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脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第2章弓張月学園篇
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“恐怖の始まり Beginning of fear„

2016/1/21(木)改稿。

 水篶みすずと別れた後、家に着いてみれば皐月さつきが作った夜飯が綺麗にラップされテーブル丁寧に置かれていた。


 「このパターンは……」


 このパターンは恐らく、帰ってきてすぐにご飯を作ってそのまま寝てしまったパターンなのだろうと確認しに部屋を伺いに行くとベットの上になだれ込むような姿勢で寝ている妹の姿があった。そのどこかに無気力さを感じたのか、俺は微笑んだ。


 その後俺も皐月さつき同様に夜飯を食べてやることをやってから

なだれ込むようにベットに入った。


 異様に鋭く強い朝日の光がカーテンの隙間から俺の眼もとへと差し込んでくる。そのタイミングと同時にこちらへと近づいてくる大きな足音が。その足音が少し止んだかと思うと次に大きな爆音、もとい破壊音へと変わった。


 「またか……お前さぁ……」


 破壊音とともに俺の前に飛び込んできたのは

部屋のドアが床に倒れている光景だった。


 「起きないアニキが全て悪い」

 「だからって妹よ。このドア何枚目だよ、全くよ……」


 これでドアが壊れる、もとい蹴破られるのは通算六回目である。

鍵が掛かっている筈のドアを蹴破る妹、恐るべし。俺は黙って床に倒れたドアを壁に立てかけ、時間も時間だったので皐月さつきが用意していた朝食を食べた後、すぐに家を出た。


 家を出て、時計を見た俺はある事に気づく。


 「お、おいおい……マジですか。そういえば今日、

うちのクラスは朝の六時半から授業があったっけか。今の時間……」


 只今の時間、朝七時十五分。これで俺はまた、四十五分の遅刻が確定した。

なぜそんな早くから授業があるかは単純で学校をサボる奴らが異常に増えたため簡単な学級閉鎖。その為単位が欲しい奴らが早く登校しなければいけなくなったわけだ。


 何だか今日はこれだけでなく、どこか嫌な予感がする。


 俺はとにかく走り続け、学校に息を荒げながらまずは校門へとたどり着いていた。だがその校門から見た校舎はいつもと様子が違っていて、何やら工事をしているらしい。校舎の周りには灰色の防音の布の付いた足場が一階から屋上にかけて組まれており、窓などは見えなくなっている。なんか、工事を行うという予告の紙でも配布されてたっけなどと思いながら昇降口に入っては直ぐに階段を駆け上がり、クラスの席に何事も無かったように座った。


 その様子を見ていた先生が神代こうじろは遅刻と呟き、

だんまりと出席簿に記しを付ける。


 「ん、あれ。今日は瀬々良木せせらぎ来てないんだな」


 先生が出席簿を眺めつつそう言った。瀬々良木せせらぎの座席を見やるとそこには本人の姿は確かに無かった。だが今日はいつもは少し休みがちの、瀬々良木せせらぎと同じくらいの身長で同じモデル体型である舞鶴まいづるさんが座席に着いていた。彼女とは特に関わりは無いのだが、どこか新鮮に感じられた。


 早朝から夕方にかけての授業を終え、帰りのホームルームが始まるのかと思えばどうやら今日は先生たちが全員出張らしく、自由解散だった様だ。俺も早いうちに帰ろうと廊下に出るとそこで水篶みすずにバッタリ会う。一瞬、距離が離れたかと思うと彼女は俺の裾を掴んで焦りのある表情でこう言った。


 「ねぇ、睦月むつきくん。今日何だか奇妙な日だと思わない……?」


 「いきなりどうしたんだ?」

 「なんか今日ね、先生たちが全員出張だというのに

普段鍵が掛かっている筈の教室とか全部……鍵が開いてて」

 「鍵が……開いてる……?」

 「そうなの。だけど何故か旧校舎の学習室だけは厳重に鍵が掛けられてるって友達が……。不気味だと思わない?」


 それが本当だとしたら不気味だと思った矢先、

クラスメイトの男子が教室に飛び込み、大声で叫んだ。


 「おい……ッ! 皆ァ……!

嘘だと思わないで聞いてくれェ……ッ!」


 俺を含め皆の視線が彼に向けられる。


 「おかしいんだ……ッ! 学校から出られないッ! 

完全に閉じ込められてるんだッ!」


 彼の訴えに周りの奴らはあり得ないだろうと口を揃える。


 「だから、出口という出口は全て全部塞がれてるんだって

言ってんだ……ッ」


 いきなり何を言ってんだと思い、下の階へと様子を伺いに行くと確かに見たものは全て彼の言う通りの光景だった。他のクラスメイトもその光景を見て絶句していた。


 「出口はまだしも……窓まで」

 

 昇降口や一階から三階までの窓全てには鉄板だろうか、

板が外から打ち付けられている。やっと現実を認識したクラスメイト達は焦りと恐怖で皆揃って体が震えていた。


 「ねぇ……ッ! 皆落ち着いて! 

きっと他の校舎とか……出られる方法はあるよ!」


 水篶みすずの様子を見てか、気を遣う。だがその体も少し震えているのが分かる。水篶みすずだってきっと怖いのだろう。何故なら他の校舎も全ての出口や窓が塞がれているのだから。だが水篶みすずは話を続ける。


 「そ、そうだ警察!」


 彼女はそう言い、携帯を取り出したが電話をしなかった。

そう、電波まで圏外になっていたのだ。この時点でこの学校は

不気味すぎる空間へと変貌している。


 「でもまだ気になる場所はある。………学習室」


 水篶みすずが最後に吐き捨てるかのように言う。そうなのだ、今日は何故だか旧校舎の学習室だけ厳重に鍵が掛かっている状態が造り上げられているのだ。これは何かあるに違いないと思っていたところだ。


 水篶みすずの言葉を受け止めた俺はこの後クラスメイト達に

その学習室へと行ってみようと提案をする。


 それが全ての恐怖の始まりだとも知らずに。

またまた長くなりました。風雷寺悠真です。


捕捉ですが、旧校舎は職員室や学習室、事務室があります。

特別棟は、体育館や食堂です。間違えないようにしてください。

学習室は旧校舎です。

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