表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れだった異世界転移は波乱万丈のようです。~5人のイケメンと聖女っぽくない聖女が異世界を救っちゃう話~  作者: mii
第2章 想像以上に波乱万丈

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/16

第13話 もう少しゆっくりさせてってば!!


セシルさん達の看病のおかげで、私は一日でだいぶ動けるようになった。


昨日まで、トイレ行くだけで世界の終わりみたいな顔をしていたのに、人間って意外とタフだ。


ユリウスさん曰く、ダンテの怪我はかなりの重症らしい。


本人は一見、元気そうにしているものの――


「普通の人なら、座ることすら困難な傷ですよ」


と、さらっと恐ろしいことを言われた。さすが底なし副団長、基準がおかしい。


後で絶対にお見舞いに行こうと心に決める。あんなに守ってもらって、そのまま放置なんてできない。



「お披露目が、もう明日!?」


自分でもびっくりするくらい、いい声が出た。


部屋でティータイムをしていた時、セシルさんの口から、さらっと爆弾が落とされたのだ。


セシルさんは、いつも通り落ち着いた笑顔で紅茶を置く。


「美鈴様は、まる二日間、眠られていました。そして回復に一日。

 森の浄化から、もう既に三日経過しています」


「三日……。」


体感では、昨日のことなんだけど。


ブラック企業にいた頃、徹夜続きで曜日感覚が溶けた時のことを思い出す。嫌なフラッシュバックだ。


カミーユが、窓際でカーテンを整えながら振り向いた。


「それにさ、森が浄化されたんだよ? 瘴気が勝手に消えたりしないでしょ?」


「それは……まぁ、そうだけど」


リリが、クッションを抱えながら目をキラキラさせる。


「もう既に噂になってるみたいですよー。

 『森が一夜にして浄化された』とか、『伝説の聖女様の再来だ』とか!」


「ひぃぃ……盛りすぎ盛りすぎ」


セシルさんが、話を本筋に戻すように軽く咳払いをした。


「美鈴様は病み上がりということもあり、舞踏会でダンスをなさる必要はありません。

 挨拶が終わった後、国王陛下、王妃様、アレクシス様と共に、客人の前で座って頂きます」


「王族と一緒に……?」


想像した瞬間、背筋に冷たいものが走った。


「考えただけでゾッとするんですけど」


最高権力者の真横で、にこやかに座るとか私には無理!!


