第9話 毛野さん
受付では診察券を預かり、問診を取ってくれる。
眼科の検査のなかには帰りに見えにくくなるものもあるため、付き添いがいるかどうかも分かる範囲で記載することになっていた。
備考欄に、夫とか子供とか書いてくれる。
これが結構曲者なのだ。
「毛野多恵さーん。おはようございます。」
陽子が呼び入れた。
毛野さんは82歳、見えにくいとの訴えだ。
診察室には一人で入って来られた。
診察すると白内障が進んでおり、手術が必要な状態だった。
備考欄に”付き添い・夫”と書いてあった。
手術の話などは、出来るだけ家族の人にも一緒に聞いてもらった方がいい。
高齢の方などは特にだ。
「毛野さん。手術が必要です。ご主人にも一緒に話を聞いて頂いた方がいいので、呼んできてもらえますか?」
初めから一緒に話した方がこちらも2度説明する手間が省けるため、ひとみは毛野さんにそうお願いした。
「?」
毛野さんは不思議そうな表情になった。
「今日、ご主人と一緒に来院されたんですよね?」
「一緒に来たのは息子です。」
「・・・。」
その後、息子さんにも話を聞いてもらい毛野さんは手術を受けることが決まり、この日は帰っていった。
「あー、恥ずかしかった・・・。」
毛が薄く、ちょっと老けて見える息子さんの顔を思い出しながらひとみはつぶやいたのだった。




