“弓張月学園高等学校 yumiharizuki gakuen high school„
二章以降:近日大幅改稿予定。
2016/01/17(日)改稿。
水篶とファーズランドで別れた俺は最寄りの駅である弓張月駅で降車する。この弓張月駅のある所佐波市は埼玉県南部に位置し、水篶の住む東京都西部の東斑山市に隣接している。
改札を抜けると比較的田舎の方にもある市にも関わらず、煌びやかに輝く看板たちが立ち並ぶ繁華街や高層ビル、大きなデパートなど中々の都会要素も持ち合わせている。だが俺の家はそこから少し十分程度歩く。その頃には都会要素などはほとんど無くなり周りは閑静な商店街が見えてくる。そして商店街の脇道を行ったところにある小綺麗な一軒家、これが我が家だ。
俺は我が家を改めて眺めたと思うと、
いつもと変わらない調子でドアを開けた。
「ウイーッス! 帰ったぞ皐月」
俺がそういうと階段を下る大きな音が段々とこちらに近づいてくる。
そうして皐月が玄関まで来るといつもこう言うのだ。
「オーッス、やっと帰ってきたかバカアニキ」
小学校四年生で反抗期だと一般的には思われてしまうであろう言動ではあるが迎えに来てくれるだけマシだろうと自分に言い聞かせ、靴を脱ぐ。
その後毎日変わらない日常が続く。二人でテーブルを囲みご飯を食べ、俺が先に風呂に入り、そして布団に入って就寝。こんな生活が続くのはうちのお家事情が関わっている。
うちのお家事情は単純明快で両親が共働きであり、両親ともども海外出張中。つまりは放任で何年も家には居ないのだ。その為、いつも通りが続くわけなのだけれどもここで俺はある事に気が付く。学校で出た課題のやり忘れだ。そして俺はこの後寝ることが無かった。
朝の通学路。食パンならぬ補助栄養食品のパサパサのビスケットをかじり、歩いている自分が居た。この光景を見れば分かるだろう、寝坊だ。どうやら皐月が起こしてくれず、先に一人で行ってしまったようだ。
「ふわぁ……あぁ」
大あくびをしつつ見えてきた校舎を見やる。俺の通う、所佐波市にある弓張月学園高等学校は全生徒数九百六十七人、約千人の大型の高校であり、校舎は一年校舎・二年校舎・三年校舎・部活棟・特別棟。そして旧校舎に分かれている。こんなにも大きい学校だからか朝から人が多すぎる。そんな人混みを掻き分けて、ある人物が俺に声を掛けてきた。
「睦月くーん!」と。
ぶっちゃけ、軽く迷惑だなとふと思ったことはつゆ知らず、水篶はそのまま俺に話しかけてくる、「一緒に行こう」と。それを受けた俺は大人しく水篶を黙って一年校舎までご案内した。
この高校に友達と言える奴はそういない。皆、顔見知り状態なのである。まぁ実際、担任に「お前は少し大人しすぎる。高校生らしくない」と告げられた程だ。でもまぁそれが俺の日常、現実なのだ。そう思いつつ、自分の座席へと着いた。