「政治的な意味合いもあるのです」


セシルさんが、きっぱりと言う。


「森の浄化は、王家にとっても国にとっても、

非常に大きな出来事です。

 聖女様が王族と並ぶことで、

『王家と共にある希望の象徴』だと示せます」


「まだ全回復してないのに……」


思わず、本音が漏れた。


「めんどくさ……いえ、その……部屋でゆっくりしてたいなぁ、なんて」


「聞こえてますよ、美鈴様」


微笑みながら、しかし目だけ笑っていないセシルさん。ひぃ。


そこで、リリがもじもじと手を挙げた。


「あ、あの……」


「どうしたの、リリちゃん?」


「その、舞踏会には……王子様の、元婚約者様がご出席なさるそうです」


「ええ!?」


思わず椅子からずり落ちそうになった。


「あの、暴れたっていう噂の?」


三人でお酒を飲んだあの夜、ダンテとガウェインがチラッと言っていた。


「王子の元婚約者が暴れた」「今は領地で静養中らしい」――あれだ。

まさか、その当人が明日来るとか聞いてない。


「な、なんでそんなフラグを立てるのかなこの国は!?」


「フラグ……?」


カミーユが首を傾げる。


セシルさんが、落ち着いた声で続けた。


「警備は万全に整えてありますし、アレクシス様もその件については真剣に対策を練っておられます」


いや、あのチャラ王子だし、「ドラマチックでいいじゃないか~」とか思っていたらどうしよう。ありえるから怖い。


「……あー」


私は、額に手を当てた。


「なんか、ちょっと熱っぽい気がする。風邪気味かも」


一世一代の棒読みである。


「これはさすがに、舞踏会どころじゃ――」


「ユリウス様をお呼びしましょうか?」


にっこりと完璧な笑顔で、セシルさん。


「いえ……気のせいでした。すぐ治りました」


秒速で撤回した。


ユリウスさんに診察されたら、絶対に逃げ場を失う。


二日酔いの件で、私はもう逃げられない運命なのだ。



午後からは、舞踏会用のドレス選びと打ち合わせが始まった。


「さぁ、美鈴。真打ち登場だよ!」


と、無駄にテンション高く現れたのは、もちろんアレクシス様である。


その後ろには、控えめにため息をついているオーウェン。


「今日は特別に、私もドレス選びに参加させてもらうからね!」


「嫌な予感しかしないんですけど」


その予感は、秒で的中した。


「まずはこちら!」


アレクが持ち上げたのは――


胸元が大胆に開き、背中もほぼ全部見えている、きらっきらのドレスだった。

生地は確かに綺麗だけど、「布の面積とは?」って聞きたくなるタイプ。


「却下で」


「えぇ!? まだ何も言ってないのに!?」


「見れば分かる! これ着たら私、呼吸するたびに寿命縮むやつ!」


「でもさ、聖女様だし? 特別な夜だし? せっかくだからさぁ~」


オーウェンがぴしゃりと言った。


「王子様、露出の多いドレスを選ぶのはおやめください。

 聖女様は“希望の象徴”であって、“目の保養”ではありません」


「え~? どっちもでも良くない?」


「良くありません」


即答である。頼もしすぎる。


「じゃあこれは?」


アレクが次に出してきたのは、足がほぼ全部見えそうなスリット入りのドレス。


「それも却下で」


「これもかぁ!」


「アレクシス様」


セシルさんが後ろから静かに微笑んだ。

あ、これは本気で怒ってるやつだ。


「露出の多いドレスは、舞踏会の場にふさわしくありません。

 それに、あまりに肌を見せすぎると、他の貴族夫人方の反感を買います」


「ん~……政治って難しいねぇ」


「今、初めて気づいたみたいに言わないで下さい」


リリちゃんが、数着のドレスの中から、比較的落ち着いたものを選んだ。


「あの…、横から申し訳ありません。私は、こちらのドレスがよろしいかと思います。」


白を基調としたドレス。


胸元はほどよく隠れていて、袖にはレースがあしらわれている。

スカート部分にはうっすらと金色の刺繍が入っていて、歩くと光が流れるみたいに見える。


「こちらなら、清楚でありながら華やかさもありますね」


オーウェンが頷く。


「動きやすさも考えられていますし、病み上がりの美鈴様にも負担は少ないでしょう」


「それに……」


リリちゃんが、目を輝かせながら自信満々に言った。


「すっごく、似合うと思います!」


その一言で、私は少し照れながら、それに決めた。


「じゃあ、それで……」


「よし、当日は私が一番にエスコートするからね!」


「それと、私も美鈴とお揃いにしようかな♡」


アレクが即座に「聖女様とお揃い衣装予約」を入れようとしてきたが、オーウェンの冷たい視線により、その企みは一時保留となった。



夕方、ようやく打ち合わせがひと段落した頃。


私はセシルさんにお願いして、ダンテのお見舞いに行くことにした。


「本当は、まだあまり歩いてほしくはありませんが……」


と渋い顔をされたけれど、真剣に頼んでギリギリ許可をもぎ取った。


コンコン。


軽くノックをしてから、扉を開ける。


「失礼します……」


「おー、来たか!」


明るい声が返ってきた。


ベッドの上には、包帯だらけのダンテが座っていた。

上半身は裸に近い状態で、胸から腹にかけて、いくつもの包帯と固定具が巻かれている。


それでも、顔にはいつもの豪快な笑み。


「ダンテ……」


思わず、声が小さくなる。

笑っているけど、その姿はやっぱり痛々しい。


「おいおい、そんな顔すんなよ。生きてるんだから上等だろ?」


ダンテが笑いながら片手を振る。


「本当に……守ってくれて、ありがとう」


素直にそう言うと、ダンテは一瞬きょとんとして、それから照れくさそうに頭をかいた。


「礼なら、酒で頼む」


「またそれ」


「約束しただろ? 次はもう少し、作戦を練って飲むってよ」


あの日の帰り道の会話を思い出し、少しだけ笑ってしまう。


「でも、今回は本当に、命懸けで守ってくれたんだよね」


「それはこっちの台詞だ」


ダンテが真顔になる。


「お前が祈ってくんなきゃ、森はそのままだった。

 そしたら、あそこにいた全員、今頃どうなってたか分からねぇ」


そう言ってから、わざとらしく大きなため息をついた。


「ガウェイン、怒ってた?」


「そりゃもう、悲鳴上げてる魔物より怖かったな」


「想像できる……」


あの豪快な笑い声と一緒に聞かされると、少しだけ救われた気持ちになる。


「……美鈴」


「うん?」


「いや、なんでもねぇ。舞踏会、楽しめよ」


意外な言葉だった。


「え、いや、楽しむっていうか……胃がキリキリするイベントなんだけど」


「お披露目ってのは、国のためでもあるけどよ、お前自身のためでもある。

 俺らはそこで、ちゃんと『聖女様、ここにいるぞ』って皆に見せてぇんだよ」


そう言われると、何も返せなくなる。


「だから、無理はすんな。でも、逃げんな」


「……はい」


素直に頷いた。

その時、病室の扉が軽くノックされる。


「入るぞ」


低い声。

ガウェインだった。


「お前、許可もらって歩き回ってるのか?」


「ガウェインさん、こんにちは……」


「セシルが心配していた。それで俺が迎えに来てやった。」


なるほど、監視付きの外出だったらしい。さすがセシルさん、抜かりない。


「ま、良いタイミングだな」


ダンテが笑う。


「ガイン、俺の代わりに、舞踏会で美鈴殿の護衛頼んだぞ」


「当たり前だ」


即答だった。


でも、その声はほんの少しだけ柔らかかった。



そして、次の日。


朝からセシルさんとリリとカミーユによる「総力戦支度タイム」が始まり――


髪型を整え、メイクをし、ドレスに袖を通す。


鏡に映る自分は、見慣れないくらい“ちゃんとした聖女”に見えた。


「とっても、お美しいです!」


リリが、今にも泣きそうな顔で拍手する。


「これで舞踏会に出たら、皆ひっくり返りますよ」


カミーユが、にやりと笑う。


「しっかりね、美鈴様。王子様の隣、ビシッと決めてきて下さい」


セシルさんは、ほんの少しだけ目尻を下げて微笑んだ。


「大丈夫です。美鈴様なら、きっとやれます」


私は、ぎゅっと拳を握る。


(大丈夫。森だって浄化したんだし。

 舞踏会の一つや二つ、なんとか――なる、はず)


足は少し震えているけど、前には進める。


扉の向こうでは、アレクシスが迎えを待っているだろう。


王様も、王妃様も。


そして、たぶん――元婚約者も。


「……よし」


小さく深呼吸をして。

私は、扉の方へ歩き出した。


いざ、舞踏会へ――!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