二つの恋の行方。
「おー!優里ちゃん!釣れてる釣れてる!」
「えっ?えっ!どうするの?どうしたらいい?」
「落ち着いてリールを巻いて。」
友樹は、優里の後ろに立ち、手をつかんで、リールを一緒巻く。
「わー!すごい!すごい!友樹くん!釣れたよ!」
優里が嬉しそうに後ろを振り向くと、
二人の顔の距離はすごく近かった。
一瞬二人は固まった。
「あはは。」
優里は友樹から少し離れて釣れた魚を見せる。
「友樹くん、見て!」
「すごい!こんな大きいのは久しぶりだよ!」
「そうなの?」
「うん!」
「やった〜!凛花に早く見せたい!」
「ダメだよ!今が釣れる時間だから、今のうちにいっぱい釣らないと!」
「へ〜。お魚のご飯の時間?」
「そうそう!俺も釣るぞー!」
友樹は優里をサポートしながら魚を沢山釣った。
「釣れなくなったね〜。お魚のご飯の時間終わり?」
「多分。あ〜!楽しかった!」
「私も!友樹くん、ありがとう。
私、邪魔してなかった?」
「うぅん。ほんとは涼介と釣りしたいんだけど、あいつ釣りしてくれないから、一緒にできてすごい楽しかった!」
「良かった。二人仲いいんだね。」
「うん。俺は親友だと思ってる。あいつはどう思ってるか分からないけど。」
「そっか〜。私も同じ。凛花の事、親友だと思ってる。でもあの子、気持ちを外にあんまり出さないから、どう思われてるか分からないんだ。」
「俺たちは、大丈夫!嫌いなヤツとキャンプ行かないじゃん?」
「確かに。」
優里は友樹を見つめ、微笑む。
「ねぇ。友樹くん。」
「ん?」
「彼女いないなら、今度は二人で来たいな。」
「マジ?俺彼女いないよ。優里ちゃんも彼氏いないの?」
「いな〜い。」
「じゃあまた二人で来よ。」
「うん!」
「そういえば・・・楽しすぎて忘れてた!」
「ほんとだ!あの二人大丈夫かな?」
「・・・大人だし、ほっとこか?」
「ふふっ。そうだね・・・あのさ。」
優里が突然真面目な顔になる。
「どうした?」
「涼介くんにはまだ秘密にして欲しいんだけど・・・秘密にできる?」
「えっ?何?」
「秘密にできますか〜?」
「はい!誓います!」
「じゃあ・・・」
優里は凛花の秘密を話しだした。
「えー!マジ?事務の西条さんがキャバ嬢の凛花で、キャバ嬢の凛花が、今涼介といる凛花?!マジかよ!全然気付かなかった〜!」
「あの二人、出会い方がね〜。凛花もあんなだから、言い出せないみたいなんだ。」
「そっか〜。もうすぐキャバ嬢も辞めるつもりだったんだな。なんかうらやましい様な悩みだね。」
「そうなのよ!ほんとムカつく悩み!
でも・・・凛花は真剣に悩んでて、凛花は凛花で大変みたい。」
「確かに、ならないと分からないよな。」
「うん。ごめんね。楽しい雰囲気が暗くなっちゃったね。でも、私、凛花には幸せになって欲しいから・・・友樹くん!お願い!協力して!」
「もちろん!俺も涼介には幸せになって欲しいから!」
「良かった〜。」
「優里ちゃん、友達のために一生懸命で、すごい何ていうか・・・」
「なんて言うか?」
「出会ってまだ1日もたってないけど・・・好き?」
「私も・・・第一印象ナンパ野郎で最低だったけど・・・一緒にいたいなって思う。」
「友達から?」
「そうだね。嬉しい!」
友樹は、立ち上がり叫んだ。
「やったー!俺も嬉しいー!」
一方、涼介と凛花は、散歩を始めて、
浜辺で並んで座っていた。
「なんかごめんね。私と二人になってしまって・・・」
「こちらこそ。」
「あのね。私ね、昨日振られたんだ〜。」
「えっ?そうなんだ。俺も昨日、失恋した。」
「ふふっ。一緒だね。」
「だね。俺、初恋だったんだ〜。」
「そうなんだ。良かったら聞かせてよ。」
「えっ?俺の話なんてつまらないと思うよ?」
「いいの。聞きたい。」
「じゃあ。」
涼介は、凛花との思い出と、最後にすれ違った日の事をはなした。
涼介は、はなしながら涙があふれてきた。
「あ〜なんであんな事言ったんだろ。もう連絡もこないし。大好きなんだ。でも傷つくのがこわい・・・」
「へ〜。恋愛なんて傷つくのこわがってたらできないんじゃない?連絡してみたら?」
「う〜ん。連絡無いって事は、やっぱり相手にされてなかったんだよ。」
「私がその人なら、好きじゃなかったらしない事、いっぱいしてると思うよ。」
