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憧れだった異世界転移は波乱万丈のようです。~5人のイケメンと聖女っぽくない聖女が異世界を救っちゃう話~  作者: mii


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第2話 イケメンスマイルは心臓に悪いってば!!


イケメンに見つめられている――。


いや、正確にはイケメン五人に見つめられている。

なんだこの状況。視線が痛い。まぶしい。顔面偏差値の暴力だ。


えっ、何か言うべき? 黙ってた方がいい?

でも、こんなに見つめられると逆に落ち着かないんですけど。


やばい。夢の中とはいえ、鼻の下が伸びようとしている気配がする。

待て、私の鼻の下。頑張れ抵抗するんだ。

お前はやれる。今日までだって、何度も変な顔になりそうなのをこらえてきただろう。


鼻の下と殴り合いをし、決意を固める。


……よし、深呼吸。とりあえず、当たり障りのない、ご挨拶。


「あ、あの……こんばんは」


一番無難っぽいワードを、喉からひねり出す。

昼なのか夜なのかも分かってないけど、細かいことは気にしない。


すると、周りに集まっていた人たちから、一気にざわざわが広がった。


「おお……」

「声まで美しい……」

「さすが聖女様……」

「なんて可憐な……」


おいおいおいおい。

褒めすぎだってば。


そんな連打されると、人間、普通に嬉しすぎて死ぬ。

私の自己肯定感、今までの人生で一番高いんだけど。

このままだと天井突き抜けて宇宙まで飛んでいくぞ? 戻って来られなくなるけど大丈夫そ?


私が内心で大騒ぎしていると、その中から一人、前に出てくる影があった。


金髪、碧眼。


光を受けてキラッキラしていて、ちょっとむかつくくらい完璧な横顔。


それでいて、口元には人たらし特有の余裕の笑み。

あ、これ、絶対女たらし枠のやつだ。私にはわかる。


そのイケメンは、目の前まで歩いてくると、漫画やゲームで見たことのあるような、軽くも品のあるお辞儀をした。


「アレクシス・フォン・ルヴァリエです。気楽にアレクと呼んでほしいな」


さらっと言うな。


いきなり愛称から入ってくるとは思わなかった。

これ、絶対に女の扱い慣れてるタイプだ。間違いない。


すると、そのすぐ後ろからスッと銀髪メガネのイケメンが一歩前に出て、王子に小声で何か言った。


「それはいけません。あなたはこの国の第1王子ですよ」


さっき神官の後ろにいた執事風イケメンだ。

落ち着いた声、丁寧な敬語、さりげないツッコミ。


この人、絶対に苦労人枠だ。胃薬常備してそう。


それは確かにそうだよ、オーウェンさん。

王子様をいきなり愛称呼びなんて、常識的に考えてありえない。


本来だったら――(これはゲームの話だけど)――

好感度をコツコツ上げていって、ようやく二人っきりの時に


「……アレクって、呼んでもいい?」


って聞いて、照れながら許されるやつだ。

なのに、この王子様ときたら。


「いいじゃないか〜。どうせ婚約するんだし〜」


……ん?


婚約?


……ん??


「婚約!?」


あっ、声に出ちゃった。

頭の中だけでツッコむつもりだったのに、口から漏れた。


だって急すぎるもん。ただでさえ、この状況に大混乱中なのに。


それに!!


私にも一応、好みのタイプというものがありましてね?

王子様、めちゃくちゃカッコいいですよ。それは認めます。

背も高いし、笑顔もキラキラしてるし、服も絶対高いやつ。


でも!


なんか軽そう!


現実にいたら絶対浮気するタイプだ、これ!


「君が一番だよ」とか言いながら、二番も三番も用意してそうな顔してる!


ということで、私は一歩前に出て、とびきりの営業スマイルを発動した。


会社で上司やお客さんに使う、あの万能スマイルだ。

口角をちょうどよく上げて、目元を少し柔らかくして――


「婚約はまたの機会にお願いします!」


決まった。


我ながら、綺麗な一礼つき。

これぞ、社畜OLの生きるスキル。

予定外の仕事も残業も、全部この笑顔と頭の下げ方で乗り切ってきたんだから、伊達じゃない。


……なのに。


周りが、シーンとした。


え、何? 今の、そんなにおかしかった?

お断りの仕方、そこまで変じゃなかったよね?

(いや、おかしいのは状況の方であって、私ではない。はず。)


気まずい沈黙の中、アレクシス王子だけは口元に笑みを浮かべたままだった。


「詳しい話は……別室でね♡」


ちょちょちょちょ。

いきなりですかーー!?

