところで

変わりませんけどね、先輩?」


「そ、そうか。ご期待にそえるように頑張るさ。他に何かあれば

今のうちだぞ、斬月...?」


「そうですね...」

斬月が考える仕草をした時だった。


「「ン、ンンッ、ン?................んなッッッ!?!?」」

姉妹が揃って目を覚ました。


「ターゲット...これは一体どういう状況なのですか?」

スヴァストラスがそう言うとインファストラスが続けて言う。


「敵だとはいえ説明責任がありますよね...?」

それに俺は言葉を返す。


「戦っている最中にお前らが倒れたんだよ。だから助けた。」


「何故助けた?我々は敵同士。馴れ合いはしないといった筈だ。

止めを刺せば良かったものを...ッ!」


「あぁ、確かに俺はお前らを倒す時間はあった。だが俺はそんな終わり方が

嫌なんだよ。いきなりぶっ倒れた奴等に止めをさせるほどの人間には

出来ていないんだ。気にさわるのなら許してくれ」


「フンッ、許せるものか。私達の代わりなんて幾らでも機構が造れる。

ここで終わらせれば良かったものをッッッ!!」


姉妹はそう言うと武器を構える...が。


「武器が無い!?」


そう、武器は無いんだ。


「悪いですが武器は預からせて貰ってます。危険ですからね?」

斬月が自信満々にそう言った。


「クッ...とんだ辱しめを...ッ」


「斬月、返してやれ。お互いに傷を負ってるんじゃなかったんだっけか?」

確かに俺と姉妹はもう今は戦えないほどボロボロである。


「分かりました...どうぞ」

斬月が武器を姉妹に返却。


「ターゲット...いや、神代睦月。礼は言わないし貸しだとも思わないからな。

お前は何時だって私達のターゲット...」


「私達を助けた事をこの先後悔させてやる...ですねお姉さま?」


「あぁ、ではな...また近々どこかで」


「あぁじゃあな。スヴァストラス、インファストラスムーン=スノーッッッ!!」


そう言い姉妹は風の如く俺達の前から立ち去った。


「じゃあ、火も消して俺達も帰ろうか斬月?」

「はい、先輩ッ!」


俺が望んでいた終わりかたになって良かった。

正直、俺はあいつらと戦いたくないと思っているのは今も変わらない。

いずれまた、会うことになる。その時俺はどうするんだろうか。

それは未来の自分しか分からない。だが俺は少なくとも戦いたくない。


その意思は変わらないのだ。


そして俺と斬月は大崩壊地区を後にした。

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