脱出不可能の異変篇part10 “水が迫り来る部屋からの脱出Ⅲ„
上のハッチ式のドアを開けると待っていたもの、
それは大量の水だ。なぜこんな事が、それは簡単だ。
見事に罠に嵌ったということだろう。
今思えば脱出不可能というものに脱出ゲームの常識は通じない。
これは現実だ。殺しに来ていると言っても過言ではない。
そもそも脱出ゲームというのは密室だ。リアルでやったら
厳しいものでもある。流儀にのっとった俺が馬鹿だった。
これはただの脱出ゲームではない。脱出不可能なのだから。
これがパソコン版だったら今頃BADENDという表示が出ている
頃だろうか。上から降ってきた大量の水はすぐに円柱状の
この部屋を満タンにしてしまう。俺は咄嗟に近くにあった
酸素ボンベを取り、呼吸器具をつけて命を紡ぐ。
まさに極限状態だ。酸素ボンベは3つ。だが大きさからして
長く持つことは無いだろう。早急に脱出手段を探さなくては
いけない。とりあえず空いたドアの先を見てみるが
ただただ水があっただけのようで何も気になるものはない。
もうどうしようもない。何もないのだから。
パソコン版脱出不可能でもこのようなものは無かった。
何もないというのは。
考えられるものは鍵が1つで選択を誤ったというものと
何かのギミック、もしくは何かを見逃している、
何かの意味を理解していないこれのいずれかだろう。
俺の予想だと1番最後の意味を理解していないだと思われる。
俺は極限状態で自分の持てる限りの力で頭をフル回転させた。
この部屋にあるものは綺麗に置かれ注意書きも一緒にある
酸素ボンベ、そして大きな棚に沢山の小物。そこにあった
鍵は上のハッチ式のドアに使ってしまった。今思えば
水というシチュエーションと上にドアというこの2つが
揃ってしまえば人間誰でも上に行こうとするんじゃあないだろうか。
これは前の脱出ゲーム、ビルからの脱出で学んだはずだが...。
とんだミスをしてしまった。一筋縄ではいかないものだな。
どうしたらいい、酸素ボンベもそろそろ1本目が尽きそうだ。
ん、酸素ボンベ?もう一度注意書きを確認する。
そこにはやはり先ほどと同じことが書かれていたが
とある図がある。ボンベの様なものににばってんがついた
ごく普通の注意書きのマークだ。
だが普通ではなく異常に考えてみると、
注意書きを無視して考えてみると酸素ボンベは使うなという
事にも思える。となると注意書きの意味は?
しょうがない。どうせ酸素ボンベが尽きたら死ぬんだ。
俺は最後の賭けに出る。
それは酸素ボンベの注意書きの真逆の行為をすることだ。
要約すると注意書きをそれた事をすることで酸素ボンベを
勢いよく破裂、爆発させてどうにか脱出できないか
賭けてみるということだ。怪我は...どうにかなる。
やるしかない。まずは酸素ボンベを高温にすることから
始めよう。床暖房の温度を最大にして酸素ボンベを固定具から外し
床に寝転がせる。そしてしばらく待つと十分に熱くなってきた。
次に水中ということもあり凄くやりづらいが強い衝撃を
与えるために壁や床に叩きつけてみる。
最後に蓋を勢いよく棚にあったスパナで開ける。
すると酸素ボンベの中にあった酸素が勢いよく、
凄まじい勢いで、水中へと出された。
だが何もない。もう俺はこの1本で絶望しかけたが
酸素ボンベはまだ2本ある。
もう1本と同じことをやったが何も起きない。
そして最後の1本となる。もう無理だと思った俺は
その酸素ボンベから吸えるだけ酸素を吸い、
同じことを最後の1本にやった。
すると最後の1本で俺のなんとか捻り出した予想は的中する。
なんと酸素ボンベの中から鍵が出てきたのだ。
鍵は酸素ボンベの口に引っかかりギリギリで出てきた。
おそらくこれは普通に逆さまにして出そうとしても
出なかっただろうか。もしくは酸素ボンベの底にくっついて
いたんじゃないか。それしか考えられない。
そして普通に考えたのでは出ない結論だ。
命を紡ぐものを犠牲にするのだからな。
俺は出てきた鍵を手に取り今度は上ではなく下の
ハッチ式のドアを開けた。すると水はみるみると下へ下へと
流れていき、排水口へと吸い込まれていった。
そして下へと続く梯子が現れた。おそらく脱出口だろうか。
俺は迷わず梯子で下まで降りるとそこに続いていた地下トンネルを
長々と歩き、地上へ続くだろう梯子を見つけ脱出を成功させた。
本当に危なかった。死ぬところだった。
梯子を登りきるとそこは何かの部屋であり、
また脱出ゲームが...と思ったが鍵のついていないドアもあり、
また1つの手紙が置かれていた。
そこに書かれていた言葉は1つ。
「私の脱出不可能は次で最終局面を迎える」
おそらく長門だろう。次で決着をつけるということだろう。
その言葉の深い意味はまだ分からないが俺は疲れもあり
すぐにこの部屋を出た。服は地下トンネルを長々と
歩いていたこともありすでに乾いていたので問題はない。
そして部屋から出るとそこには廊下が続いていた。
俺は自然とその廊下を進んでいた。