責任って?
チュンチュン。
鳥のさえずりで、涼介は目を覚ました。
隣りをみると、凛花がいない。
「凛花?」
涼介は、飛び起きた。
部屋を見回すと、凛花はキッチンにいた。
「あっ!涼介くんおはよ〜!」
涼介は、安堵した。
「はぁ。おはよ。」
「何?朝イチため息とかやめてよ!」
「だって。起きたら凛花がとなりにいなかったから、あせったんだよ。」
「大丈夫だよ。いなくなったりしないから。」
「うん!ありがとう。いい匂いがするなぁ。」
「朝ごはんだよ。材料昨日買うの忘れてたから、あるもので作ってるから。」
「ありがとう。」
「涼介くん、座って!できたよ。
今日は、ご飯とお味噌汁とだし巻き卵。」
「うまそ〜!」
「さっ、食べよ!」
二人は朝食を終え、お出かけの準備をした。
「さぁ!行こう!」
「なぁ凛花〜。そろそろどこに行くか教えてよ。」
「着いてからのお楽しみ!」
二人は歩いて目的地に向かう。
「電車乗らないんだ?」
「うん。近いから。もうぐだよ。」
凛花が立ち止まった。
「ここ。」
「美容室?」
「そう!正解!」
カランカラン。
凛花は扉を開け、涼介を美容室の中に引っ張る。
「いらっしゃいませ〜。」
「予約してた西条です!」
「はい。ありがとうございます。ではこちらへ。」
美容師が呼んでいる。
「さっ、涼介くん、座って。」
「えっ?俺?俺はいいよ。」
凛花は、回りに聞こえない様に小声で言う。
「涼介くん、これは、(責任をとる)の中に含まれている項目です。」
「えっ?そうなの?」
「うん!」
「じゃ、じゃあ。」
涼介は渋々美容師の所に行き、座る。
「今日はどんな感じにされますか?」
「美容師さ〜ん!こっち来て下さい!」
凛花は、少し離れた所に美容師を呼び、スマホを見ながら楽しそうにはなしている。
涼介が、不安そうに見ていると、美容師が戻ってきた。
「では、切っていきますね〜。」
「えっ?要望的なのは?」
「あっ、彼女さんからご要望は聞かせて頂いたので、大丈夫です。」
涼介は、不安そうな顔で凛花を見た。
凛花は、すごく楽しそうな笑顔で涼介を見て頷いていた。
涼介は、目が隠れそうな前髪はもちろんのこと、どんどん髪を切られていき、不安のどん底だった。
ようやく切り終わったと思うと、
次は何だか分からない液体を髪に塗り込まれた。
そして、しばらく放置された。
涼介が凛花をみると、凛花は待ち合い用のソファーで眠っていた。
「凛花、寝てんじゃん!・・・かわいいな。」
ピピっピピっピピっ。
何かのタイマーが鳴る。
美容師が近付いてきた。
「では、頭流しますね。」
「はい。お願します。」
涼介の頭の液体を流すと、髪の毛が茶色になっていた。
その後、涼介は眉毛を整えられ、髪の毛をセットされた。
「完成です!どうですか?」
美容師がドヤ顔で聞いてくる。
「やっぱり!涼介くんちゃんとしたらめっちゃ男前だよ!」
後ろから凛花が叫ぶ。
「凛花、起きてたんだ。」
「寝てたのバレてました?
それより、涼介くんどう?」
「俺じゃないみたい。」
美容師も驚いている。
「こんなにカッコいい方だったんですね。ちゃんとしないともったいないですよ。かわいい彼女さんのためにも、カッコいい彼氏でいないと!」
「あっ、ありがとうございます。がんばります。」
「ありがとうございました〜。」
二人は美容室を後にした。
「さっ、次はあっちだよ。」
「凛花さん、これは一体?」
「涼介さんが、一ヶ月我慢できたら教えてあげるね。」
「あー気になる!で、次はどこに行くの?」
「ここです!」
「メガネ屋?」
ガチャ。
「いらっしゃいませ〜。」
「こんにちは〜。あっ、涼介くんあっち見てみよ!」
凛花は凛介の手を取り、楽しそうに店の奥へ行く。
「これかけてみて!」
「う、うん。」
「カッコいいー!」
「茶化すなよ〜。」
「涼介くん。分かってる?今の涼介くんは、芸能人並みにカッコいいんだよ?明日から、会社の女の子に声かけられるから、ちゃんと西条凛花という彼女がいるっていってよ!浮気したらダメだからね!」
「しないよ。誰も声なんかかけてこないから安心して。」
「あ〜!信じてない〜。心の準備しとかないとしんどいよ?」
「はいはい。」
凛花は頬を膨らませた。
自己肯定感の低い涼介に不満そうだったが、凛花はまたメガネを物色しだした。
「あ〜どれにしたらいいか難しいなぁ〜。本当はコンタクトにしたいんだけど、涼介くんの目が心配だから、知的な涼介くんを際立たせるメガネがいいんだよね〜。」
「はぁ。」
「涼介くん自分に興味なさすぎ!ちょっとは選んでよ!まっ、決めるのは私だけど!」
「俺に決定権ないの?・・・じゃあ、これは?」
涼介は、自分の好きなメガネを手にとり、かけてみた。
「わぁ!合格です!」
「あっ、ありがとうございます。」
「じゃあ、これ買おう!」
凛花は嬉しそうにレジへいく。
二人はメガネ屋を出た。
「涼介くんのコーデが完了しました!
