これはデートです!
涼介は、待ち合わせの場所に到着していた。
「まだ30分前だな。早く来すぎた。」
ふと近くのベンチに目をやると、何やら揉めているのが目に入った。
良く見ると、ベンチに座っている女の子が男2人に絡まれている様だ。
「ナンパか?助けてあげたいけど・・・って!絡まれている子、凛花じゃないか!」
涼介は凛花の元に急いだ。
「お待たせ!」
凛花は、涙目で涼介に駆け寄り、後ろに隠れた。
涼介は、見た目はオタっぽいか、身長が高く、以外とガッチリ体型だった。
男達は、涼介を見上げ、ひるんでいる。
「この子に何か用ですか?」
「なんだよ。」
男達はそう吐き捨てると、去っていった。
「涼介くんありがとう。」
「ごめん遅くなって。恐かっただろ?」
「恐いけど、慣れてるから・・・また助けられたね・・・」
「また?」
「何でもない!っていうか遅くなってごめんって、まだ30分前だよ〜。」
「早く会いたくて。」
「私も・・・。行こっ!」
「まだ予約の時間早いんじゃ?」
「知り合いの店だから大丈夫!」
二人は凛花の予約した店に入る。
カラン。カラン。
「いらっしゃいませ。おっ凛花早いじゃん!」
「ラブラブだから二人とも待ち合わせ時間より早く来ちゃったの〜。」
「なんだよそれ。のろけるのやめてもらえる?」
「へへっ。席はいつものとこ?」
「いつもの席取ってるよ、お姫様。」
「さすがっ!ありがとう〜。」
凛花・・・知り合いって男かよ。
めっちゃ親しそうだし、めっちゃイケメンだし・・・ヤダな。
なんか俺、惨めだな・・・
「涼介くん、どうしたの?早く席行こ。」
「うん。」
二人は席に、座った。
「涼介くん!見て!まだ明るいけど、見晴らしいいでしょ?夜景がすこいキレイなんだよ!」
「うん。夜になるの楽しみだね。」
「なんか急に元気なくなってない?」
「いや、そんな事は・・・」
「あるよね?何で?教えて。」
「知り合い男だったし・・・
親しそうだし・・・
イケメンだし・・・」
注文を聞きに近付いてきていた男は、涼介の話が聞こえていたのか、笑いだす。
「ははははっ!彼氏さんヤキモチっすか?」
「わっ、笑わないでくれよ!
・・・すいません。
俺・・・バカみたいですね。」
「バカみたいじゃないですよ。俺、ちゃんとヤキモチ妬く人で嬉しいっす。」
「えっ?」
「っていうか、凛花〜!先に説明しとけよ!彼氏さん!こいつは付き合った事はおろか、男友達がいた事も無いんで安心して。あっ、それと俺は凛花の弟。西条 要。姉共々よろしくっす!」
「ちょっ、ちょっと要!何色々バラしてくれてんの?」
「いいじゃん。カレピなんだろ?」
「まだ付き合ってないもん。」
「えっ!?マジ?ご注文が決まりましたらお呼びくださ〜い。」
要は去っていった。
「ちょっ、ちょっと〜。」
凛花、今、「まだ」って言ったよな?
言った。確かに言った。
期待していいのかな?
「涼介くん弟がごめんね。」
「うぅん。いい弟さんだね。」
「まぁね。自慢の弟なの。
さっ、注文しよ!ここおいしいんだよ〜。何にする?」
少しギクシャクしたが、二人の初デートはとても楽しい雰囲気で過ぎていった。
食事も終わり、二人はワインを飲んでいた。外は暗くなり、夜景がきれいだ。
向かいの席に座っていた凛花は突然たちあがった。
そして、涼介の隣りへ回り込んだ。
「涼介くん、ちょっと詰めてもらえます〜?」
涼介は窓側へ寄りながら、
「凛花、酔ってるのか?そこじゃ夜景見えにくいんじゃ?」
「いいの。こうするのが私の小さな夢その1だったんだ〜。」
凛花は涼介の肩に頭をのせた。
「小さな夢、叶って良かったな。」
「うん。」
凛花は嬉しそうに、満面の笑みで涼介を見つめた。
カワイイ〜!天使かよ!!