「そうなの?でも・・・職業を悪く言うのは良くないんだけど、やっぱりキャバクラで働く女の子って、疑ってしまうんだ。」
「そうだよね〜。すぐやめようかな。」
「え?」
「うぅん。何でもない。」
「でもまだその人の事、好きなんだよね?」
「うん。すごい好き。」
「がんばれ!私もまだ大好きなんだ〜!私もがんばるね!」
「そうだね。がんばろ!」
二人がはなしていると、優里と友樹が帰って来た。
「おっ、お二人さんも仲良くなれた?」
涼介と凛花は顔を見合わせ、
「まっ、まぁ」
と同時に答えた。
「凛花!見て見て!すごくない?」
「わぁ〜!こんなの釣れるんだ!」
「でしょ!でしょ!この一番大きいの私が釣ったんだよ!」
「え〜!すごいね!」
「えっへん!まぁ、友樹くんに手伝ってもらったんだけどね〜。」
「優里、楽しかったんだね。良かった。」
「うん!また後で話すね!」
「うん。」
友樹が嬉しそうに立ち上がり、
「さぁ!晩御飯は、魚のバーベキューだ!」
「いいねぇ!」
優里は嬉しそうに立ち上がり、友樹とテントへ向かう。
「なんだかあの二人いい感じだね。私まで嬉しい!」
「そうだね。友樹幸せそう。」
「さっ、私達もいこっ!」
「うん。」
この後、4人は魚を捌いて焼いて食べて、楽しい時間を過ごした。
次の日の朝、4人はキャンプ場を後にした。
友樹は、優里と離れるのが名残惜しそうだったが、また会う約束をしていた様だ。
俺は、もう一人の凛花とお別れの挨拶をして、お互いがんばろって約束した。
「あ〜。とはいったものの・・・」
涼介は自宅のベッドに倒れ込んで天井を見ていた。
「凛・・・花。」
涼介は大自然の中で気持ちが大きくなっていたが、現実に帰って来ると、やっぱり勇気なんてでなかった。
それから、1週間、2週間と時間が流れていく。
ある金曜日の晩。
「涼介くん!お疲れ〜!」
「何だよ、めっちゃ機嫌いいな。」
「あっ!分かる〜?」
「今からいつもの居酒屋いかねぇ?」
「いいけど。」
「じゃあ決まり!行こうぜ〜!」
涼介と友樹は、いつもの居酒屋でカウンター席に並んですわっている。
「あのさ、俺、ついに!・・・」
「ついに何だよ?」
「ついに!・・・」
「引っ張りすぎ。見てたら分かるわ。優里ちゃんと付き合ったとかだろ?」
「何だよ。俺に言わせろよ。そう。優里ちゃんと付き合えた。」
「良かったな!」
「だよな〜。不謹慎だけどお前に感謝してる。あの日、あのまま飲みに行ってたら、優里ちゃんとは出会えなかったから。」
「そうだな。俺の事は気にせず、幸せになれよ。」
「あ〜それは言われなくてもだけど・・・お前、あれから凛花ちゃんに連絡したの?」
「・・・・」
「してないな。はぁ。まだ好きなんだろ?気持ち伝えて、キャバクラやめて欲しいって頼んだら?」
「こわいんだ。」
「お前さぁ〜。俺だって優里ちゃんに気持ち伝えるとき、振られたらもう会えなくなるってこわかったんだぞ。でも、こわがってたら、今以上にはなれないんだぞ。」
「そうだな・・・でも結構時間たってるし、連絡ないって事は、もう。」
「あんな事言われたら、こわくて連絡できないと思うぞ。もしかしたら待っててくれてるかもしれないだろ?」
「そうかな?」
「分からん!」
「なんだよ〜。」
「まぁ今日は飲もうぜ〜!」
「はぁ。ご機嫌だな。」
「そりゃそうだろ!あ〜涼介にもこの幸せな気持ちを味って欲しいな〜。」
「味わいたいよ。」
「参考に教えてやるよ!」
あのキャンプの日にさ、好きかもっていったらさ、優里ちゃんも俺の事好きかもっみたいな事ていってくれてさ〜。」
「えっ聞いてないぞ!」
「言ってないからな。」
「言えよ!」
「すまん。でもその時は、今日出会ったばかりだから、友達からって事になったんだ。ずっと友達のままだったら恥ずかしいだろ?だから秘密にしてた。」
「そっか。以外と友樹って慎重なんだな。」
「当たり前だろ!本気なんだから!」
「で?」
「キャンプの日からさ、毎日LINEしてたんだけど、次の金曜日、映画に二人でいったんだよ。
嫌われたらどうしようと思いながらも俺は、映画見ながら優里ちゃんの手を握ったんだ。そしたら、握り返してくれたんだ!でさ、その日はずっと手をつないでたんだぜ!