今日のミッションはクリアです!」
「ありがとうございます!」
「はい!お付き合い頂き、感謝します!」
二人は顔を見合わせて笑った。
ぐぅ〜。
凛花のお腹が鳴る。
凛介は恥ずかしそうだ。
涼介は回りを見回し、人がいないのをみると、凛花を抱きしめた。
「ちょっ、ちょっと!なんで今?!」
「だって、お腹が鳴って、照れてる凛花が可愛すぎたから。」
「もう、何それ。」
「なんか食べよ。」
「うん!」
二人は手をつなぎ、店を探した。
「ねぇ。涼介くん。」
「ん?入りたい店見つけた?」
「引かない?」
「何?引かないけど。」
「私、前まで猫さんかぶってオシャレな店ばっかだったじゃん?」
「確かに行った店はオシャレな店ばっかだったな〜。」
「私、実は・・・牛丼とかラーメンの方が好きです!」
「はははははっ!凛花、お前!可愛すぎるだろ!分かった。じゃあ、そこで牛丼食べよ。」
「うん!」
二人は牛丼を食べて、買い出しをして、
家に帰った。
カチカチカチ。
静か部屋に時計の音が鳴り響いている。
「あー!もう無理!疲れた〜!」
ベッドに座っていた凛花は、横になった。
「えー!今すごい集中してたのに〜。」
「ずっと動かないのめっちゃしんどいよ〜。う〜!」
凛花は、立ち上がり、伸びをして凛介の描いている絵を覗き込んだ。
「えっ!すごい!早く色塗って〜!」
「凛花ががんばったらね。」
「うー。」
「今日はここまでにして、晩御飯作ろうぜ!」
「そうだね!」
二人はキッチンに並んで料理をしている。
「なぁ、凛花さん?手が止まってますよ。あんまり見ないでもらえますか?」
「だって〜!めっちゃカッコいい!」
「はぁ。よそ見してて包丁で手きる」
「痛っ。」
凛介は包丁で指を切った。
「バカっ!よそ見したら危ないって!」
凛花の傷は浅そうだが、血が出ている。
「ちょっと見せて。」
凛介は、凛花の指を吸った。
「ちょっ、ちょっと!何してんの!?」
凛花は驚いて手を引っ込めた。
「えっ?指切った時母さんがこうしてたから。バンソウコウと消毒液が確かここに、あった!凛花、手。」
「・・・もう吸わない?」
「何?あとは消毒してバンソウコウ貼るだけだけど?」
凛花は手を差し出す。
「じゃ、じゃあ。」
(きゃー!涼介くん何してくれてんの!この調子だと、私が一ヶ月持たないかも・・・)
「よし!痛くない?」
「ちょっと痛いけど大丈夫。」
「包丁とか火使う時は、よそ見するなよ。」
「はい。気をつけます・・・」
二人は、晩御飯を食べ、準備にお風呂に入り、ベッドに横になった。
そして、凛花とくっついて眠りにつく。
が、涼介は思った。
(あ〜無理ー!まだ1日目だぞ〜。凛花に触りたい。いやっ、ダメだ!きっと凛花は俺を試してるんだ!俺の凛花に対する気持ちは嘘なんて一つもない!寝るぞ!俺は寝る!)
そして、凛花も思った。
(ヤバいヤバい!誰ですかこのイケメンは〜!破壊力バツグンです・・・。
前までは内面がすごく好きだったけど、今日から外見もめっちゃ好き〜!
私一ヶ月も色々我慢できるかな?どこまでオッケーか決めてなかったな〜。でもキスとかしたら、涼介くんには拷問みたいになっちゃうよね。ダメダメ。よし!寝よう!私は寝る!)
二人はなんとか眠りにつき、1日目を乗り越えた。