無理無理無理無理!?


初対面で婚約宣言からの、別室お誘いって、イベントの飛ばし方が雑すぎない?


誰か助けてぇぇぇぇ!!?



気づけば私は、さっきより少しこぢんまりした部屋―


―応接間っぽい場所の、ソファに座らされていた。


ふかふか。

座り心地良すぎて、うっかりこのまま住民票移したくなるレベルのソファだ。


正面にはテーブル、その向こうに王子たちが並んで座っている。なんだこの、イケメン査問会。


アレクが、さっきまでの軽さを少しだけ抑えた口調で話し始めた。


「改めて。この国の第1王子、アレクシス・フォン・ルヴァリエだ」


あー、そういうことね。

さっきの「別室でね♡」は、ただの“自己紹介し直すためのお部屋移動”だったのか。


紛らわしい言い方しちゃってさ。

わざとですか? 耐性ないからやめてください。心臓が変なリズム刻むから。


アレクの横で、銀髪の執事が礼儀正しく一礼する。


「王子様付きの執事をしております。オーウェン・ルーセルです」


うん、予想通り。


声も仕草も落ち着きすぎてて、逆に怖い。

絶対この人、裏で情報とか全部握ってるタイプだ。笑顔で毒吐く系。


推せる。


その隣で、黒髪の長身イケメンが腕を組んだまま、低い声を出した。


「騎士団長のガウェイン・ラグナスだ」


目つきが鋭い。声も低い。

顔も体格も無駄にいい。


ただ一言名乗っただけなのに、「逆らったら殺されそう」という印象しかない。

でもたぶん、動物とか好きなタイプだ。ギャップ枠っぽい。


続いて、茶髪で筋肉モリモリ、ヒゲの生えたワイルド系イケメンが、勢いよく立ち上がった。


「騎士団の副団長をしている! ダンテ・グリムヴァルトという! よろしく!」


声がでかい。元気。体育会系。

絶対、訓練場で部下に「もっと声出せー!」って叫んでるやつだ。


でも笑顔が素直でいい。こういう犬系も嫌いじゃない。むしろ好き。


最後に、長い髪を後ろで束ねた、落ち着いた雰囲気の男性が、静かにこちらを見て微笑んだ。


「魔法師団長のユリウス・クロウリーと申します」


声が柔らかい。

目元も優しい。

それでも、どこか底が見えない感じがするのは、たぶん“魔法使い”という肩書きのせいだろう。


でも、さっきから一番こっちを心配そうに見てくれてるのも、この人だ。


……うん。


私の番か?そうだよな?ここは華麗に決めてやるぜ!


「…橘 美鈴です。よろしくお願いします。」


わっ……わー……直視出来ない。

華麗に挙動不審になってしまった気がする。


だって、どこを見たら良いかわからない。


見事に、全員イケメンだ。

しかもタイプがそれぞれ違う。


女たらし王子、クール系騎士団長、ワイルド副団長、腹黒執事、優男魔法師団長。


異世界ラブコメのテンプレ詰め合わせセットですか?


どこかに抽選応募してたっけ、私。残業ポイントを異世界ガチャに変換できる制度とかあった?


ぼうっとしていると、アレクが真面目な顔でこちらを見た。


「ここにいる者たちは、皆君のために集められた。

旅の同行や、聖女としての知識や振る舞いなどを学ぶ手助けをしてくれる」


私の、ため……?


