帰って来た日常篇part8 “試着会„
店の中に入り、まずは水篶が試着室のカーテンを開けた。
「どぉ、かなぁ............うう、恥ずかしい...」
そう言い、水篶はクルクルと1回転。
水篶は青い、フリルのついたワンピース型の水着を選んでいた。
水篶には勝手なイメージだが青のイメージがあったので
とても似合っているし、何より色でクールさを醸し出している。
「イイネー!水篶っちゃん。サイッコー!」
文月が言う。
「あ、ありがと。そ、それより睦月くんは ?どう、かなぁ」
「お、俺か ?」
「そうだけど...似合ってないかなぁ...」
「そ、そうだなぁ。とても似合ってて可愛いけど ?」
「う、嬉しい !.........睦月くんに可愛いって言われたよぉ....」
そう言い残すと水篶は再び試着室の中に入った。
「なぁ、睦月 ?お、俺水篶っちゃんにさ
それよりとか言われたんだが俺なんかしたか ?」
「さあな」
次に出てきたのは秋葉だ。
「さてさて...どう睦月くん ?」
「俺は無視かよ」
「文月は参考にならないから黙ってて」
「なんだよ睦月ばっかり」
「で、どうかなぁ睦月くん ?」
秋葉が選んでいた水着は赤茶けた髪に合う、赤色のビキニ。
それも全てが赤いわけではなく、紅葉の様な暖かみを持つ
色のデザインでこれもまた、似合っている。
「あぁ、そうだな...。秋葉にピッタリなやつで良いと思うけど ?」
「本当に ?」
「あぁ」
「本当の本当に ?」
「そうだよ」
俺がそう言うと秋葉はすぐに試着室の中に猛スピードで入って行った。
そして小声で「.............やった」と喜ぶ声が聞こえた。
さて終わり...かと思いきや、よくよく見てみたら
試着室の中からこちらを覗いている人物が1人。
それについて文月はもう気付いていたようで先に文月が
話しかける。
「令月っちゃん。そこでなにを見ているのかなぁ ?」
「ふぇっ !?!?!?!?」
山吹さんはこちらが気づいていないと思っていたのか、
山吹さんらしくない声を上げた。
「いやぁ、令月っちゃん驚いちゃって。恥ずかしいのかなぁ ?」
「............そんな事は無いけどそんなこと言われると
余計ここから出づらくなるから止めてくれない ?」
山吹さんはいつも通りな冷静さで答えるが顔が赤い。
「ほらまた照れちゃって。だいじょーぶだから」
「...............................いじわる」
山吹さんはそう言うと中から出てきた。
山吹さんのチョイスはセパレートタイプの様だ。
だがこれを見ての感想は文月に聞きたい様だな。
「どうなの ?」
「いやあ、いつも冷静で本ばかり読んでいる令月っちゃんが
水着着ているだけでスゴいよ ?」
文月。それはおそらく違う。
「スゴいってどういうこと ?」
山吹さんが文月をつねる。
「イテテテテテッ。分かった !分かったから」
文月がそう言うと山吹さんは手をはなした。
「可愛いよ、似合ってる」
文月はにこやかに言った。
それに対し山吹さんは首を横に向け、
「......................べ、別に嬉しくないし」
と呟いた。
そして試着会は終わり、女子の皆さんはレジへ
俺達男子はベンチへと戻った。