顔近いし、いい匂い。
あー!抱きしめてー!
「あっ、今、抱きしめてー!って思ったりした?」
「そっ!そんな事・・・」
「あるよね?えへっ。」
凛花はすごく楽しそうだ。
要が近付いて来る。
「お客様、続きは店外でお願いしますね〜。」
要は、顔を近づけ小声でいう。
「凛花、ここ俺の店だぞ。他のお客さんもいるから程々にしてくれよ。早くホテルでも彼氏さんの家でも行ってこいよ。」
「だからまだ付き合ってないもん・・・」
「彼氏さん、連れ出して。お願い。」
「すいません。じゃあ行きますね。ごちそうさま。」
「え〜まだいたい〜。」
「ダメだなこいつ・・・あっ、彼氏さん、名前教えて下さいよ。」
「衣川涼介。」
「涼介さんね。じゃあ涼介さん姉ちゃんたのんます。」
「迷惑かけてしまってすいません。じゃあ。」
「ありがとうございました〜!また来て下さいね〜!・・・姉ちゃん、良かったな。いい人見つけたな。」
凛花は一人で歩くのが心配なくらいフラフラしている。
「お〜ぃ。凛花さん大丈夫ですか〜?」
「だぁいじゅうぶぅ〜!」
「大丈夫じゃないだろ?
このあと、どうする?」
「どうにでもして〜」
凛花は涼介に抱きついた。
「はぁ、こりゃあダメだな・・・今日は帰ろ。送るから、家どこ?」
「うんとね〜。あそこ!」
凛花は近くのマンションを指さした。
「近っ!ほんとか?」
「うん。ほぉんとぉ〜。」
涼介は凛花を支えながら部屋に入り、ベッドに寝かせた。
「大丈夫か?はい、水飲め。」
ゴクッゴクッ。
「かぁ。おいちぃ〜。ねぇ。涼介。
いしょ寝よ。」
凛花はベッドに寝転がり、両手を広げた。
涼介は恐る恐る凛花の横に寝転がった。
「あのね〜昨日、涼介、こうしてきたんだよ〜。」
「おっ、おぃ。」
凛花は涼介を抱きしめる。
涼介は嬉しそうに微笑み、凛花を見た。
スースー。
「って寝てんのかい!」
はぁ、なんなんだこの状況は。
耐えられない!寝られない!
昨日の逆襲か?
付き合うってこういう事なのかな?
幸せだな。
友樹に報告したら喜ぶだろうな〜!
はぁ凛花に捕まって起き上がれないし、なんとか頑張って寝よ。
寝れるかー!
知らない間に涼介は眠っていた。
次の日、涼介は朝日が眩しくて目が覚めた。
「う〜ん!良く寝た!」
涼介は伸びをして、凛花を見た。
「まだ寝てる・・・カワイイな。」
涼介が独り言をいうと、凛花の目がパッチリ開いた。
「カワイイ?」
「起きてたのかよ!」
「うん。起きてたよ。涼介くんが寝てたから、もう少し寝ようかなと思ってたとこ。」
「起きる?」
「うん。」
二人は起きあがり、ベッドに並んで座った。
「凛花さん?昨日の事覚えてる?」
「覚えてるよ・・・半分!」
「はぁ。完全に酔っ払ってたぞ。頭痛くない?」
「うん!ありがと。
あっ、朝ごはん作ってあげる!」
凛花は立ち上がり、キッチンへ向かう。
「料理できるの?」
「う〜ん。そこそこ?要に教えてもらってるんだ〜。」
「それは楽しみだ!」
凛花は慣れた手つきで料理している。
「はい!できました〜!今日はね、
フレンチトーストとサラダとスープです!」
「すごいな!食べていい?」
「うん!食べて!」
「いただきます。」
涼介はフレンチトーストをほおばった。
「うまい!凛花、うまいこれ!」
「良かった〜。私も食べよっ。いただきます。」
二人は朝食をすませ、食器を一緒に洗った。
「ねぇ、涼介くん。このあとどうする?」
「ごめん!まさかお泊りするなんて思ってなかったから、予定入れちゃってるんだ・・・」
「そうなの?残念・・・」
「はぁ、予定入れなかったら良かった。」
「仕方ないよ・・・まさか!?