オーウェンが、静かに言葉を継ぐ。


「この国は今、瘴気に苦しんでいます。

あなたの光の魔力が、その希望なのです」


あー、きた、よくあるやつ。


“瘴気に苦しむ国”+“光の聖女”。

異世界ものの基本セットだ。

次あたり「魔王」とか「闇の何とか」とかが出てくるんだろうな。


魔王。


戦い。


痛いのとか、怪我するのは嫌なんですけど。

別に戦闘とか好きじゃない。


私、今まで戦ってきたのは、納期と上司とクレームと睡魔くらいで――いや、十分戦ってるな。


でも物理は無理。血とか勘弁してほしい。


不安がそのまま顔に出ていたのだろう。

ダンテが、慌てて身を乗り出してきた。


「大丈夫! そのために自分たちがいるんだ!」


声がでかい。けど、その大きさが少し安心する。

“守る側”って感じがして、頼もしい。


「……まじか」


思わず、本音が零れた。


まじかよ。

イケメン五人もついてくれるのは、正直めちゃくちゃ嬉しい。夢のよう。


でもその分、何かとんでもなく面倒くさいことに巻き込まれている気もする。


アレクが、テーブルに肘をついてこちらを覗き込んできた。


近い。顔が近い。

近距離から見ると、まつ毛の長さまでイラッとするレベルで完璧だ。


「あと、婚約者の件なんだけどね」


出たよ。


さっき軽く死んだ話題、再来。


「君はこの国の重要人物だから、ある程度地位のある者と婚約しなくちゃいけないんだよ。

だから……ね♡」


ひょえええええええ。


王子様スマイル、直撃。


そのキラッキラの笑顔をこっちに向けながらウインクとかするの、やめていただきたい。

これだけで、私の体力ゲージがみるみる削られていく。


今のでたぶん残りHP3くらいになった。瀕死。


(いやいやいやいや。

 確かに見た目だけなら、王子様との婚約とか、

女の子の夢かもしれないけどさ。

 私には中身におっさんが住んでるっていう重大な問題があるんだよ。

 絶対釣り合わない。向こうもあとで後悔するパターンだって!)


私が目を白黒させていると、ユリウスがそっと口を開いた。


「聖女様はお疲れのようです。詳しい説明は、明日にしてはどうですか?」


あ、この人やっぱり優しい。

ガチで心配してくれてる顔だ。


さっきまで笑いを堪えてたアレクとは大違いである。


「そうだね。急ぎすぎたかな。苦しんでいる民を思うと……どうしても、ね」


アレクが、ちょっとしんみりとした声で言う。


言うけどさ。


(なんか演技っぽいんだよなぁ……)


確かに、この国の民は本当に苦しんでいるのかもしれない。


瘴気とか、魔物とか、そういうのはきっと現実なんだろう。

でも、さっきの婚約スマイルの説得力が強すぎて、


「ただ絶世の美女(私)と結婚したいだけなんじゃね?」


って疑念が消えない。


私、疑い深い女だから。残業でだいぶ性格がひねくれてるから。


そんな私の心の内など知る由もなく、オーウェンが静かに一礼した。


「ガウェイン、聖女様をお部屋にお送りしてさしあげてください。

聖女様、明日、私の方からお迎えにあがります。それまで、ごゆっくりおくつろぎください」


うひょー。

今度は執事スマイルかよ。


王子スマイルとは違う、上品で柔らかい微笑み。

こっちはこっちで破壊力が高い。


この城、イケメンスマイルの暴力が多すぎない? 配給制にしてほしい。


その後、ガウェインにお部屋まで送ってもらった。


廊下を歩いている間、無言。

でも、隣を歩く騎士団長の存在感がすごい。


横目で見るたびに、「でか……」って心の中で呟いてしまう。時々、声に出てたかもしれない。肩幅が壁みたい。


部屋に着くと、私専用のメイドさんまで紹介された。

どうやら、基本的には騎士団長であるガウェインが、私の護衛につくことになるらしい。


騎士団長なのに、だよ!?

もっと他にやることあるんじゃないの? 国のトップ戦力では?

そんな人が、私の護衛って。


ありがとう。嬉しいけど、重くない? 責任が。


大きなベッドに横になりながら、今日一日のことを振り返る。


残業帰りに光に飲み込まれて、

気づいたらお城の広間で、

聖女って呼ばれて、

イケメン五人に囲まれて、

婚約とか言われて、


瘴気とか世界とかの話をされて――


「……皆が困ってて、私が助けになるんなら」


ぼそっと、天井に向かって呟く。


皆が本当に苦しんでいるのなら、私は“聖女”っていう役割を、頑張ってみてもいいのかもしれない。


ビビりだし、戦うのは苦手だし、痛いのは嫌だけど。


でも、私一人の力で何か変えられるなら――それはちょっと、悪くない。


「……ま、イケメン五人ついてるしね……」


そこは正直に。

やる気が出る一番の理由は、たぶんそこ。

自分でも分かってるけど、否定はしない。


めちゃくちゃ眠い。


そういえば、そもそも私は残業した帰り道だった。


今、日本時間で何時なんだろう。

明日は朝から大事な会議だったっけ。


夢の中で眠るって変な感覚だな。


遅刻しないように……って思ってたのに――

意識が、そこでふっと途切れた。



「んー……」


ぼんやりと目を開ける。


ふかふかのベッド。

ふかふかの枕。


カーテンの隙間から、柔らかい朝日みたいな光が差し込んでいる。


ここ、どこだっけ――と考えるより早く。


「お目覚めですか、聖女様」


すぐそばから、落ち着いた女性の声がした。


「っへ?」


私は、寝ぼけた声で変な返事をしてしまった。


ここが本当に夢じゃないのだと、ようやく理解し始めたのは、その後のことだった。


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