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15夏休みになりました


そう。


夏休み、始まってしまったのだ。


終業式の帰り道、『明日から学校ないんだあ』って思った瞬間に、毎年、いいようのない開放感が広がるんだけど。


今年は受験生なので。


地味に沈みます、気分。


夏休み中にレベルアップしないと、公立の4年制は難しいってこないだ進路指導という名の引導を渡されたばっかりなので。


別に短大でもいいかな。公立の短大…は地方にたくさんある。就職に困りそうだから、それなら何か資格を取れるところがいいかなあ…


栄養士…


結構就職が厳しいみたいだし朝から晩までずっと大量の調理を毎日するってちょっと体力的に無理…だ。


保育士…


公立の保育園ならともかく、私立はお給料安くて自立するのは大変そう…

それに、ちいさな子供って親戚とかで身近にいなかったからあんまりピンとこない…


と、具体的に考えてみても難しい。

短大や専門学校って、かなり目的がクリアでないと決められないな。

私みたいなヘタレには無理だよ。看護師とかね。

学校厳しくて辞める人も多いみたいだし。夜勤大変みたいだし。


そうぼやく私の相談?をミヤは『呆れたわー』と一笑した。


「あんたね、そんなマイナス情報ばっか集めて、いったい何がしたいの?どうせネットで拾ってきた話でしょー」


「そうだけど…」


「ネットに自分の気持ちを詳しくカキコミする大人はね、現状に不満があるか暇があるか…どっちにしろ中庸な精神状態じゃないから。みてるだけならいいけどね、自分を当てはめ過ぎないようにしないと。結局、他人の意見なんだからそれが全てじゃないよ」


と、購買で買った紙パックのジュースをじゅっと勢いよく飲む。


廊下で飲むと生活指導に見つかると怒られるのだが、今日は会議で先生の姿はない。


わたしはミヤと並んでいる。

頭一つ背が高いミヤは脚が長くて細くて、流れる長い髪も艶やかな美人だ。すれ違う一年女子が、『だれ?』って小さく振り返っている。


「なんかね…進路悩んじゃって」


「夏休み、もう決めた道を突き進む時期だよ?弱気になったらやる気もなくなるよ」


「うん…ホントにそう」


「下げるのはいつでも出来るんだから、今はとにかく上げてこ!」


弱気に…なってるよね。

もともと目標が曖昧な上に、最近ほとんど勉強に身が入らないから、考えがマイナス思考になっている。


黙り込む私の肩を軽く叩くとミヤは励ますように声を大きくした。


「今日は、家に泊まりなよ」


「ミヤんちに?」


「うん。予備校の講習も、学校の補習もまだ始まらないでしょ。うちで一緒に課題やろうよ。久しぶりじゃない?和音が家にくるの」

「え…いいの?」



「いいいい。お泊りおっけーだよ、ね、そうしなよ」


ぱんぱん肩を叩かれてちょっとふらつく…相変わらず怪力なんだよねー細いのに。


「うん…じゃあそうしよっかな…」


「やったあ、お泊りね?」

「う…うん」


――いいのかなあ…


私はちらっと数真を思い浮かべてしまった。


数真に、お伺いを立てる必要はない。

だけどさ…最初の二日間は、毎日数真とあんなコトしてて、でもそれから今日の終業式までは期末やら何やらでそういったことと無縁だったのだ。

相変わらず家の中で軽くキスされたり抱きしめられたりはしたけど、挨拶がわり、って感じのライトなもの。


――べつに…

物足りないわけじゃないよ。でもなんか…急に優しくなったような気がする。

強引じゃないからそう感じるだけかもしれないけど、『後の進捗についてはあなたに任せます』

って雰囲気がするのは…


気のせい…じゃない気がする。


それにさ、佐々木くんのこと…数真がもしかしたら感づいてるかもって瞬間もあったし…


そんな微妙な時期?にお泊りですか…うーん…。


黙り込む私をどうとったかミヤは満面の笑顔だ。


「さあさあ、もー決まったんだからさ。はやいとこあんたんちに行って、用意しよっか」



「あ」


「またな」


佐々木くんがミヤと歩いてる私にニコッと笑って手を挙げてくれた。なんだかやり残した感が強いけどとりあえず、無事に夏休みに突入しました。


そしてそのままズルズルと連れて行かれました。ミヤんちに。

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