最強カップル誕生?
「わぁー!」
凛花が叫ぶ声で涼介は目を覚ました。
「凛花、朝から大声出して、どうしたの?」
「涼介くん!ヤバい!寝坊だ!」
「えっ?」
涼介は飛び起きた。
「ってまだ大丈夫じゃん。」
「えっ?涼介くんいつも何時まで寝てるの?」
「7時半。」
「嘘でしょ?間に合うの?」
「うん。」
「じゃあ寝てて!私は準備する!今日は朝ごはん作れないから!」
「平日はいいよ。コンビニでパンかおにぎり買うし。」
「ダメー!お弁当も作るつもりだったのにー!」
「そんなにがんばって無理したら、嫌になっちゃうんじゃない?無理しないで。」
「う〜。分かった。って、準備しなきゃ!」
凛花が必死に準備している横で、凛介はナマケモノの様にゆ〜くり準備を始めた。
「ふふっ。涼介くん動きが遅くてなんだか面白い。」
「えっそう?その内普通に動くから気にしないで。」
涼介と凛花は、無事2人で出社した。
もちろん、凛花はキャバ嬢スタイル、涼介もバッチリ決まっている。
すれ違う社員達は、2人を見てコソコソ話している。
「ねぇあれ誰だろ?あんな二人会社にいなかったよね?男の人マジカッコいいんだけど!」
「おぃ!誰あの美人。あんな美人この会社にいた?」
涼介は、社員達の視線にようやく気づき、凛花に小声で話しかける。
「なぁ、凛花、なんかめっちゃ見られてない?」
凛花も小声で話す。
「当たり前でしょ。だから昨日いったじゃん。」
「マジか〜めっちゃ疲れる・・・」
「がんばって。多分2、3日の我慢だから。責任取るんでしょ?」
「責任ってだから何。」
「私こっちだから、浮気したらダメだよ!」
「えっ?ちょっと!凛花さ〜ん。」
凛花はデスクに座り、仕事の準備を始めた。
「あの〜。そこ、西条さんの席なんですけど・・・あなたはどなた?」
となりの席の凛花の後輩が話しかけてきた。
「おはよ。」
凛花の後輩は目を見開き固まった。
「お〜い。戻ってこ〜ぃ。」
「はぁはぁはぁ。驚きすぎて呼吸が出来ませんでした!西条さん?なんですよね?」
「そうだよ。今日もがんばろうね〜。」
「はい!」
一方、挙動不審なイケメン、涼介は、恐る恐るオフィスに入り、席にすわった。
「なぁ!」
「わぁ!」
涼介は後ろからいきなり声をかけられ、驚いてしまった。
「友樹!だから〜、いきなり声かけるなよ!」
「はっなんで俺の名前知ってんの?」
「はっ?お前何いってんの?」
「ん?はぁ!!お前、涼介か?」
「そうだよ。寝ぼけてんのか?」
「涼介、何があったらそんなイケメンに変身できんだよ?」
「あっ、そうか。俺、髪型変わったんだったな。」
「かぁ〜!なんかムカつくわー!」
「何がだよ?」
「いゃ、イケメンすぎだろ!」
「んな訳ないだろ。そりゃ、ちょっとはマシになった気はするけど・・・」
「まぁいいわ。お前もしかして上手くいったの?」
「うん。色々ありがとうな。」
「バカ、礼とかいいし、また話聞かせろよ!後、またお祝いしてやるよ!」
「ありがとう!」
「あっ、今週の金曜日いこうぜ!じゃあ、会議行くわ!」
「了解。がんばれよ〜。」
二人はこんな感じで、
いつも顔を合わす同僚に、気づいてもらえないくらい変貌していた。
そして、昼休み。
凛花の恐れていた事が現実になった。
凛花のデスクの前には、男達が集まり、噂を聞きつけた人だかりが、経理部の入り口にできていた。
「西条さん!今度お食事でも!」
「俺と行きましょうよ〜。」
凛花は、綺麗なカッコした途端変貌する男たちにウンザリしていた。
凛花は突然立ち上がり、叫んだ。
「私は、技術部の衣川涼介さんとお付き合いしてます。だから誰ともお食事には行きません!」
集まっていた男達は、不服そうに退散していった。
「いや〜!気持ちがいいね!」
凛花はまだ残ってる男がいるのか?と、振り返りざまに、睨見つける。
「おー!こわい、こわい。勘弁してくれ。」
凛花はハッとした。
「猿渡部長!・・・睨んですいません。」
「仕方ないよ。あの状況なら。それより、衣川くんとの事は本当かい?」
「はい!」
「そうか、そうか。良かったね。実は、君の気持ちには感づいていたんだ。
それで、領収書もって行かせたりしたんだよ。少しは約にたてたかな?」
「う〜ん。微妙?」
「わははははっ!それは残念だ!
