月の名を冠する者篇part8“襲いかかるモノ„
氷の獅子は始めは車ほどの大きさだったが今や
建物の3階程の大きさへと変わっている。
空気中の水蒸気を吸収して巨大化しているのだろう。
「斬月ッ、足を頼む!」
斬月に足を斬るよう指示を出す。すると斬月は指示通り、
いや指示以上の事をした。
「グゥォォォォォッ!!」
氷の獅子が吠える。なぜなら斬月が1つの足を、という意味で
俺が指示したところを4つ足全てを切り崩しなぎ倒したからだ。
「良し、よくやったッ!!」
俺は倒れた氷の獅子に止めを...だがそう上手くはいかない。
この氷の獅子を呼び出しているのは氷の鎧を身にまとう姉妹のうち
インファストラスの方でそのインファストラス本人は地面に手を当てて
その当てているところにはまるで魔法陣のようなものを展開している。
その為手の空いていたスヴャストラスが俺を妨害する。
「させないぞッッッ!ターゲットォォォ!」
スヴャストラスが長いリーチのナイフを俺に投げ込む。
「躱し...きれないッ!」
俺の左腕にナイフが深くかする。左腕にはとてつもない衝撃が、
痛みが走る。だが腕を支えてなどいられない。
「なんのッ!」
俺は腕をかすり、通り過ぎたナイフに向かって瞬時に手を伸ばし
投げられたナイフを手に取り投げ返す。
「ッッッッッ!!」
そのナイフはギリギリ躱された。そして俺とスヴャストラスは
地面に着地する。
「やはり単なるナイフでは通じない...か」
スヴャストラスはそう言うと身にまとっていた鎧が変形し始める。
その形はあちこちに鋭いトゲが出ていて近寄れず、
しかも氷の獅子と同じで巨大化し、まるで騎士のよう。
スヴャストラスの姿が見えない。おそらく取り込んだのか、本人を。
「斬月、氷の獅子の面倒は頼んだぞッ!」
俺のその呼びかけに斬月は無言で応じ、目がいつもの斬月では
なくなる。
「さぁて、このデカ物に変わった相手とどう戦うものか...」
こちらにはあらゆる武器に変えられる月の石があるとはいえ
巨大なもの相手にはあまり効果はないだろう。
策を練らねば勝つことは不可能だ。そして逃げ出すことでさえ
難しいだろう。なにせ戦っている場所はクレーター。
周りには傾斜があって、しかも結界の様なバリア状のものまで
姉妹は展開している。やれるならばこの場から脱出したいものだ。
「「グゥッッッ!!ウアァァァァァァァァァァァゥゥゥッ!!!」」
俺がこの場を打破する策を考えている時、それは起こった。