予定の相手、女の子?」
「えっ?一応?」
「やだ。」
「何が?」
「やーだ!」
凛花は、涼介に抱きついた。
「あのさ、母さんなんだけど・・・」
「・・・・」
凛花は静かに涼介から離れた。
「じょ、冗談だよ、冗談!」
「そっか。」
「うん・・・」
「ごめんな。前から母さんにパソコン一緒に選んでって言われてて、ずっと放置してたらこないだ怒られたんだ。」
「それは行ってあげないとね!
あ〜!じゃあ私も行っていい?」
「えっ?いいけど・・・
きっと勘違いするよ、母さん。」
「いいよ!むしろ彼女のフリしようか?」
「それはまずい!俺、女の「お」の字も今までなかったから、嘘がバレたら母さん泣くよきっと。」
「それはマズイね・・・」
(涼介〜!何真面目に答えてるんだよ〜!ここは、本当の彼女になる?とか言ってよ・・・言ってくれたら彼女ですって挨拶できるのにー!ここまでしても私の気持ちは伝わってないのかな?ほんと酔っ払ってないと、究極の草食系だわ。)
「まぁ、適当に友達とか言っとこ!
一緒に来てくれるなら、俺っ嬉しいし!」
「うん。分かった。じゃあ準備しないとね。」
「やった!俺一回帰るから、駅前に13時集合な!」
「うん、分かった!」
涼介は一度帰って、風呂に入って、身支度をした。
「母さん、大丈夫かな?暴走して凛花の事困らせたりしないかな?う〜ん。なんとかなるだろ!」
涼介はギリギリ13時に到着した。
ん?何やら揉めてる?
はぁ、凛花またナンパされてるじゃん!
早く行かないと!って母さん?
「お待たせ!ごめん!」
「涼介!遅い!
こら!そこの若い男たち!この子の彼氏だよ!」
涼介の母は、ナンパしていた男達に一喝した。
「え〜マジで彼氏いたのかよ〜」
涼介の母に邪魔されて、男達は渋々去っていった。
「はぁ、疲れたわ〜。」
凛花は、涼介の母に頭を下げた。
「あの、ありがとうございます!」
「いいのよ。あなたも大変ね〜。可愛すぎるのも苦労する物なのね。」
「いぇ。そんな事は。」
「まだあいつらウロウロしてるかも知れないから、気を付けてね。
さっ、涼介、行くわよ!あれ?そういえば、お友達連れて来るんじゃなかったの?」
「母さん!母さんが助けた子がお友達だよ。」
涼介の母の目が輝く。
「まぁ!涼介が女の子と?お友達?!」
涼介の母は信じられない様で、凛花に詰め寄る。
「ほんとに?涼介とお友達になってくれたの?」
「はっ、はい!西条凛花です。よろしくお願いします。」
「凛花ちゃんか。可愛いいお名前ね!あ〜嬉しいわ〜!さぁ行きましょう!」
涼介の母は、嬉しそうに歩き出した。
涼介は、凛花に小声であやまる。
「ごめんな。言った通りだろ。暴走しない様に見張っとくから。」
「全然、大丈夫だよ。いいお母さんだね。良かった。」
「ん?」
「さっ!お母さん見失っちゃうよ!」
凛花、今、「良かった」って言った?
そう言う意味?
