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5話

登場人物

ベルグト 18歳 酒場の下働きをしている青年

キャロル 17歳 放浪の占い師

パナ   3歳  野良犬

ベルグトの母親

心臓の発作で倒れたベルグトの肩を抱きながら、彼の家へと2人で歩く

家の扉を開けてすぐにベッドへと寝かせる。


ベルグトの母親は突然のことでおろおろとしている。

そしてすぐに医者を呼びに走る。



「こやつの凶兆は恐らくは魔物の呪いによるもの。医者ではどうすることもできないだろう」


キャロルは呟いた。


しばらくして家に医者が来た。荒い息をしているベルグト。

医者が彼の体を診察してみるが、発作の原因がわからない。

しかしこのままでは持って数日の命と言う医者。


ベッドに横たわり苦しそうに呼吸をする。

ベルグトの母親はそばに寄り添っている。パナは部屋の隅で

心配そうにしている。

キャロルは椅子に座って2人を見ている。


医者が帰った後も母親はベルグトのそばを離れない。



母親はキャロルにどうにかできないものかと問う。



「そうだ、前に言っていたあの竜山草を分けてください。竜山草ならこの子を救えるかもしれない。お金なら準備するから、どうかお願い!あの野草を分けて頂戴!」


ベルグトの母親を見つめるキャロル。


「竜山草の成長は早いとはいっても植えてから花が咲くまでは20日は

かかるといったであろう。

こやつの状態から見て持って数日の命。今から植えても間に合わない。」


絶望に落とされる母親はベルグトのそばで泣いている。



2日後の深夜、依然として目を覚まさないベルグト。

体からは汗が引いて、呼吸も弱弱しくなってきている。彼の命が終わろうとしている。

キャロルは彼が倒れてからもずっと彼の家にいて、様子を見ていた。



窓がガタガタと揺れ始める。パナも何かを感じ取ったのか怯えているように見える。

ベッドで横たわるベルグト。そのそばで祈りをささげている母親。

部屋は母親の祈りの言葉だけが小さく聞こえる。

家の外の風が強くなってきている。嵐が近づいているのだろうか?



部屋のろうそくの灯がゆらゆらと揺れて



そしてフッと消えた。



家の中はろうそくの灯が消えたことで、真っ暗になる。



「ヒッ!」



母親は息をのむ。


「もうそろそろか・・・。」


キャロルは言った。









      「ゴオオオオオン、


         ゴオオオオオン、


             ゴオオオオオ!!


                ゴオオオオオ!!」



大地を揺るがすような咆哮が聞こえた。家全体がびりびりと振動する。

パナは驚いて物陰へと隠れてしまった。


「何?この声はモンスター?・・・・、いいえ、これはドラゴンの咆哮に

聞こえるわ!!」


椅子から立ち上がるキャロル。



「間に合ったようじゃ。よかったのう。では、わらわは帰るとしようかの」



そう言うと窓の外を見やってから家を出ていく。

扉を開けて脇の小さな畑を見やると、そこにはたくさんの竜山草の花が煌々と

咲いていた。

風は強く吹いている。竜山草の花が咲くとき強風とともに

ドラゴンの咆哮のような響きがする。


全ての災いをドラゴンの咆哮が払ってくれるといわれている。


「我ながらおせっかいな性格だ。こんなことをしてもなんの儲けにもならぬというのに」



翌日、昨日までの状態が嘘のように熱が引いたベルグト。


そして数日で自分で歩けるようにまでなっていた。

家から出て外の空気を吸う。


視界にふと違和感を覚えて畑のほうを見る。いつの間にか見たことのない

すごく大きな花が沢山咲いていた。


「お母さん、あの大きな花は何?いつ植えたの?」


母親は首をかしげる。自分も心当たりがないという。



合点がいく。



キャロルが最初に家に来た時に、竜山草の種を植えてくれていたのだろう。

前に店に来た時に


「すべて済んだ」


と言っていたのはこういうことか。


ベルグトはパナと共に街へと走る。

キャロルの姿を探す。

そして、いつもいる防波堤の段差に彼女の姿を確認する。

彼女の言っていたことはすべて本当のことだった。


「ワン!ワン!」


パナの鳴き声でベルグトのほうを振り返るキャロル。


照れくさくても絶対に言わなきゃいけない

感謝の言葉を。

これでこの作品は完結となります。お付き合いいただきありがとうございました。

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