お祝い。
「おはよ。」
「う〜もう朝?」
「ふふっ。涼介くん朝弱いんだね。
昨日早く寝たのに。」
「寝ても寝ても朝は眠いもんだよ。」
「はいはい。さっ、起きよっと!」
「もうちょっと寝ようよ〜。」
「無理で〜す。」
凛花は起きあがり、身支度を始めた。
涼介は二度寝している。
いい匂いがして、涼介は目を覚ました。
涼介はベッドに座り、ぼっとしている。
「涼介くん、朝ご飯できたよ!」
「えっありがとう。無理してない?」
「だって私、毎日ちゃんと朝ご飯食べてたし、お弁当も作ってたもん。無理してないよ!」
「凛花、すごいな。」
涼介は、まだ寝ぼけている。
凛花は、涼介の手をつかみ、テーブルに連れていく。
「さっ!食べよ。いただきま〜す。」
「いただきます〜。」
涼介は、一口二口食べると、目が覚めた様子で、
「おいしい!」
「ほんと?良かった。」
凛花は涼介が食べているのをニコニコしながら見ている。
「あっ!忘れてた!」
「えっ、何?」
「昨日、友樹がお祝いしてくれるっていっててさ、今週の金曜日に誘われてんだ。」
「えっ、私も忘れてたんだけど、金曜日、優里に誘われてる!」
「お互い、いい友達がいて良かったよな。」
「うん!ほんとに。」
「あっ、じゃあ、4人で行く?」
「それいいね!」
「あっ、でも刑事ドラマの取り調べみたいになるかも・・・」
「確かに・・・特に優里は。」
「友樹も中々だぜ・・・」
「まぁいっか!優里に提案してみる。そしたら、私は涼介くんといれるし、優里は友樹くんといれるもんね!」
「そうだな。俺も友樹に提案してみるよ。」
「じゃあ、また教えてね。」
「うん、分かった。」
「あっ!もうこんな時間!涼介くん、早く準備しないと!」
「ほんとだ!」
二人はまたギリギリの時間に家を出た。
会社に着くと、知れ渡ったとはいえ、まだまだ視線を感じる。
「涼介くん、じゃあまたね。」
「うん。今日もがんばろう!」
「うん!はぃ、これお弁当。」
「えっ?作ってくれたの?ありがとう!」
「いいえ。どういたしまして。」
「昼休みを楽しみにがんばるよ!」
「うん!」
二人は別々のオフィスへ向かった。
「お〜ぃ、涼介く〜ん。朝から見せつけてくれるぜ〜。」
「友樹、おはよ!」
「おはよ。金曜日なんだけどさ、優里も来ていいかな?」
「あっ、それ朝俺たちもはなしてたんだ。4人で行きたいなって。」
「そうか!良かった〜!じゃあ、優里にも言っとくわ!」
「うん。なんだか、キャンプ思い出すな。」
「そうだな!また4人で集まれるか不安だったんだぜ。涼介がヘタレだから。」
「ごめんな。これからはがんばるよ!」
「そうだな!がんばれ!」
「じゃあまたな!」
「うん。」
そして、なんやかんやで、金曜日の夜。
涼介と凛花は、友樹と優里との待ち合わせ場所へ向かっていた。
「あ〜!なんか久しぶりに優里に会えるから嬉しい!」
「俺に気を使わないで、会いにいってもいいんだよ?」
「う〜ん。私が涼介といたいの・・・それに、優里も誘ってくれなくなったの・・・。」
「はははっ。凛花と同じ理由じゃない?気にするなよ。」
「うん。分かってはいるよ。あっ!優里!」
「凛花〜!久しぶり〜!」
凛花と優里の再会を喜ぶ姿を、
涼介と友樹は嬉しそうに見ていた。
「さっ!入ろ!入ろ!」
優里は凛花の手を引き、店に入っていく。
4人は予約していた席に座る。
「ところで、本当に涼介くん?」
「えっ?うん。」
「変身ぶりがすごすぎるわ〜!」
「そんなに変わったかな?」
「めっちゃ変わった!」
涼介の顔をマジマジ見る優里に、凛花は頬を膨らませた。
「私の涼介くんだからね!」
凛花は涼介の腕にしがみつく。
「大丈夫、大丈夫!私には友樹くんがいるんだから!」
優里も友樹の腕にしがみつく。
凛花と優里は顔を見合わせて笑った。
「ふふっ。ふふふふっ。」
優里は、真面目な顔になり、
姿勢を正した。
「さっ、聞かせてもらいましょうか〜!お二人の話を!」
凛花は少し恥ずかしそうに話しだした。
「で、今私達、同棲してます。」
優里と友樹は、顔を見合わせ、同時に言った。
「どっ、同棲〜?!」
凛花は嬉しそうに答える。
「うん!」
あまりに急な進展に、
優里と友樹は言葉を失っている。
優里が我に帰り話しだした。
「そっか〜。凛花、良かったね!」
「うん!」
「でも、まさか凛花に先を越されるとはな〜。」
「先?」
「も〜!嫁入り前の乙女に言わせないでよ〜!」
「あっ、そう言う事か。」
