プロローグ
私の弟は数真という。
1つ違いのこの弟はなんでもそつなくこなす優等生だ。
テスト前でも勉強しないで毎日たーっぷり寝ているくせに、進学校のウチの高校でいつも成績は上の下ぐらいにつけているし、部活では昔から剣道を続けていてそこそこには強いらしい。いつも何かの大会では団体戦メンバーに選ばれていた。
それよりもなによりも、数真は爽やかな笑顔をいつも周囲へ垂れ流している。
面倒見がよくて頼まれれば体育祭の実行委員になったりめんどくさそうな役回りをほいほい引き受けている。
ヤツのバカなところだ。
しかし『倉橋姉弟』とウチの高校で言えばピンと来ない二年生はいないと…これは友達のミヤが教えてくれたしょうもない話だ。
なんのことか?
よくある話だ。
出来のいい社交的な優等生の目立つ容姿の弟に、真面目な割に成績もぱっとせず平凡なアタマと容姿の大人しい地味な姉がいる。
ミヤの社会人の姉はウチの数学教師と付き合っているんだとかで他学年事情にも変に詳しくてめんどくさい。まぁ余談だけど。
ミヤはたった一人の親友というか幼なじみだ。
数真と私が小さな頃からの付き合いで昔はよく三人で遊んだ。
数真は小さな頃から優秀でそれに比べていたって昔からやはりフツーの私。
それは能力や性格だけには限らなかった…
例えば、たまに親の知り合いとか親戚の、見知らぬ大人から可愛いとか綺麗とお世辞を言われる機会があってもね…
彼らは必ず私の側にいる眉目秀麗な数真に目を奪われるのだ。『将来楽しみな息子さんね!』
そして慌てて付け加える。
『…お嬢さんも、可愛らしいしね』
ありがとうございます。
……でもねー…
数真を見つめたままでほめられてもうれしくもなんとも。
しかしここでお礼を言わないと私が失礼なヤツになってしまうから、いつも私は彼らにきちんと笑顔を向けていた。
どっちが失礼なんだよ!?
と内心フツフツと怒りながら。
今なら呆れて済ませられるが、当時はまだ幼稚園児だったので本気で傷ついていた。
親戚も親も数真にばかり目がいく日常。
月日がたち中学生になると、今度は数真狙いの女に『将を得んとすれば』とばかりに近付かれた。
ミヤは唯一の例外で数真に興味を示さなかったからこんなに長い付き合いになったのかもしれない。幼稚園の時からだからね。
とまあ、私にとって倉橋数真はアイデンティティを脅かす存在であり天敵でありお邪魔ムシな目の上のタンコブ的存在なのである。




