月の名を冠する者篇part7“ムーン=スノー姉妹の秘策„
その形成された美しく大きい氷塊は一度砕け散ると
粉のようになり、ムーン=スノー姉妹のもとに舞い降りた。
氷の粉を浴びた姉妹はいつの間にか冷たく輝く氷の鎧を身に付け
武器も完全に氷と化していた。恐らく先ほどの氷塊が
鎧の姿に、武器に変わったと推測はできる。
「「これが私たちの刃。とくと味わうがいい」」
姉妹はそう言い残すとまず2人して両手を地面にかざした。
すると、クレーターを取り囲む様に謎のバリアのようなものが
張られクレーター内部は尋常ではない風が吹き荒れ、
先程まであった水たまりは完全に凍り、吐き出す息も白くなっていた。
「これは...」
これは恐らくムーン=スノー姉妹“2人„の能力。つまり1人ずつではない。
となると片方でも無力化出来ればこの魔法のような力も無効化できる。
「ほぅ...なんとなく分かったという表情をしているなターゲット。
だがその予測通りに事を運ぶことは難しいぞ?もうここは私たち
専用のフィールドだ。負けるはずがない」
スヴャストラスはそう言うと氷で出来た槍をこちらに投げ込む。
投げ込んだ槍は途中で細かく割れたかと思うと、
空気中で氷が形成され何千もの氷の刃と槍は変わった。
「こんなの防ぎきれる筈がないッッッ!」
俺は月の石を盾に変換。その盾を目の前に構え、
後ろに斬月も来るようにして防いだ。
だが全ては防ぎきれず、かすり傷が増える。
「ほぅ、ならばあれを。お姉さま?」
インファストラスの合図で今度は空気中からいきなり
氷が形成され始め、氷の刃があちこちから俺たちの元へ
飛び込んでくる。あんなものをまともに喰らったらひとたまりもない。
この作られている氷は恐らく...空気中の水蒸気を氷結させ形成している。
だとすればそれに対抗できる策は...。
「斬月ッッッ!!とにかく、とにかくだ!
刀をおもいっきし振り回し続けるぞ!とにかく速さを意識しろッ!」
俺は斬月と背中を合わせるような姿勢になり、盾だったものを剣に変え
振り回し続けた。すると吹き荒れていた風を俺と斬月で跳ね返し、
次第に氷を切り刻んでいるのではなく、こちらにたどり着くまでに
氷の刃を溶かすまでに至っていた。
どういう理屈かは簡単だ。俺と斬月が人間離れした速さで
振り回すことによりまずは自分たちの体温から上げる。そして剣や刀を
通じてその熱を放射し、周りの温度さえも上げる。すると俺たちに
飛び込んできていた氷の刃はいとも簡単に溶けるというものだ。
「なるほど。この手も通じないか...」
スヴャストラスはそう言いつつも余裕の笑みを浮かべる。
「さぁ、どうした?これで終わりか?」
俺は姉妹2人を“消耗„させるために挑発した。
「まだまだ宴はこれからだ、ターゲット」
その挑発に姉妹は乗っかり、今度は地面から氷の獅子が出現した。
「嘘ですよね...神代先輩...現実ですかこれ」
斬月が苦笑いを浮かべる。あぁ、俺もそう思う。
「でもやるしかない。やるぞ斬月ッ!」
俺と斬月は剣と刀を構え、氷の獅子へと飛び込んだ。