その日はそれでお別れしたんだけどさ、次の日、優里ちゃんの家に行く事になって、晩御飯作ってくれたんだよ!
それから、優里ちゃんの家に良く通ったな〜。で、先週の金曜日、また一緒に海で釣りキャンプしたんだよ。
俺楽しくてさ〜。
まだ出会って一ヶ月たってないけど、気持ち伝えたんだ!
そしたらオッケーしてくれたんだ!
「へ〜。俺がヤサグレてた間にがんばってたんだな!おめでとう!」
二人はこんな感じで、閉店まで飲んだ。
「あ〜!友樹、幸せそうで良かった。俺・・・何してんだろ?」
涼介は、ベッドに横たわり天井を見ていた。そして、そのまま眠った。
ピンポーン。
涼介は、インターホンの音で目が覚めた。
まだ朝の7時だぞ?誰だよこんな早く。
ガチャ。
涼介は、目をこすりなが、ドアを開けた。
そこには凛花が立っていた。
「凛花?」
涼介は、会えなかった間、好きな気持ちがあふれていたが、目の前に凛花がいるのを見ると、あの日、男の腕の中にいた凛花を思い出して冷たい対応をしてしまう。
「何しにきたんだよ?」
凛花は、下を向いていたが、涼介の冷たい対応にムスッとした表情でいった。
「描いて。約束したし。」
「えっ?」
凛花は、少し開いていたドアを引っ張り開け、強引に部屋の中に入って行った。
「ちょっ、ちょっと。凛花?」
「モデルになりに来たの。早く描いて。」
凛花はそう言うと、ベッドに座る。
「なんで?」
「約束したから・・・。」
「・・・」
涼介は黙って絵を描く準備を始めた。
カチカチカチカチ。
時計の音だけが部屋に鳴り響く。
どれくらい時間がたっただろうか。
凛花が重い口を開く。
「ねぇ。」
「何?」
涼介は無愛想に答える。
「あの日、同伴してて、お客さんがいきなり肩に腕を回してきたの。嫌だったからすぐにやめてっていったんだよ。
あのお客さん、すごいしつこく同伴誘ってきてて、断り続けてたら、お店に抗議しだして。私は、同伴しないってお店には言ってたんだけど、大口のお客さんだしってお店に頼まれて断れなかったの。
この前、LINE返すの遅くなった日覚えてる?お風呂って嘘ついちゃったけど、ほんとはずっと電話きってくれなくて。嘘ついてごめんなさい・・・あの人との事はこれで全部いったよ。私、あの人とは何もないし、興味もない。涼介くん以外誰も。」
凛花が、涼介の顔を見ると、
涼介は、涙を流していた。
「り・ん・か〜。ごめん〜。おれ〜。バカでヘタレで情けない男で〜。」
凛花は今日初めて笑った。
「ふふっ。バカ。」
「ごめん〜。」
「涼介くん。」
「はい〜。」
「私、昨日でキャバクラ辞めたから・・・責任取ってよね。」
「ほんとに?うれしぃ〜。どんな責任もとる〜。」
「もう。全然ロマンチックじゃない!」
凛花は立ち上がり、涼介に歩みよった。
椅子に座る涼介を力いっぱい抱きしめた。
「バカ。バカ。バカ。涼介くん全然かっこよくない〜!」
凛花はずっとこらえていた涙が溢れ出した。
「りんか〜!」
「りょうすけく〜ん!」
「凛花!好きだ〜!大好きだ〜!」
「私も大好き〜!」
二人は溜めた涙が枯れるまで、泣きながら抱きしめ会った。
涼介は凛花を抱きしめながら話始めた。
「なぁ、凛花。」
「なぁに。」
「今日からここに住まない?」
「えっ?」
「だって、仕事辞めたんだろ?」
「ちょっと責任の意味違うけど・・・そうする。もう涼介くんと1秒も離れたくない。」
「やった。幸せだな〜。」
「うん。私も幸せ。」
凛花はふと凛介の描いてた絵を見た。
「わぁ!すごい!」
「まだ下書きだよ。」
「今日から毎日一緒だし、ゆっくり完成させてね。」
「うん。」
二人は幸せな気持ちで、しばらくくっついていた。