涼介は、まだ凛花の気持ちには気づけてなかった。
「あ〜いいパソコン買えて良かったわ〜!涼介もさすがだけど、凛花さんも詳しいのね!凛花さんもIT?企業に勤めてるのかしら?」
涼介が割り込んで答える。
「似たようなもんだよ!」
「そう。何か食べない?御礼にごちそうするわ。」
涼介は、凛花を見た。
凛花は、少し落ち込んだ表情だったが、答えた。
「ありがとうございます!」
「良かったわ。一緒にお食事したかったのよね。凛花さんは何が食べたい?」
「俺には聞かないのかよ!」
「そりゃそうよ!」
「なんだよ〜。」
「ふふっ」
親子のやり取りを見て凛花は笑った。
「じゃあ、そこのパスタのお店はどうですか?私、好きなんです。」
「じゃあそこにしましょ。」
涼介の母は、楽しそうに店に入っていった。
「凛花、ごめん。職業嘘ついた。」
「うぅん。大丈夫。言えないよね・・・それに嘘はついてないから大丈夫!」
凛花はニコッとして涼介の母を追いかけていった。
「凛花さん!すごく美味しかったわ〜。」
「ですよね!あっ!ここもおいしいんですけど、私の弟がお店してて、今度ご一緒しませんか?」
「あら、すごいわね!行ってみたいわ。」
「じゃあまた今度是非!」
「ありがとう。楽しみにしてるわ。」
涼介は突然立ち上がった。
「どうしたの?」
「トイレだよ。」
涼介は恥ずかしそうにトイレに向かった。
「やっと二人になれたわ〜。
ねぇ、凛花さん。」
「はい。」
「涼介の事好き?」
「えっ?!えっと、えっと。」
「ふふっ。それで分かったわ。涼介の事、お願いね。」
「お願いされたいんですが・・・」
「あの子、今でいう・・・草食系?なのよ。時間が係るかもしれないし、普通の男の子よりめんどくさいと思うんだけど、凛花さんならあの子をお願いしたいと思うの。」
「なんだか・・・全部お見通しなんですね。」
「そうね〜。それを言うなら、あなたの職業。涼介嘘ついてたわよね。」
「えっ!?はい。正直に全部お話します。私、キャバクラで働いています。週1日だけなんですが。分かってもらえるか、理由がって・・・」
凛花は、涼介の知らない事も全部はなした。
「そうなのね。私には理解できない感情だけど、凛花さんに涼介をお願いしたい気持ちは変わらないわ!」
「えっ?・・・ありがとうございます。そんな風にいってもらえると思ってませんでした。」
凛花の目尻から涙がこぼれ落ちた。
「ちょっ、ちょっと!凛花、なんで泣いてんの?母さん何言ったんだよ!」
トイレから戻ってきた涼介が怒っている。
「涼介くん、大丈夫。涼介くんが悪いから。」
「えっ?俺?」
「涼介くんがトイレ長いから、お腹壊したのかと思って心配で泣いてたの。」
「そんな訳あるか〜!本当に大丈夫なの?」
「大丈夫。」
「母さん、泣かす様な事言わないでくれよな。」
涼介は母を見て、念を押した。
「涼介、凛花さんの涙は嬉し涙だよ。心配ないわ。」
「そうなの?じゃ、じゃあいいけど。」
「明日は仕事でしょ?そろそろ帰りましょうか。」
「そうだな。」
店を出ると涼介の母は、二人に御礼をいって、帰っていった。
「今日、来て良かった!涼介くんのお母さん、めっちゃいい人だった!」
「泣かされたのに?」
「あれは、ほんとにうれしい涙だったんだよ。」
「そうなの?何の話してたの?」
「ナイショ〜!」
「ナイショ多くないか?結局、したのかしてないのかも教えてもらってないし。」
「したのかしてないのか?何を?」
「はぁ。いいよもう。」
「照れてる〜・・・してないよ。」
「そっか。良かった。」
「良かったの?」
「うん。初めてが記憶に無かったら悲しすぎるだろ?」
「確かに・・・したい?」
「・・・うん。」
「おあづけです!」
凛花は楽しそうにペースを上げて、
涼介の前を歩いた。