月の名を冠する者篇part1 “指名の手紙 „
長門が居なくなってから一週間は経った。
今、脱出不可能を生み出した会社「α」は新社長を迎え入れるか
それともどこかの会社に合併するかニュースを見る限りだと
社内で議論しているようだがなんせこの会社には社長の上を行く、
グループ会長がいる。だが俺は奴の事を全く知らないのだ。
グループ会長に気になり始めたある日、学校の後
水篶が家に来るように誘われた。なぜだかは知らないが
重要な話らしく、学校から一度家に帰るのにも錦織家の使用人を
寄越すくらいだ。相当重要なのだろう。
俺は一度家に帰り、身支度を整えたところで水篶の家、錦織家に
久しぶりに出向いた。
「相変わらずに広いな...」
前に来た時も同じようなことを思っていたなと過去を振り返る。
だがあの時は長門の奴は居たんだよなと、実感する。
だが奴はもういないが、この大事な話を聞けば何か分かるかも知れない。
俺はそのままの足で水篶の元へ向かった。
玄関の前に行くと俺にずっとくっついて来ていた使用人が
無言でドアを開けて俺をエスコート。そして前にも来たことがある
客間に通された。そしてしばらくすると水篶も相変わらず和装で
現れた。水篶の家で水篶本人が洋服を着ているのを見たことがない。
「いらっしゃい、睦月くん。これでわたしの家も2回目...なんだよね」
「あぁ、そうなるな。毎回思うが無駄に広いよな?」
「フフフッ、それがいいんじゃないのかな。わたしは嫌いじゃないよ」
「そうか。じゃあそれは置いておいて俺に何があるんだ?」
俺は迷わず本題に入るべく話を切り出す。
「う、うん...せっかく来てもらってこんな話するのもあれだけど。
長門さんが居た会社のグループ会長さんが名家という私の家の
つてを使って君に、睦月くんに直々の指名が来たんだよ...?」
「そうか、それでその指名とは?」
「それがわたしにも分からないの。渡されたものに書かれていたのは
日時と場所だけ。そして本人だという証明のみ」
「そうか。そろそろそんなものが来るとは思っていたけども」
「わたし、行って欲しくないかも...」
「なんでだ?」
「ほら、睦月くん前からそうだけど...いつも何かを1人で
背負い込むでしょ...?」
「そうだけど...でも行かないと俺の気が済まないし何より、
なぜ長門が居なくなったのかも分からない。だが今回は1人で
行くつもりはないぞ?」
「それはどういうこと...?」
「今回は斬月を連れて行こうと思う。斬月は頼りになる」
「でも中学生だよ?そんなのダメだよ!」
「いや、アイツはもう俺と同じ自覚を持ってる。
水篶が嫌と言っても俺はアイツを連れて行く」
連れて行くのには訳があるからだ。その理由もグループ会長に
会ったらきっと分かると俺は予測している。
「分かった。でも気をつけてよ?睦月くんが言うことは前から
なにも間違えていなかったし...」
「ありがとう。じゃあ気をつけるよ。話は終わりだな?」
「うん。これだけだよ。でも重要な話だったでしょ?」
「あぁ、俺が解せない事が解決しそうだしな」
このあと水篶から日時、場所が書かれた手紙を貰い
俺は家へと帰宅した。
そしてその手紙には
「日時 週末の土曜。
場所 大崩壊地区にある大クレーター」
大崩壊地区のクレーター...それは崩壊の規模を物語っている。