凛花は、優里に顔を近づけ、小声でいった。
「それはまだなの。」
「えっ?!まだ?一緒に住んでるのに?」
「ちょっ、ちょっと!小声で言った意味ないじゃん!」
「あっ、ごめん。」
優里と友樹は顔を見合わせ、くすっと笑う。
「ヘタレだな。」
「ヘタレだね。」
涼介はひじをテーブルに立て、あごを手にのせ、そっぽを向いた。
「ほっとけ〜。」
凛花は恥ずかしそうに言った。
「違うよ!涼介くんがヘタレなのはそうだけど、これに関しては待ってくれてるの・・・」
「凛花さん?フォローになりきってませんが。」
「あっ、ごめん!私、正直者だから。」
「追い打ち、ありがとうございます・・・」
『わははははっ!』
4人は楽しくて笑った。
優里はまた少し真面目な顔をして、友樹にを見た。
「ねぇ、友樹くん。私も同棲したいな・・・」
友樹は、困った表情で答える。
「同棲はちょっと・・・」
「なんで?理由が知りたい。私がうるさいから?」
「ちっ、違うよ!俺は優里といたら楽しいし、ずっと一緒にいたいと思ってる。」
「じゃあしようよ・・・」
「できない・・・ごめん。」
「なんで?私の家には何度も来たのに、私は友樹くんの家の場所も知らないんだよ!もぅいいよ!」
優里は立ち上がり、走って店から出て行った。
「友樹くん!追いかけてあげて!」
凛花が友樹に叫んだが、友樹は下を向いている。
「もう!とりあえず私行ってくる!」
凛花は優里を追いかけて店を出た。
「なぁ、友樹。理由聞いてもいい?」
「あ〜。誰にも言いたく無かったんだけど・・・、涼介、お前、市村財閥って知ってる?」
「そりゃ〜知ってるわ!三代財閥の一つくらい誰でも・・・?お前、苗字、市村だよな・・・?まさか?」
「そう。御曹司ってやつ。で、俺は今修行中の身でさ、家も一人暮らしじゃなくて、大体、送り迎え付きの毎日なんだよ。まだ一人前じゃないしさ、だから、俺も優里ちゃんにはまだ何もしてないんだ。」
「なんかテレビとか小説みたいな話だな。それ、優里ちゃんに伝えてやれよ!」
「そうだな。もうそろそろ、隠しきれないとは思ってたんだ・・・」
涼介は凛花に電話した。
「凛花、今どこ?優里ちゃんとは会えた?」
(うん。今、そこから5分くらい歩いた所の海の横の公園だよ。早く来て!)
「友樹連れて、すぐ行く。」
涼介は、友樹の腕をつかんで走った。
「ハァハァハァ。友樹、早く行ってあげなよ。」
「涼介、ありがとう!」
友樹は、優里に駆けよった。
「優里、ごめん!俺の秘密話す事にした。」
「秘密?」
凛花はそっと後退りして、涼介の座るベンチの横に座った。
「優里、俺は、市村財閥の御曹司なんだ!」
優里は泣き止んで、キョトンとしている。
「俺、一人暮らしじゃないし、修行中の身だから、実家も出られない。
だから、ごめん。同棲できない。
それに、俺の家に来るって事は、もう、そう言う事になるし、その覚悟ある?
会社辞めて、うちに住んで、市村の妻になる修行みたいな毎日になる。
今まで、御曹司だからって近付いてきた子たちは、みんな現実を知って去っていったんだ。まだ付き合って一ヶ月立ってないのに、話せる内容じゃないと思ってた。でも、俺、優里ちゃんとずっと一緒にいたい。俺と結婚してくれないか?」
「まっ、まって!脳の思考が追いつかない・・・
友樹くんは御曹司で、
同棲するなら、結婚で、
結婚するなら会社辞めて、
地獄の花嫁修行って事?・・・だよね?」
「うん。良くまとめられてるよ。」
「はぁ・・・。普通の幸せが良かったな・・・。」
「そうだよな・・・」
「よし決めた!私、がんばるよ!」
「えっ!?それって?」
「友樹くんのお嫁さんにして下さい!」
「ほんとか?」
「うん。自信はないけど、がんばってみたい!友樹くんが大好きだから。」
「優里〜!大好きだー!」
友樹は優里を抱きしめた。
少し離れた所で見守っていた、涼介と凛花は、嬉しそうに顔を見合わせた。
「凛花、あの二人、結婚しちゃったな。」
「ふふっ。ほんとに。良かった。」
「俺も凛花と結婚したいな〜。」
「ふふっ。まずは一ヶ月乗り越えて下さい。あと、ちゃんとプロポーズして下さい。」
「はい。失礼しました。」
二人は幸せそうに笑った。
涼介は、立ち上がり、
「さぁ!お二人さん!今日は俺たちのお祝いだろ〜!二人のお祝いは次回な〜。
店に戻って飲みなおそうぜ!」
「そうだな!」
友樹は、優里の手を握り、涼介達の元へ駆けよった。
その日の宴は、店の閉店時間まで続いた。