思惑(父)
本当に参った。
あの「寺詣で」で思いもしない公達に出会った。
まさか、あそこで出会うとは。
確か、名は「暁 康紀」と言ったな。
咲子はあの男をはっきと見ていない様子だった。咲子は人見知りが激しい。
私以外の男とは話したことはない。
あの、公達は咲子を見た!咲子を見てあの男はどう思っただろう。
それに、あの場合では咲子のことを黙っているわけにはいかなかった。
なんたる不覚! 今まで咲子のことを隠していたのに・・・何もならない。
咲子が幼い頃に母のことを聞いてきた「お父様、お母様は何所においでですか?そして、お母様はどうして姿を隠さなければいけないのですか?」
まさか、あの年齢で芙蓉のことを聞かれるとは驚いた。
まるで、総てを知っているかのようだった。
咲子は何故、芙蓉から咲子を離したのかを知らないはず。
確かに、咲子は幼い頃から普通の子供では考えもよらぬところがあった。
何をさせても覚えは良い。聞き分けも良い。それに、大人の顔色も読んでおるし・・・
芙蓉の娘だからなのか。
実は、あの寺詣でに行った寺であの方と偶然を装い咲子と会わすつもりであった。
でも出会わず。あの方は何処かにおられたはず。
確かに、あの日だと聞いておるのに、何故、出会わなかったのか。
変更か?
咲子は美しく育った。芙蓉に生き写しのように。
芙蓉は私を恨んでいるだろうな。
されど、女の幸せは身分だからな。父としても。
咲子はあの寺詣でが余程楽しかったのだろう。終始、笑顔を見せていた。
だが、もし、咲子が暁を見たのなら?いいや、考え過ぎだ。
あの咲子がまともに男の顔を見れるわけがない。私は考え過ぎている。
それにしても・・・・・暁 康紀。
気になる。早速、調べなければ・・・
「気をつけなければならない」と何故か感じる。
咲子さまのお父さんの考えは裏があるんですね。
それにしても「腹黒い」