たとえば毎日確実に百人に一人が消えていくとしたら
ゼロにはならないとわかっていたけど……
その昔、ある国で百日苦熱という病が流行した。
それは毎日百人に一人が感染して苦しみ発熱するものだった。
ただあくまでも病状のたとえであり噂でもあった。
かからない人のほうが多いのだ。
そして対処法もなんとなく確立してその年のうちに終息した。
実際、その国の人口はそれなりに減った。葬儀屋が忙しくなり墓石も不足した。
その年の騒動は長く忘れ去られていた。
数十年後にその文献を読んだ化学者が毒を作ろうとした。
いたずらのつもりで風邪に似た症状が出るだけの発熱しない薬。
仮病に使えるかも知れない程度のモノを作るはずだったのに、出来上がった瞬間に爆ぜたそれは純然たる呪いだった。
調子に乗って人骨を混ぜたのが良くなかった。
仮称「百日風邪の呪い」は、確実にその国の百人のうち一人に効果を及ぼした。
つまり、毎日確実に死人が出た。
百分の一といえば救いがありそうに見えるが、じつに膨大な量だった。
対処法がわからないまま一週間がすぎる頃には人々は恐怖に怯えていた。
それに加えて、風邪薬を飲むと何故か即死する。
解決策を見いだせないまま一ヶ月が経過した。
研究者の数も毎日確実に減っていくのだからたまらない。
およそ100万人いたその国の人口は、一ヶ月で75万人を割った。
そこでようやく呪いを生み出した化学者が声明を出した。
ここまでやるつもりはなかった。だから手を打った。
罪悪感から逃れられなかったのだ
彼は「呪いを解除するための方法を教える」と叫んだ。
これは病ではなく呪いである。呪いを解くには祝福が必要であると。
しかし耳を傾けるものは居なかった。
質の悪いオカルトネタで片付けられてしまった。
数日後、失意のうちに化学者もこの世を去った。
仮に、藁にも縋る思いで人々が受け入れていたら結果は違っていた。
すぐに聞き入れられない人類のプライドが邪魔したおかげで無策のまま時が流れた。
二ヶ月が経過して人口は56万人まで減少していた。
この時点で国の指導者の七割が死亡しており、引き継ぎもままならない。
そして100日目。呪いは予定通り止まった。
100万人以上いた国民は37万人未満に数字を減らしていた。
かなりヤバイことに変わりなかった。




