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神様の思いやり転生  作者: 苺ジャム
第一章
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決行(咲子) 1 

わたくしはあの手紙を読んで以来「いつ康紀さまは攫いに来て下さるのでしょうか?」と心待ちにしております。

そして、気持ちは晴れやかで心は浮きだっています。

その様子を見ていたお父様はニコニコ顔で「咲子、待ちどうしいか?」とお聞きになられます。わたくしは思わず「はい」と笑顔で答えます。

お父様は安堵され「そうか。そうか。」と喜ばれているご様子。

さっと、お父様は「孝由たかよし様」と間違われておいでなのです。

でも、わたくしはこのまま、お父様に誤解をして頂いているほうが良いのです。

だって、わたくしが楽しそうにしているほうがお父様も落ち着かれていますし、これから何かと便利なのでは?と思います。

唯一、総てを知っている加茂もわたくしに合わせてもらうようにお願いしていますから。

加茂は演技なのか本心なのか分かりませんが「咲子様、よろしゅうございました。加茂は咲子様が幸せなら加茂も幸せでございます。」とお父様の前で言います。


時折、お父様がわたくしの部屋に来て「咲子、そなたは幸せか?」とお聞きになられます。

「はい」とわたくしは頬を染めて答えます。

お父様はわたくしの様子をみて「ハハハハ・・・・」と大満足したお顔で「父も幸せぞ。」と。

その会話を聞いていた加茂は終始ニコニコ。


これで、総て上手く行くでしょう。そんな勘が致します。


お父様、騙して申し訳ございません。


穏やかな日々が過ぎています。

ある日、一羽の鳥に目が行きました。今まで見たこともない鳥です。

この世界では普通の鳥だと思って気にも止めなかったのでございます。

すると何やら話しているようなさえずり方をするではありませんか。

わたくしは不思議と思い、しばらく眺めていたのでございます。

初めの頃は、さえずっていたのですが今はただ、じっとしています。言うなれば「停止」

その鳥は夜になっても庭の木々から羽ばたこうとはしないのです。

時たま、その鳥と目が合うような気も致します。

翌朝、その鳥を見に行きましたが、何処か飛んでしまったのか、もう見当たりません。

それから一度もその鳥には出会えませんでした。はたして、その鳥はいったい何だったのございましょうか。


それから二日後に加茂の従妹の娘さんが加茂を尋ねて来られました。

加茂は「変でございます。従妹にそのような娘がたのでしょうか?」と首を傾げています。

間もなく部屋に入って来られて「加茂には似ていないような・・」とわたくし。

「従妹にこのような娘がいたでしょうか?」と再確認をしている加茂。

そして、その方は「この度は咲子様、女房殿、初にお目にかかります。私は楓と申します。」

まぁ、なんて可愛らしい方なのでしょう!楓さまと仰るのね。と思いながら楓さまを見ていました。

楓さまは最初、ずっと下を向かれて小さな声で「咲子様、申し訳ございません。わたくし、康紀様の使いで参りました。」わたくしは、それを聞いて驚きのあまり言葉がでません。

「康紀さまのお使いで来られた!」と心が騒ぎます。

そうでしたか!この「従妹の娘」と言うのは、わたくしに直接、伝言があるからこんなお芝居を。

それに、よく見ると楓さまは貴族のお姫様ではありませんか!なのに、このように・・・わたくしのために・・・・

わたくしは思わず「楓さま、有り難うございます。わたくしのために・・・」と涙が溢れて。

楓さまも涙を流されておられます。加茂も涙を流しています。

そこへお父様が来られました。わたくし達の事が凄く気になっていたのでしょうか。

きっと、加茂の従妹の娘さんを見に来たのに違いありません。なんせ、わたくしは大切な体。

何かがあっては困りますものね。

涙を流しているわたくし達、三人をご覧になったお父様は「如何したのじゃ?何故、皆で泣いておる?」

わたくしは、すかさず「はい。お父様、楓さまはわたくしの慶びのお祝いに駆けつけて下さったのでございます。そして嫁ぐわたくしに、嫁がれましたらもう、お会いする事は叶いません。と仰られて。

だから・・・わたくしは悲しくなってきたものですから。このように泣いております。」と。わたくしは「何て良い理由が言えたのでしょう。」悪い事だと存じておりますが心の中で微笑みました。

「そうであったか!咲子はまた、宿下がりをするであろう。その時に会えば良いのじゃ。」と機嫌よく去られました。


さぁ、これで邪魔者はおりません。


康紀さまからの言伝を聞かせて頂きましょう。楓さまに。

咲子さまも、案外したたか者です。



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