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3話

登場人物

ベルグト 18歳 酒場の下働きをしている青年

キャロル 17歳 放浪の占い師

パナ   3歳  野良犬

ベルグトの母親 

次の日、キャロルは昨日と同じ防波堤の段差に座りベルグトを待つ。

ベルグトに見える凶兆は絶対に放っておいてはいけない。

今までの経験であの黒い兆しが見えたものは、必ず不幸になっていったのを

記憶している。



「ワン!ワン!」


そこへ元気よくものすごい勢いでキャロルのもとへ走ってくる犬がいた。

パナだ。


パナは一目散にキャロルのもとへ駆けていき、顔をなめ始めた。



「わっ、お前は昨日の犬か?こら!よさぬか。くすぐったいぞ!」



パナの後からゆっくりとした歩みでキャロルに近づくのはベルグトだ。

あきれたような顔をしている。



「パナの人懐っこさもたいがいだな。やめるんだ。

こんなインチキ野郎に近づくんじゃない!病気になるぞ!」



「わらわはインチキなどしてはおらぬ!わらわの占いは本当に当たるのじゃ」



「それよりも、こんなところで何をしているんだ?暇な奴だな。

お前ちゃんと仕事してるのか?」



「そなたをずっと待っておったのだ。昨日からそなたの凶兆が気になって仕方がなかったのじゃ。放っておいてはならぬのだ。いつか必ず襲ってくるものじゃ。さあ、竜山草を使え。この貴重なものを使えばそなたはきっと救われる」



ベルグトは右手で自分の前髪をわしゃわしゃとした。そしてため息をつく。



「昨日も言っただろう。そんなものを買う気はないよ。どうせその辺に生えている木の実でも入っているんだろう?くだらねえ。そんな、あくどい商売してたらいつか罰が当たるぜ」


「何を言っているのだ大バカ者め!!そなたの身を案じておるからここまで言っておるのに、罰当たりはおぬしのほうじゃ!!」


パナをなだめているベルグト。



「わらわのおせっかいも筋金入りじゃて。どうじゃ、たったの10万ジェルで不幸を免れてこれからの人生も生きていくことができるんだ。安い買い物ではないかえ?」


「俺はもう仕事に行くぜ。相手にしてられねえ。パナ!行くぞ」


「待つが良い。ええい、それなら5万ジェルに大負けしてやろう。

待てと言うのに!」



ベルグトはキャロルの言葉を無視して酒場の路地裏へと消えていった。



酒場の料理の買い出しにいくベルグト。街をパナとともに歩いている。

街の大通りは出店がたくさん出ており、買い物客でごった返している。


魚屋や果物屋、肉屋などを巡っていくベルグト。


キャロルは彼に見つからないように人や物陰に隠れてその様子をメモに取る。



そんな日が何日か続いた。ある仕事が休みの日。浜辺でのこと、ベルグトは

パナと共に海岸で釣糸を垂れている。彼の幼いころからの趣味である。

海が近いこの街は魚が豊富にいる。


テトラポット近くの草陰に隠れて観察を続けているキャロル。

ベルグトと少し離れたところからまだメモを取っている。

キャロルとしては凶兆というものが興味深いのであろう。彼女からしたら彼は研究の対象なのかもしれない。


しかしパナがすぐに気づいてしまい走って近づいてきた。


「ワンワン!!」



「あっ!バカ犬め!吠えるでない!気づかれてしまうだろう!」


草陰に隠れながら犬を追い払おうとする。

パナは嬉しそうに尻尾を振っている。


「バカはお前だよ。」



キャロルのすぐ後ろにベルグトが腕組みをして立って彼女を見下ろしていた。



「お前の行動は筒抜けなんだよ。この数日間ずっとつけてただろう?

いい加減にしろよな」



一目散に逃げるキャロル。



家路につくベルグト。途中少し邪魔が入ったが、2時間ほど釣り糸を垂れていた。今日の釣果はまずまずだ。

ベルグトは母親との2人暮らしである。母親も仕事をしているが、2人が休みの日は必ず夕飯を一緒に取ることにしていた。


家のノブに手をかけて中に入る。

リビングでいるのはベルグトの母親・・・・、とキャロルがいた。


愕然とするベルグト。


「ああ、お帰りなさい。。お客さんが来てるわよ?お友達らしいわね。」

と、母親が微笑みながら言った。


「やっと帰ってきよったか。お邪魔しているぞ。」


「なんでお前がここにいるんだよ?一体俺の家で何をしているんだ!!」


「そんなに大きな声を出すな。今、そなたの母上に竜山草の話をしていたところだ。母上は信心深い素晴らしい女性だ。わらわの話を面白そうに聞いてくれるのじゃ。」


「ベルグト、このお嬢さんの占いの話はとても興味深くて面白いのよ。

明日の天気まで当ててしまうなんて、きっと天才かもしれないわ。

それとこの竜山草という野草はすごく貴重なものだけれど、きっとあなたを守ってくれるそうよ。いいお友達を持ったわね」


わなわなと震えるベルグト。表情が青ざめている。


「お母さん、騙されちゃだめだ!こいつはペテン師だ。

俺の友達なんかじゃない!」


そう言うとベルグトはキャロルの首根っこを掴んで、彼女を家の外へと

放り出してしまった。



家の外に放り出されたキャロルは思案する。


「はあ、いろいろ考えてこれだけやってみてもダメか。少し納得がいかないが致し方無い」


フッとベルグトの家の小さな畑を見やるキャロル。

1000文字づつですが完結までお付き合いしてもらえたらと思います。

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