脱出不可能の異変篇part16 “長門嘉月の異変„
部屋を出るとそこには長門嘉月が俗に言う社長椅子に座っていた。
それも俺のことを待ち構えていたように。
「やあ睦月君。君がここまでクリアすることが出来ないという計算
だったのだが...。来たのか」
長門はそう言うと社長室とは思えない広さのこの部屋を眺めた。
俺はそんなことは知らないというように、「あぁ、来たぜ」と一言言った。
長門はそんな俺を見て少し微笑んでから顔が、いやオーラが厳しくなった
気がする。
「なぁ、睦月君。ここまで来たということはもう、分かっているはずだが?」
この一言で俺は確信した。長門は力ずくで俺を倒し脱出不可能の
不可能さを取り戻すことを。そうは上手くいかないがな。
俺はただで倒されるわけには行かない。
俺と長門の間にピリピリとした空気が生まれる。
「じゃあ、ここではなんなんだし、場所を変えよう」
長門にそう言われ案内されたのは恐らく会社の地下。
この会社の地下は放水路になっているようでコンクリートの
柱が何本もたっている。先ほどの部屋で見えた外の景色は曇っていた。
一雨降ってここに水が放水されてもおかしくない。
俺は場所を冷静に解析していたが長門は鋭い目つきで俺を睨みつけていた。
そして長門が閉じた口を開け、呟く。
「...いくぞ?」と。
長門がそう呟くと長門本人の姿が消える。戦うしかない、
逃げ場はない。ある意味の最後の脱出不可能だろう。そしてお互いに
月の名の持ち主だ。戦うことは宿命なのかもしれない。
また地下にいるのにも関わらず雷の音が聞こえた。これは白い雷だろうか。
俺も長門より遅れて臨戦態勢に入るが後ろから現れた長門の蹴りが
俺に入る。その威力は俺をコンクリートの柱へと吹き飛ばすほどだ。
「......痛ッッッ」
長門が柱に吹き飛ばされた俺のところまでゆっくりとゆっくりと
近づいてくる。
「君はこの程度か?」
長門がまた蹴りを入れてくる、が間一髪でそれを回避する。
だがそれはフェイントだったようで長門の繰り出した回し蹴りを
鳩尾にくらった。そして長門はもう一度言った。
「君はこの程度なのか?」
この一言はまるで俺の何かを知っているかのような言い方だった。