まぁ、お二人さんはお似合いだと思ってたから、幸せになりなさい。」
「はい!ありがとうございます!」
「さっきみたいな事が続くと二人とも大変だろ?私も陰ながら協力するよ。」
「助かります。お願いします。」
「まかせなさ〜い。」
そう言い捨てると、猿渡部長は立ち去っていった。
一方、涼介は、
こちらも女子社員に囲まれていた。
「ねぇ〜、衣川くん。今度お食事行こうよ〜。」
「え〜ずるい〜!私も!」
涼介はパニックになり、腕で顔を隠し、机に伏せていた。
(なんだ?なんなんだごれは!凛花の言ってた通りだ。俺こんなの無理だ。元に戻りたい・・・。凛花、助けて・・・)
涼介は、心の中で凛花を呼んでいた。
ふと、涼介の頭の中に、絵を描いた時の凛花が現れた。
(「私キャバクラ辞めたから、責任取ってよね。」)
(そうだ!俺はどんな責任も取るって約束したんだ!強くならないと凛花を守れない!)
涼介は立ち上がった。
「どうしたの?衣川くん。」
急に涼介が立ち上がったので、集まっていた女子社員達は驚いて涼介を見た。
「俺は、経理部の西条凛花と付き合っています。だから、誰とも食事には行きません!」
パチパチパチパチ。
誰かが拍手している。
「良くできました。」
涼介は、声の方を見た。
「猿渡部長!」
「今、経理部に行ったら、西条さんも同じ様な感じで囲まれてたよ。まぁ彼女は強いから蹴散らしていたがね。衣川くんが心配できたんだ。でも必要無かったみたいだな。」
「部長・・・ありがとうございます。」
猿渡部長は、声のトーンを上げて、話しだした。
「みんな、聞いてくれ!衣川くんは、経理部の西条くんとお付き合いしている。
みんなで二人を見守ってほしい。」
パチパチパチパチ。
少し不満そうな女子社員もいたが、猿渡部長のお陰で、みんな祝福ムードになっていた。
涼介は思った。
(なんですかこれは〜!なんかいい話みたいなってるけど、プライベートをバラされてるんですが〜!でも・・・これでもう大丈夫かな?良かった。)
涼介は安心して、コンビニ弁当の蓋を開けた。
その日のうちに、涼介と凛花が変身した事、2人が付き合っている事は、会社中に知れ渡った。
2人は、社内一の美男美女カップルとして、みんなの憧れとなり、祝福された。
「あーマイホーム。落ち着きますなぁ〜。」
「ふふっ、何それ?」
「だってめっちゃ疲れた。」
「大変だったでしょ?」
「うん。俺までイメチェンする必要あったの?」
「あるの。涼介が前のままだったら、私に言いよってきた人たちは、あきらめなかったの。」
「そう言う物なの?」
「そう言う物。」
「なぁ凛花。」
「なに?」
涼介は両手を広げた。
「おいで。」
「大丈夫?自分で自分の首しめてるよね、それ。」
「大丈夫!なんとかがんばるから!」
「分かった。」
凛花は、涼介の腕の中に飛び込んだ。
2人はそのまま眠った。
2日目は二人とも、
かなり疲れていた様で、
すぐに眠る事ができた様だ。